「すぐに戻る」
そう笑顔で言ってこの家を出た貴方は、零になった。欠片すら貴方は帰って来ず、貴方は還ってしまった。
戦士たちがこの国に帰って来ると、彼らは貴方の死を私に届けた。
それを知るまでの間、私は貴方の生を願うことに必死で夜も眠れなかったのよ、と瞬く星に呟きかける。つと温かい涙が頬を流れ落ちた。
長い間、私は貴方を待ち続けていた。貴方の「すぐに戻る」の言葉を幾度も胸に反響させ、貴方の笑顔を脳裏に彷彿とさせながら私は、毎日貴方を想い生きてきた。どれだけの時が過ぎ去っていこうとも、貴方の生を信じていた、貴方の死を現実に知らされるまでは。
「長い間ご苦労様だったねえ」
星になった貴方にそれが届いたらいいのに。
(五十年もの間、私は貴方の生を信じていたのよ。なんてバカなのかしらね。もう帰って来ないことは、頭の片隅ではわかっていたはずなのにそれでも私は信じて、信じていたかった。愛してるのだもの)
End.
10 05/30