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BASARA(+オリキャラ)小説
天下への代償_家康+慶次(BASARA3妄想シリアス)

「・・・よっ!竹千代、返しに来たよ。」
「けっ!?慶次ぃ!」

 最初、徳川家康がそのものを見たとき、誰か解らなかった。
家康がその部屋に入った際にはもう平服されていて、
顔を確認する事がかなわなかったからだ。
 だが襖が閉まると同時に、
豹変したかのようにニッコリ笑って挨拶して来たのが前田慶次であると、
解ると驚きと戸惑いで家康は名を呼ぶ他、言葉が中々出せないで居た。
 何故なら"ここ"に現れる筈がない友が、
姿を偽り此処に入って来れたことと、
そう迄して慶次が己に会いに来てくれたことで心中複雑に成っているのだ。

 戸惑っている家康を察してか慶次が沈黙を破る。
「・・・竹千代が心配しなくてもバレはしないさっ!こんな格好してんだから。」
「だが慶次・・・"ココ"は、」
 ニカッと笑いながら言う慶次に、
家康がやっとのことで言葉を紡ぐ事が出来たが未だ驚きを隠せない。
「ふっ、身体が成長しても相変わらずだなぁ〜竹千代。
俺が大丈夫だって言ってんだ、信じなよ。」
 胸を張って何処まで行っても変わらない調子でそう言う慶次に、
やっと調子を取り戻せた家康は昔の様に反論する。
「おっ、おめぇの"大丈夫"ほど、信用ならねぇものはねぇーだろう!
そう言って今迄!何回踏み倒し、その上借りておった!おぬしはっ!」
「はははっ!だから返しに来たって、最初に言っただろう?
なっ!これで勘弁してくれよ。」
 言って慶次は後ろから十両箱を数個取り出し、家康の前にスッと置いたのである。
「むっ!確かに、今迄貸した分。
・・・ぬっ!?よりちぃと多くねぇか慶次。」
 家康はその差し出された中身を検めながら今まで渡した分より少し多い事を指摘すると、
慶次は苦笑して間違いでは無い事を話す。
「これは今まで竹千代とおまえさんの家臣に迷惑かけた分だよ。
踏み倒し捲ってたからねぇ俺。」
「そのようなコト・・・おぬしが気にしておったとは!わしは驚き通しだぞ。」
 友としての形が失われていく様で家康は切なくなったが。
 この戦乱を生き抜き耐えて来た己だからこそ言い掛けた言葉をグッと飲み込み、
なんともない様に慶次に振舞う。
「ははっ、エライ言われようだねぇ〜。」
 慶次もその事が解っていたが敢えて追及はせず、笑って返した。
 そして、今まで崩していた体制を改めて慶次は切り出す。
 ・・・此処に来た本題を話す為に。
「・・・竹千代・・・いや、"徳川家康"。俺はお前に別れを言いに来たんだ。」
「なっ!?・・・まさか、 「いやっ違う!」
 雰囲気を変えて慶次が言った言葉に驚いた家康が、
言葉を言い終わる前に慶次はその言葉を打ち消す様に即座に否定する。

 予め家康が言いそうなことは切り出す前から解っていたのだ。
何故なら出逢った頃から今までの家康の心中を遠くから慶次は観て居たのである。

 首を振りながら慶次は続ける。
「違うんだ家康。
・・・お前が考えて出した答えで、俺が別れを切り出した訳じゃない!
おまえがどんだけ“耐えて”今迄生きていた事も、
己が“熟す”ことを待っている事も俺は傍で見ていて解らなかった訳じゃない。
ただ、・・・」
 慶次は其処で一端区切り眼を瞑り深く一呼吸し、
いつの間にか握っていた拳を見つめながら言葉を紡ぐ。
「・・・只、俺にとって、潮時が迫って来ただけだよ。」
 慶次が己の事を解ってくれていたのが家康には嬉しかったが、
最後の台詞が理解出来ずにいた。
「どう言う意味だ?慶次。」
 その問いに眼を家康に戻し慶次は困った顔で、苦笑して答える。
「俺は血筋の性か、どうも本能で動いてる節がある。
それしか俺には言えない・・・と云うか、俺にも解んないんだよ。」
 どうやら本人にも詳しいコトは解らないと言うように、
慶次はそれ以上言葉を続けなかった。
 その言葉に何となく家康にも少しは理解出来たが、
ふと慶次の叔父夫婦を思い出し問うてみる。
「前田家は継がぬのか?」
「前田は利とまつ姉ちゃんが居るし、其れに二人の児が継げばいい。
俺は、・・・もうそろそろ前田家(あそこ)を出るよ。浪人として生きる。」
 真っ直ぐに家康を見て慶次はそう言った。
 慶次のその声は何処までも澄んでいて凛と筋が通っている様に家康の胸を衝く。
「・・・なら!?」
 家康は慶次を引き留めたかった。
自分の下で・・・そう出掛った言葉を引っ込めた。
 家康が言い掛けた時に見た、慶次の眼を見た途端。
家康は何も言えなくなったのだ。
 どんなに言葉を重ねても慶次の心は変らないのだと、
家康は悟ってしまったからだ。
「・・・いや・・・なんでもない。」
(先程慶次は申して居ったではないか。
わしに“別れ”を言いに来たと!)

― 浪人とは、血縁や家族、そして今まで出逢って来た友を頼る事を全部やめ、
己の身一つで生きていきそして、
何処か知らぬ所で死に目をさらすこと無く死ぬ事でもある。

 そんな家康の心境は慶次には解らなかったが、
己の心を知ってくれた事は解ったので、慶次は最後に本心から言葉を贈るコトにする。
「家康。俺はおまえの進む道を止めはしないし、阻む心算もない。
家康の味方になる気はないけど、敵にもなる気はないさ!
家康は家康の道を
俺は俺の道をただ進むだけだから。
家康が胸を張って進んで言った道を俺は何も言わないよ。
・・・それだけは最後に信じて置いてくれ"竹千代"。」
 慶次の眼を真っ直ぐ見詰めたままその言葉を最後まで真剣に家康は聴いた。
その眼は何処までも澄んでいて、最初から最後まで揺らぐ事が無かった。
「慶次・・・わかった。憶えておこう。」
 慶次の言葉を噛みしめながら家康はふと気付く。

・・・もしかしたら今の己は、
豊臣秀吉の慶次を切捨てた真意を少し理解する事が出来るのでは、と。
“・・・慶次は決して誰かに下る事はない。
誰とも対等に、・・・いや、それ以上にいつか凌駕してしまうのだ。
本人に関係無く。それ故、秀吉公も・・・天下を目指す為に慶次を”


END

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

《あとがき》(と、いう名の言い訳)
 戦国BASARA3妄想シリアス成人家康(?→)+慶次小説です。
 こんな場面も在ったのでは無いかといった私めの妄想ですとも!

 いえねぇ・・・
ジャンプQ立読みしまくってるんですが!(←善い子は真似してはいけない)
連載されてますでしょう戦国BASARA3前章編(?)
アレ読みましたら浮かんだのが"これ"ですよ!

 他のサイトではチョクチョク新キャラなど使われ始めてましたし、
本命(佐助・小十郎・小太郎)以外もちょっとずつ挑戦中の私めには、
これは丁度良かったですよ〜。

・・・作成期間は長かったですがねぇ(汗)

 ココまで読んで頂き有難う御座います。


作成者:葵琉璃

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