[携帯モード] [URL送信]

BASARA(+オリキャラ)小説
追憶の狭間で…_慶次(宗兵衛)+利久
『宗兵衛。例えどんな事が遭っても、お前は私の自慢の息子だよ。』
 そう言って父上は抱きあげてくれた・・・それは、大きくなった今も色あせる事無く聡明に慶次の記憶の中に残っている。

 その頃の自分はまだ前田家に馴染めて居らず、ただ周りの顔を気にして大人しく過ごしていた。
 そんなある日のコト。前田家当主にして、宗兵衛の義父である前田利久が、公務の合間を縫って、宗兵衛を城外へ連れ出したのである。
「父上!・・・どうかされたのですか?」
 最近、中々会えなかった利久に、会えたのは嬉しかったのだが、
仕事は大丈夫なのかと心配になり、手を繋いだ先を見上げて声を掛けた。
「ハハッ!大丈夫、大丈夫。・・・偶には息抜きもさ、必要なんだ。
そんな時に自分の子に会って何が悪い。」
 と、前半は宗兵衛に、後半は利久の少し後ろに控えた護衛に少し怒ったように言った。
「それより、宗兵衛。家には大分慣れたか?」
 何気ない風に隣の宗兵衛に目の高さを合わせてそう聞いて来たので、
宗兵衛は一瞬ドキリとしたが、直ぐに何んとも無い様に笑って答えた。
「っ、ハイ!周りの方々が色々と教えて下され、毎日が新しい事でいっぱいで楽しいでふぁ・・・ひひふへっ(父上)!」
「ハハハッ!宗兵衛。何言ってるか、わからないぞ〜。」
 ニコニコと笑いながら利久が聞いていたかと思ったら、話の途中で両頬を横に引っ張られた。
「ほへは!ひひふへは、ほほほひっはふかか!!
(それは!ちちうえが、ほほをひっぱるから!!)」
 大人と子供では力の差があるので抗議の声を出しても、引っ張られたままで言葉にならない。
「ほーれ、ほれ。」
「ヴヴーっ!」
 宗兵衛が少し涙目になりながら父を睨んでいたら、後ろから護衛が見かねて声を掛ける。
「・・・利久殿。 (大人げないですよ。)」
「いやいや、すまん、すまん。」
 やっと、引っ張っていた手を外し、片手を縦にし謝るが、利久の目は笑ったままだ。
「ちちうえ〜っ。」
「これは、宗兵衛が悪いのだぞ。・・・だが、」
 笑って言った利久が、いつの間にか真剣な顔になってこう言った。
「宗兵衛。例えどんな事が遭っても、そなたは私の自慢の息子だよ。」
 そして、利久は宗兵衛を抱きあげゆっくり歩き出す。
「父上?」
 突然何故、そんな事を言い出すのか解らなくて利久の顔を窺う。
 そんな宗兵衛に笑いかけながら、言い聞かす様に話し出した。
「心配するな、宗兵衛。今傍に居るモノ達は私の信頼に至る者達だ。
・・・母上が死した後、そなたが周りの顔を気にしていた事は、聞き及んでいるよ。」
 それは、後の護衛と離れて隠れている忍びの事を
言っているのだと、気付き宗兵衛は息を呑む。
「・・・父上。」
「知っているさ、そなたの事だからなっ。
まだ、そなたの事を良く思って居らん者もいるだろう。
その中で必死に笑っているそなたが、そなたの母に瓜二つで、微笑ましいのだが。
・・・今は、気にしなくてよい。」
 それを聞き、宗兵衛は言葉が出なかった。
「・・・。」
 当主の子として前田に入ったのだからと、否とは言えず無理して頑張って居たのだが。
 まさか、余り会えていなかった利久に、悟られていたとは思いもしなかった。
 どうしてよいかわからない宗兵衛を利久はギュッと抱きしめ、ポンポンと背を叩く。
「当主としては、物分かりが善くて嬉しいのだが。
・・・父としては、我がままを言って貰わないと困るな。」
 本当に困ったと言う声音で言われて、利久の肩に置いていた手は、
いつの間にか肩口を掴み、目の前が歪んできた。
「只でさえ、そなたと血が繋がっていないのに、これ以上離れてしまってはそなたとの溝が深まってしまう。・・・あんなに愛しい人の愛しい児との絆を深めなければ、何の為にそなたの母を娶ったかわからなくなってしまうな。」
「ちちうえ、」
「そなたには、心から笑っていて欲しいから、頑張って仕事に専念していたが。偶にはこんな日が在っても許されるだろう。なぁ、宗兵衛?」
 そう笑って聞いてくれて、少し泣き笑いになりながら宗兵衛は答える。
「はいっ!父上。私も父上と一緒に居られて嬉しゅうございます。」
 そう言った宗兵衛を見て、利久は片手で抱きながら涙を拭いてやる。
「そうか。」
『やはりこの子は可愛い!』なんて思いながら、明日はどうやって時間を作るか模索しているのだった。

 主上の思惑が手に取る様にわかる後ろの者達は、自分達は結局巻き込まれるのだろうと頭が痛いような、微笑ましいような思いだったとか。・・・宗兵衛こと、慶次はその事はまだ知らない。


END

《あとがき》(と、いう名の言い訳)
 どうですか利久さんの親バカっぷりは。(←コラ!)
 無理して片手抱きしたので腕が痺れていたら微笑ましいなぁと!

 とある資料によれば、利久さんは六人兄弟の長男で、定かではないが、織田信長の父親に仕えていたらしく、温厚で文人のような人柄で、武将としては凡庸だったそうです。
(・・・要は理数系=草食系男子だったと、絶対この時代で数少ない武将ではと!)
 そして、信長の『家督は利家に譲れ』命令の時。穏便に四男の利家に城を明渡そうとしたら、奥方に、呪詛されたとか。その頃、利久のもと城代を務めていた奥村助右衛門永富(オクムラスケエモンナガトミ)は、利久直筆の書状を見るまではと、頑なに利家の尾張荒子への入城を拒んだとか。その家督騒動で、利久と利家の関係が一時悪化したそうですが、利家の金沢城に入った頃には、利家に仕えるようになり、利家も兄を一族の長老「ご隠居」と厚遇したとか。そんな出来事が残っている位『武将失格の心優しき男』そのままだったのでしょう。

 そんな数々の出来事がある利久さんを知ってみると私は、
 前田慶次にとって、利久は人間的に誰からも好かれる手本となる人で、最高の先生みたいな尊敬できる父だったのではないかと思えました。
 BASARA慶次の原点って、やっぱり利久さんが絡んでる様な気がするのですよ!
 それで、そういう親子の出来事をこれから偶に入れていこうと思ったら、
最初は何故かこんな感じかと妄想が広がってこんなんになりました。
 そして、その頃の利久の側近や忍び(未だ名前は決まってません!)は、大きくなった慶次にコトあるごとに『あの頃の利久様は・・・』と小言を言って、慶次が苦笑しているのだきっと!(←BASARAだと、秀吉と友垣の時には、もう他界している設定です。)
 こんな利久さんは嫌だと言う人すいません。・・・多分シリーズ化していきます。
 ココまでお付き合いして頂き有難う御座いました。


作成者:葵琉璃

[次へ#]

1/16ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!