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BASARA(+オリキャラ)小説
捨てる友あれば、拾う友あり_慶次+謙信

― 友であった男と、たもとを別れてから幾つか月日が流れて・・・

(・・・う〜ん・・・どうするべきかぁー、・・・)
 只今、前田の風来坊は悩んでいた。
 京の都に居付いても叔父夫婦に見付かる率が増えて来たので、
他の地方へ回ってみるかと加賀から北上してみたが・・・
「このまま真っ直ぐ行くと越後に入るし、右にそれたら信濃へ入るコトになる。
参ったなぁ〜・・・越後か。」
 越後へ近づく内に昔のコトを思い出した。
「(軍神は、怒ってんだろうなぁー・・・説教は勘弁だけど。
でも、いい所だったんだよなぁ〜。)」
 軍神コト、上杉謙信に悪戯を仕掛ける前に観た、
城下の下町を通った時の町や村の様子で、とても喉かで好い所で在ると、
よそ者の己にも一目で謙信の力量が覗えた。
 説教はまつ姉ちゃんだけで十分な己が、
怒られるかもしれない場所へもう一度行ってみたいと思った理由。
 それは、・・・
(急いで逃げる時に、一瞬だけ見えたあの人の顔は、暖かい眼差しで俺達を見てたなぁ。)
 別れる前の友と悪戯しに行った最後の場所であると事もあるが、
悪戯を去れたのに、笑っていたその顔の訳が知りたかったのだ。
「・・・捕まったらその時は、その時。ナントかなる・・・かなぁ?」
(会えるかどうかもわからない内から悩んだってしかたない!
いっちょ、行ってみますか!)
 出来るならそのまま越後を通り過ぎるも一興、見つかって捕まるも一興と腹を括り。
一歩踏み出したその先は、真っ直ぐと越後へ向かうのだった。

