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理解されない

 私は男の身体を知る女だ。
 ぬめりと熱を帯びた膣に男の硬くなったものがピストンされる快感、乳房を舐められる快感を知り、セックス無しの人生なんて考えられないくらい。

「あんたが好き。付き合ってほしい」
「は? バカ言わないで」

 あたしたち同性じゃないの、彼女はコーヒーに蒸せながら笑った。
 私はセックス依存症、いや男性の性器に依存している。
玩具や自慰には満足できず、満足するには男の血走る性器が必要なのだ。
 なのに私は男が女を好きになるように、またその逆の場合のようにそれが当然だとばかりに自然に同性に恋をする。

「それに、あなた男癖が悪いって噂よ」

 かちゃりとガラス張りのテーブルにコーヒーカップを戻し、嫌味ったらしく言うが、彼女の凛とした顔つきがそれを説教染みたものにさせる。
 彼女の言う通り私は男癖が悪い。
だからと言って付き合う人をころころ変えたり浮気したりはしない。
 つまり、私が好きなのは恋をしている相手で、男のソレだけなのだ。
一番いいのは恋をしている相手、つまりその女に血走るソレがあればいいのだが、そんな無理な話を恋人の前でするわけにもいかない。
かと言って女同士のセックスには満足できない。
だから私は男を欲し、セックスをする。
 私には女と男が必要なのだ。
女は愛し愛される為に必要で私は女しか愛せない、そのくせ私はその愛する人とのセックスでは満足できず男を求める。
 私は我が儘なのだ。

「あなた、あたしが好きならあたしの彼処を舐められるの?」

 彼女は白く透き通るか細い足を組み替えて小首を傾げる。
 彼女とセックスしたいから付き合いたいわけではない。
 ああそうか、私の中でのセックスは愛の表現なんかじゃなく、ただの快楽。

「いや、セックスはしない」
「あら、恋人になっても?」
「私はあんたを抱きたくて付き合いたいんじゃないからな。好きだから付き合いたい」
「純粋というかなんというか」

 彼女は上品に口元を押さえて笑う。
 純粋、私にぴったりの言葉だと思った。

「でもあたしは付き合わないけどね」

 同性となんて気持ち悪い、彼女は吐き捨てるように言ってテラスを去って行った。
 私を純粋だと思いながらその言葉を吐き捨てたのは、私を傷つける為以外の何でもないのだろう。
 この世界にはまだ、人に理解されない愛があると私は改めて思い知らされた。



END.
9/2


マエツギ

あきゅろす。
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