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BASARA(+オリキャラ)小説
友への思い_兼続+慶次(+謙信)
「"憎しみ"なんか、持ち続ける人って…凄いよな」

 二人で月を見ながら飲み交わしている時であった。
ポツリと呟いた友人に、直江兼続は驚き問い掛ける。
「…どうしたのだ?慶次」
 前田慶次が上杉に志願して日が浅く、
自分や謙信公以外とはまだ折り合いが悪く酒を飲み交わす者が限られているので、
昨日今日と…いやここ数日は謙信公と飲めないので、
兼続と度々酒を酌み交わしているのであった。

 そんな折のこと、交わす言葉は少なくても、
慶次も兼続も別に其処に居るだけでも構わないのだが。
酒の席でポツリと零れる様に言う事は慶次にしては珍しく。

 兼続は、慶次が上杉に志願した事を後悔し始めたのでは、
と、ついつい不安になって身を乗り出す様に聞き返したのだが、
次の慶次の言葉で、そうでは無いことはわかった。
…逆に兼続の眉を寄せる様な言葉ではあったが。
「…いや…なぁ、兼続。
確かお前って石田三成と面識あったよな?」
 慶次は少し言いよどんだが、遠まわしに話を振ってみた。
「っ!?…ああ、そうだが…光成殿の事か?」
 慶次からその名が出るとは思って居なかった兼続は、
驚いたが直ぐに慶次の意図を読み取り即座に問い返した。
 兼続の心中は、慶次を思い複雑で合ったが。
「そう…とも、言えるし。そうでもない、とも言えるな」
 兼続の言葉に少し有っては居たのだが、
ちょっと違ったので慶次はそう言ったのである。
 空の杯に酒を継ぎ足して飲もうとしていた慶次に、
兼続は言い辛いのだと勘違いして遠慮の言葉を慶次に送る。
「慶次、言いたくないのであれば、無理に言わなくてよいぞ?」
 兼続の言葉に呑み掛けた手を停めて眼を丸くした慶次は、
次の瞬間、杯を盆に置き押さえる様に笑って兼続に妙な絶賛をする。
「プッ…ははっ…やっぱり俺、お前のそういう所、好きだな〜」
 兼続の心遣いが、慶次は解ったのでそう言ったのだが、
最初に笑ったのがイケなかったようである。
「慶次…俺は、お前のそういう態度は、嫌いだぞ」
 慶次の言葉は誉めていない様な気が兼続はしたので、
ジト眼で睨み告げた後、そっぽ向いて酒を煽るのであった。
「怒ったのかい兼続?…お〜い、拗ねない拗ねない!」
「拗ねて居らん!」
 それが拗ねているのだと出掛ったが、兼続が余計に拗ねそうなので慶次は心に仕舞い。
笑って拗ねた背中に背中を預けながら心からお礼を言う。
「兼続…ありがとさん!俺は、結構、お前に救われる」
 背中の重みに気付き何事かと後ろを窺った兼続は、
慶次の言葉に目を丸くしたが直ぐに持たれ返し、言葉を贈り返す。
「…それは、俺の方だ。
お前の様な者が、俺の友と成ってくれるのだ。
これ程、嬉しいことはない」
 少し自分を卑下にした友の言葉にそんな言い方するなと言う様に、
慶次は笑って頭を軽く頭で小突く。
「俺は、"気が合った奴"としか友達に成らないよ!
まあ…俺から"振る"より、逆に"振られる"方が多いみたいだけどねえ〜」
 慶次の例えに何か兼続はぶすっと怒らせながら宣言する。
…後の方がちょっと自身が無くて小声になってしまったが。
「…俺は、絶対にお前を"振ったり"せん!
…逆に、お前が"振らない"限りな」
「ハハッ…やっぱり、お前はイイよ!好きだぜ、兼続!」
 慶次は、兼続の心遣いが痛いほどわかって弾かれた様に笑う。
…こういった友を持てた事に心で感謝しながら。
「お前は///…何度も言わなくてもよい慶次!」
 流石に先程から好きだと言われ兼続は照れてしまってそう言ったのだが、
肩で笑って居るのが背中から伝わって来たので慶次が笑って居るのなら好いかと兼続は心では思った。


 それからその体制のまま語らず酒を飲み交わして数刻後、
大分互いにほろ酔い加減が進んで来た時にふと思い出したように慶次は語る。
「まあ〜あれだ…"憎い奴"を思い続けるってのも、
結構根気が居るんだ…それは、まるで"恋"にも等しい。
それを持ち続けて…仮に、"復讐"を遂げるとしても。
次の目標が見付けられるだろうか?
…果して、"そいつ"は生き続けられるだろうか、ねぇ〜。
まあ、俺は"人"を憎んだ事が無いから、無理だろうけど、さ…」
 其処まで聞いて兼続は、内心ほっとする。
慶次が改めて人を憎むことが無いと解っての事である。
「…そうか…」
それが言葉で漏れたのだが、慶次は気付いていない様だ。
 そんな兼続の内心を知らず、慶次は言葉を続ける。
「"憎しみ"は、結局"何も生まない"
…生んだとしても、新たな"憎しみ"の連鎖にしかならないよ。
だから…そんなもの抱えるより、誰もが愛や恋してた方が、まだ、ましなのさ…」
 そう慶次が言った後、コトリと盃が置かれた音が横からする。
「…慶次?」
 ふと静かに成なり背中に重みが増したので後ろを窺うと、
スゥースゥーと寝息が耳に届いて来た。
「クスリ…寝てしまったのか…」
 慶次はアル一定の量が来ると寝てしまう。
…それでも凄い量を飲んでいるのだが。