「お姉―さん!お茶と!後、団子五つ!」
「はいなぁ〜!」
 城下が見える茶屋の奥へ、慶次は声を掛けて椅子に座る。
 奥から景気が好い茶屋のおばさんの声が聞こえて来た。
 慶次は疲れている訳では無いが、少し小腹が空いたのと・・・後、
どうやって相手(軍神)に会うかと中々思い浮かばなかった。
「はい!お兄さんお待ち!」
 出て来たお茶とお皿に五つの団子、そして小さく丸められた団子が五つあった。
「・・・あれっ?」
 慶次が不思議に思ったら、直ぐに答えが返ってきた。
「これはお兄さん肩に乗ったお猿さんの分さね!」
 慶次の肩を指差しながら言ったおばさんの言葉に、
夢吉は喜び肩から飛び降りる。
「ウキッ!」
「えっ、俺のと別けるつもりだったんだけど・・・」
 その嬉しそうな夢吉を見て困った顔でおばさんに言う。
 その顔に笑いかけながら訳を話す。
「余りモノで作ったから悪いけどねぇ・・・
元気のイイ声聞いて、コッチまで元気にさせて貰ったからねぇ!そのお礼さぁ!」
 その心に感謝して、慶次は御礼を言う。
「お姉さん、ありがとなっ!」
 笑顔の慶次におばさんは一瞬ポッと赤く染めて「好いってことさ!」と、
そそくさ奥へ戻っていた。
 その態度を慶次は不思議に思ったが気にせず夢吉に話し掛ける。
「何か、わかんないけど・・・好かったな!夢吉!」
 今にも飛びつこうとしていた夢吉は、慶次にそう言われ頷きながら食べ始めた。
「ウキ!(モグモグ)」
「たらなかったら、俺のまだ在るからな!・・・じゃあ、頂きます。」
 行儀よく手を合わせて、食べ始める。
「(ゴックン)うん!うまい!」
 と、一口食べて感想をのべてもう一つへと手を伸ばした時、横から声が掛った。
「・・・(クスリ)となりよろしいでしょうか?」
「へっ?・・・あっ、いいけど(パクッ)」
 一瞬何を言われたか判らなかったが、直ぐに理解しロクに相手を見ずに簡潔に答えて団子を口にした。
 そして、モグモグと食べながら・・・何処かで聞いたようなぁと横に眼をやると。
「わたくしにも おちゃと おだんごをひとつ」
 店の奥へ注文していたのは、
白い頭巾に変装の為か僧侶の格好をして袈裟の下から覗く横顔は・・・
「(軍神!?)ぶっ!!(ゴクリッ)・・・ケホケホッ!」
 ・・・上杉謙信の横顔だった。
 人前で食べた物を出すと云う(勿体無い)ことをする事はせず、
口を押さえたが・・・まだ少し塊が残っていたモノを飲み込んだので咳き込んだ。
(おちゃ!お茶!)
 四苦八苦しながら慌てて湯飲に手をやり飲乾す。
「おや、・・・・クスクスッ」
 隣ではそれを見て、座りながら楽しそうに笑う謙信公。
(・・・笑いごとじゃないんだけど!) やっと落ち着き、その笑い顔にジト眼で睨んで想ったが、心の内に留め相手を咎める。
「ケホッ!あっ、・・・あんた、こんな所で何してんだいっ!
・・・(コソッ)っていうか、城主がこんな所に出てきて良いのかい?」
 慶次の言葉にドコ吹く風で、軍神は笑顔で応えある方向に視線を向ける。
「しんぱいは、むようですよ(チラッ)」
 その言葉に慶次は軍神の視線を辿ると、慶次の視線に気付きサッと蔭に潜むモノ数名。
(・・・忍びってかい!若干一名忍びじゃないけど(汗))
 隠れるのがワンテンポ遅れた者に慶次は苦笑して、軍神に顔を戻す。
 茶屋のおばさんが丁度謙信公(おばさんは気付いていない模様)の頼んだものを
運び終わっていて、軍神はお礼を言っている処だった。
 予想外の軍神の登場で慶次はどう言って好いものかと焦るが、
先ずは当り触りのないコトを聞いてみる事にした。
「・・・良く、ここに来るのかい?」
 訊ねられた軍神は、ニッコリ笑いこう仰った。
「いいえ・・・そういえば、ここにすわることははじめてですね。」
「・・・じゃあ、何で、 」
 こんな所に と、慶次は続け様としたが、途中で気付く。それは言わずもがな・・・
「あなたが”えちご”へはいったと “ゆきぐみ”から ほうこくがありましたので、
あなたに おあいしたくて ここにきました。」
 そう言ってずずっとお茶を優雅に啜る謙信公。
「・・・だよなぁ〜(汗)」
 慶次は頭を掻いて視線を彷徨わせたが、やがて覚悟を決める。
「その〜・・・すまねぇ!(あの頃は)俺が浅はかだったんだ!
あんな事(悪戯)をアンタに二度としねぇから、許してくれ!なっ!」
 身体を横に居る軍神の方へ真っ直ぐになる様に向け、
両手をパチンと合わせて頭を下げてそう言う慶次に。
 軍神は最初目をパチクリさせたが、やがて笑ってこう言った。
「(クスリッ)なにかとおもえば、おもてをおあげなさいまえだけいじ。
もう きにしなくてもよいのですよ!
あれは、うまくかけておりました。
・・・まえだのふうらいぼうのことは、はなしにききおよんでおります。」
 あの時の様な眼をして許しの言葉を紡ぎ。
それどころか慶次の悪戯(落書き)を絶賛する謙信公に、
ポカンと頭を上げて少し呆れた。
(普通怒るだろあんなコト去れたらさぁ!
褒めて如何すんだよ、あんた!(汗))
 とは、言えず慶次は黙っていると、謙信公はふっと目を伏せしんみりと言う。
「あなたがげんきそうでほっとしました。
きょうというひに、あなたにおあいできてうれしくおもいます。
・・・すみませんが、そのごの”あなたがた”のこうどうはききおよんでおります。
それをきいたとき わたくしはあなたがしんぱいだったのですよ。」
 ニッコリと最後に笑って言ったその言葉に慶次は一瞬言葉を失った。
