三回目、次はない
わからないことだらけなんだ。
どうしてふらふらするのかも、どうして君が怒ってるのかも。
「うぇっくしょんっ」
汚ねえな唾飛ばしてんじゃねえよと頬杖をつきながら、テーブルを挟んで座る彼女を見つめた。
「風邪かしら」
鼻をずるずるしながら彼女は言って、他に言いたいことはないのと気だるそうに言う。
「えっと、その」
「はっきりしなさいよ。うじうじウジ虫みたい」
言おうとしてるのに君がそれを遮るからだろ、いつもなら言うのに今日はそんな気力もなかった。
ただ、俺の頭はふらふらしている。
「何怒ってるんだよ」
「べつに怒ってなんか」
「多分俺熱あるんだよねー」
「はあ?」
俺の支離滅裂な言動に拍子抜けした彼女に、中腰になってキスした。
少し黙れ、とキスをしたあとに彼女の唇を人差し指で押さえる。
「ふらふらするんだよ。頭ふらふらーって感じ」
言って再び椅子に腰をおろす。
「頭ふらふら? そりゃそうでしょ、あんた私が頭に突き刺した包丁刺さってんだから」
なんで死なないのよと彼女は怒った。
あーあ、これで俺は好きな女に刺されるの三回目だ。
END.
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マエツギ
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