 普段の慶次が直ぐに寝れるが、眠りが深くても流石武人の児で、身の危険が迫ると直ぐに動く事が出来る。
本当に天性の才が無ければ今ここで生きてはいないだろう。
 そんな慶次でもその一定を過ぎれば、朝まで梃子でも起きない。
 流石に身の危険が有れば別であろうが、ペースを守る慶次は友の前では別だ。
そうそれは、近くに居る者が安全である証でもあるのだ。


「…やっと、"ほんね"をはきましたか…けいじは」
「っ!?け、「し〜っ!(ボソッ)ねたこを おこすことは、およしなさい なおえ」
 気配に気付かなかった兼続は、突然尊敬する主上の登場に驚き声を上げ掛けたが、
兼続の主である上杉謙信は、口に人差し指を立て静かに諭した。
 それに兼続も正そうとした動作を停め、
ずり落ちそうになった慶次を慌てて支えて苦笑いをした。
「…おっ!と…すみませぬ。
…謙信さま、いつから其処に居られたのですか?」
 まさか恥ずかしい所を見せて居ないかと、兼続は問うてみたのだが。
「ふふっ、そうですね…あなたが、
"けいじに すかれている ところ"の まえには、すでに」
 どうやら謙信公は、大分前から側にいた様であった。
「…謙信さまも、お人が悪いです…」
 似た者同士の慶次と謙信公についつい、
呟きにも等しく恨みごとを呟く兼続に、
謙信公は苦笑しながら指摘する。
「"さま"いりませぬよ、かねつぐ。
…"ここ"にいるのは、ただの "けいじをおもう" ひとりの "とも"。
おなじ"ともを おもうもの どうし"に、"さま"は いらぬでしょう?」
 謙信の諭すような言葉についつい畏まって兼続は答えそうになったが、
困ったような謙信の顔に改めて言い直す。
「はい、もうしわ…ごほん…すみません、謙信殿」
「…まあ、よしとしましょう…」
 兼続なりに頑張った方なのは謙信にも解ったので、
謙信は今度は小言を言わない様に譲歩した。
 慶次を隣の部屋の布団に二人で寝かせ、
慶次の話題で酒を飲む事に謙信と兼続はした。

「けいじは…"くるもの こばまず、さるもの おわず"なのですが、
うらぎられても おこることは、ないでしょう。
…なぜなら、かれは "たしゃを きづつける" くらいなら、
"じしんが きづつく"ことを いといません。
けいじは、"いくど きたい"し "いくど うらぎられつづけた"のでしょうね」
 謙信の言葉に兼続も薄々感じていた事なので、頷く。
「…ええ、慶次は疑う事を知らないのでは無く、疑う事に疲れただけ。
こんな"ご時世"だからこそ"望む"事に、"諦め癖"が付いてしまったのでしょう。
…自身が望めば、大切な者達が離れていく。
と、だから敵も味方も出会った者や獣、
生きとし生けるモノ全てを"友"と思い、なくなれば、悲しむ。
…そうして、己を傷つける。
今は安らかに寝ていますが、
本来慶次は、夜を寝ない…それは、あいつの血が騒ぐからだ」
 其処まで言って兼続は、友を思い心で涙する。
 泣いても兼続は、慶次が余計に哀しむだけなのが解っているから、
例え今慶次が寝ていようと他人に敏い慶次は、
翌日何か察するだろうとゆうに想像できる。
 謙信も兼続の心中は解ったので、言葉を引き継ぐ様に静かに語る。
「そう かの"ち"は、ながねん ひとを ころすために つちかわれてきたもの。
けいじの いしとは かんけいなく ほんのうが…かれを いくさばへと、かりたてる。
…まこと、うらやましくも ありますが…かなしき さだめですね」
 ふと自身と重なる慶次を思い苦笑して言った後。
気持ちを切り替える様に落ち込んでいる兼続に微笑みながら提案する。
「つぎは、さんにんで のみましょう かねつぐ…こよいは、
ふたり けいじを さかなに のみましたが、
やはり けいじも いれてやらないと いけませんね」
 明るい謙信の声にハッと顔を上げ、
兼続はそれに賛同する。
「ええ、そうですね謙信殿
…これを知ったら慶次は怒るでしょうし、次は慶次も入れましょう」
 そうして互いに酒を注ぎ合い同時に飲みほし月を見上げる。

― そう、自分達の傍にいる限り、慶次に頬笑みが消えさせる事をしない。
それが、二人に共通する思いである。


END

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《あとがき》(と、いう名の言い訳)
 戦国BASARA3設定、シリアスチックな友の話でした。

 いえねぇ〜慶次が上杉へ来た時の主上達はどう想ってたかなぁ〜
と思ったりもしなかったり、
実は慶次の心中を密かに察してたりして〜
と思ったり、といった感じで出来たモノですが。

 何が言いたかったのか、わたくし自身が解りません!ハイ!
…まあ、結局友垣切な過ぎるよ、と想わなかったり…

 ここまで読んで頂き有難う御座いました。


作成者:葵琉璃

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