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BASARA(+オリキャラ)小説
朝日夢に詩(宗兵衛+利久+α)

「・・・ちちうえ〜っ」
 夜中利久が自室で書物を読み耽っていた頃。障子の向こうからか細い声が聞こえた。
 障子に映し出されたのは、青年の腕に抱きかかえられた影。
「宗兵衛?・・・入りなさい。」
 その影が屈み人が入れるだけの隙間から現れたのは、困った顔の忍びの者に抱きかかえられた、泣きはらした寝巻の宗兵衛であった。
「・・・失礼します。」
「ああっ、構わない。・・・おいで、宗兵衛。」
 障子の方へ向きを変え前半は忍びに、そして両手を広げて我が子を呼ぶ。
 すると直ぐに腕の中へ飛び込んできた子を抱きしめる。
 忍びは離れた子供を離した後、廊下へ下がり障子を閉め控えたのを目の端へ止めて、内心苦笑する。
 そして、直ぐにどうしたのか我が子へ問いかけた。
「怖い夢でも見たのかい?宗兵衛。」
 ポンポンと背を軽く叩き、あやしながら問い掛けたので、幾分か落ち着いたのかたどたどしく話し出した。
「グスッ・・・父上、がっ。・・・父上が、たかい”ばしょ”から、
・・・黒いけものに、落とされる夢を見ました・・・」
「!?」
 そう言った宗兵衛の言葉に、外で息を呑む気配が此方にも伝わる。
だが、利久は受け入れる様に微笑み宗兵衛を抱きあげる。
「・・・そうか。そんな夢を見て。宗兵衛は、泣いてくれるのだな。」
「・・・はい。」
 もう泣いては居ないのだが、悲しそうな宗兵衛を障子の外の縁側へ連れて行き、
月を見上げて思う。
 最近尾張の空気が悪くなりつつある事は、利久にも感じ取れてきた。
 そして、その前から宗兵衛は度々夢として、察知しているのか、今日みたいに泣きついて来たのだが、それまで何が怖いのか宗兵衛本人が解って居らず、ホトホト困っていた。
 それがわかる様になって来たと言うのなら、この事を公けにするのは、この子の為にならないだろう。と利久には、瞬時に判断出来る。
「宗兵衛、気にするな。・・・この乱世どの様になるかわからないが、流れを読み、如何するかは自分次第だ。流れに乗るも一興、流れに逆らうも一興。結局自分がどう在り、生きたか。その心を受け継ぐのが自身の子や兄弟であったり、家臣であったりと様々だ。でも、一番忘れてはイケないのは、戦が始れば一番啼くのは民なんだ。それを善く憶えていなさい。」
 そうして、宗兵衛に向き直ると。
「・・・は、い・・・。」
 父の腕に抱かれ安心できたせいか、少しウツツとした宗兵衛が、何んとか必死に利久に応え様と頑張って眠気と戦っている処だった。
「おやおや、宗兵衛には早かったかな。」
 まだ七歳児には、早かったかなと、苦笑して言ったのを聞きつけ、宗兵衛はムキになってなったのかそんなことないと訴えている。
「宗兵衛はまだ、だいじょうぶです。」
「うん。解ってるさ、宗兵衛。・・・でも、そなたの今の仕事は、よく食べ、よく動き、よく寝る事だ。そうして、早く父を助けてくれると嬉しいのだが・・・。」
 覗きこんで言うと、しまったという様な顔をし、いそいそと利久の腕から下して貰う。
「父上!御休みのところ、ありがとうございました。お先に就寝させて頂きます。」
 そうお辞儀して言って来たので、笑って答える。
「ああ、よく眠りなさい。」
「はい!」
 ニコリとして、良い返事をした後、慌てて自室へと音をたてずにはや歩きして行った。

「ハハッ!宗兵衛は器用だな。
・・・黄鳥(こうちょう)。」
 我が子を見送った後、真面目な顔になって控えていた忍びに声を掛ける。
「はっ!」
  頭を垂れたまま主の次の言葉を待つ。
「この事は、他言むようだぞ。」
「・・・ですが!」
 先ほどから黙って聞いていたのだが主のその言葉に、
黄鳥は言わずには居られなかった。
 それを咎めず、利久は安心させるよう笑って言う。
「大丈夫だ。私はまだ、死ぬわけではないさ。」
「そうでしょうか?」
「宗兵衛は、黒い獣が”喰らう”とも、”殺す”といったことは、一言も言ってない。」
 そう指摘してやると、弾かれた様に頭を上げ主の顔を見る黄鳥。
「!・・・過ぎた事を申しました。」
「心配してくれたのだろう。有難う。」
「イエ、勿体無きお言葉です!」
「これからも、私の目となり手足となって、宗兵衛を目に掛けてくれ。」
「はっ!」
 その声を聞いた途端、瞬時に姿が消えた。
(黄鳥も、大分前田家に慣れたようだ。)
 自分付きの忍びが大分自身の感情を出して来た事に密かに喜び、そして、星を見上げる。
(・・・仕方がないな。私にはどう頑張っても武の才は足りない。それより兄弟の中でまだ、犬千代の方が秀でているからねぇ。)
 最近メキメキと上達して来た、野山を駆け回っている四番目の弟を想い浮かべ、苦笑する。
(己はまだ良いのだけど・・・あの子のコトが心配だな。)
 宗兵衛の力を伸ばして挙げたいが、各地で小競り合いが増えて来た現在。その力がいつ善からぬ者に悪用されるか判らない。なら、今自信が生きている内に出来る事をして置かないと。前田家が残れるように・・・責めて宗兵衛が少しでも笑って居られる様に。
 己はまだ恵まれている。
 幸い己を慕ってくれる家臣も、可愛い子も居るのだ。
「さて、やるコトがいっぱいあるなっ!」
 伸びを一つした後、気合いを入れてまずは、身体を休める事にする。


END

《あとがき》(と、いう名の言い訳)
 前作『追憶の狭間で…』より数年前の出来事です。
 宗兵衛に予知夢出来る設定で!!そしてオリキャラ忍び登場!
前田家の家紋が梅なので、鶯の意味である黄鳥(こうちょう)にしてみましたー!
 利久が次期当主と確定した時に付いた忍びです。
利久命なのですが!主と同様、宗兵衛の魅力にハマりつつあると言う。
 ですが、利久に『私の目となり手足となって、宗兵衛を目に掛けてくれ。』と言われた事が、黄鳥には試練となるのですよ。・・・何故って、潜んでるのに、宗兵衛にコトゴトク見付かってしまうのです!
 宗兵衛にとっては、黄鳥は兄の様な存在なので、かくれんぼしてる間隔で。
 しかも、その頃宗兵衛は妖怪や幽霊等が、平気で見えちゃうもんだから黄鳥にとっては、慶次が何をしても、何事にも驚かなくなったし。宗兵衛が慶次になる頃には、気配を悟られないスキルが上った事この上なし!多分それだけは、風魔に引けを取らなかったと思います。(←コラコラ)
 そして、利久が死ぬ前に、己の代わりに何があっても手を出さず、慶次の味方で居て欲しいと頼まれるのです。
 と、言った感じで妄想が広がりつつ次へ参りましょう。
・・・何だか楽しくなってキタかも(笑)
 ココまで読んで頂き有難う御座いました!

作成者:葵琉璃

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