・・・と言うより、胸が痞えたのだ。
 泣きたい様な苦しい様な表情を一瞬したが、
直ぐに慶次は苦笑に変えて、頭を掻きながら溜め息交じりに言う。
「(ハァ〜)・・・ああっ、・・・あんたのトコロの、
毘沙門天様に罰を降されたんだろうさーっ俺は!
お天道さんは、ちゃんーと、見てたってコトだろうねぇ〜
・・・結局、アイツに捨てられたんだ俺は、ねっ!」
 そう言って慶次は空を仰ぎ見ると、澄み渡った青空とお日さまがある。
 慶次の話を聞きながら様子を見ていた謙信は、直ぐに察知する。
(・・・いまだ(心の)”キズ”が いえていたいのですね・・・あなたは、)
 慶次の瞳を視れば無理をしているのだと解った謙信は、そう思ったが口にしない。
・・・したら慶次は、”笑い”の仮面を被り、
謙信に二度と本心を見せようとはシナイだろうと見抜いたからだ。
(・・・それは、わたくしにとって ゆゆしきじたいです、ね。・・・)
 最初に出会ったあの時、謙信は慶次と居れば楽しいだろうと。
少し、・・・傍に居る豊臣秀吉が羨ましく想えた。
 それ程の眩しかった友垣が、
一人の男に出逢って無残に引き裂かれてしまったと聞き及んだ時に、
何よりも己の願いが天に届かなかったのかと嘆いた。
 ・・・もう一度彼らに会えた時、己もその仲に入れて欲しいと頼む心算で居たからだ。
(このよ(時代)で あの”すばらしき ともがき”の すがたがみられないのは、
まことに ざんねんにおもいますが・・・あなたのともに わたくしもなりたいのです。)
 そう謙信が今日この場所に、・・・慶次に会いに来たのはそう言う心算で来たのだった。
「・・・では、まえだけいじどの・・・わたくしが ひろっても よろしいですか?」
「・・・へっ!・・・えっ!?」
 眩しそうに見上げていた慶次は、謙信公のその言葉に驚いた。
 そんな慶次に懇願するように謙信は淡々と言葉を続ける。
「あなたが”とも”となって くださったなら わたくしはうれしくおもいます。
わたくしは、いままで”えちご”のためにつくしてきましたが、
だれひとり “とも”とよべるようなかたをならべられるかたが つくれませんでした。
ひとりかたをならべられるかたが いるのですが、
・・・そのかたは、てきのおんたいしょう。
”とも”としては、まみえることかないません。
・・・だから、 」
「ちょ、まっ・・・待った!待った!」
 淡々と続く謙信の言葉を慌てて遮って、慶次は信じられない思いで確認する。
「俺なんかで良いのかい、あんた!
なんたって俺は、あんたに殴り込みヨロシク、悪戯をした不届き者なんだよ!
そんな奴が”友”だなんて、あんたの評判が落ちたらどうするんだい?」
「あなただから よいのです。
あなたといれば、なんだかたのしそうで 
あなたのみている”せかい”をわたくしにも すこしわけてほしい。
きょうゆうしてみたいとあのとき。
・・・あいまみえたときに こころのおくそこからそうおもいました。」
 心配そうな慶次の余所に、謙信は真っ直ぐ心のままに感じた事を慶次に話す。「(あんたは!?・・・)っ!・・・ ///」
 そう謙信は最初っから一国一城の主としてではなく、
身分も関係無く”上杉謙信”というただの一人の人間として、
同じ一人の人間である”前田慶次”に接している事が。
・・・先ほどからの態度を思い返せば、慶次に理解する事が出来た。
 頬や顔が熱くなるが意識しなくてもわかる。
(・・・俺って今、口説かれてるんだよなぁ・・・)
 まるで愛の告白でもされてる様な錯覚に落ちるのは、
この中世的で整った顔立ちの性だろうと思うのだが、
相手の真剣な眼差しを受け取って満更悪い気はしない己が居る。
(友か・・・この人なら、信じても好いんじゃないか?慶次!)
 “あの事”が有ってから少し臆病風に吹かれてはいたが、
慶次は人を疑ってビクビクするより、人を信じて裏切られる方がマシなたちであった。
 そう己に問い掛けなくても、答えはもう己の中で出ている。
 慶次はふっと顔を緩め、久し振りに人懐っこい笑みで手を差し伸べてこう答える。
「うん!謙信、これからよろしくなっ!」
 その答えに満足して出された手を握り返し、
謙信も誰にもしたことも無い”友”への笑顔を贈る。
「はい!こちらからも よろしくおねがいしますね!けいじ!」

― それが、慶次の新たに出来た友との・・・(謙信にとって唯一無二となる友との)
  第一歩であった。


END

《あとがき》(と、いう名の言い訳)
 英雄外伝ストーリー後BASARA2ストーリー前の慶次と謙信が友となるお話!
 ・・・意外と他所(他のサイト様)で、読んだ事無いなぁ〜と思い至り。
無いなら私が造ってしまえ!と僭越ながら考え至り造ってしまいました!(←テヘッ ///)

 確かに外伝ストーリーは哀しい切ない話でした。
 ・・・ですが!
 もし、あの軍神に(悪戯を)仕掛け様としなければ、
この二人は戦乱の戦場で敵同士だったかもしれないのです!

 捨てる神あれば、拾う神あり

 題名で文字りましたが、本当にその通りだなぁと思いました。
 この慶次と謙信公の出逢いは、戦乱(戦国BASARA感)で、
余りにも友達間のほのぼのとしていて好きだなぁ〜と、
改めて想いました。(←かすがには、悪いが(汗))

 ココまで読んで頂き有難う御座います。

作成者:葵琉璃

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