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5.紛れもなくアナタだった(支奴、嵐王/邪)
助けるつもりが助けられて二つが融解した。懐かしい仲間とまた共に居ることが出来る反面、大切な----守るものが増えすぎて自身の使命を黄泉の姫から聞かされた。弟には言わないでほしいと言うが彼はきっと分かっているのだろう。

「あの、お二人とも」

「式の癖に生意気だな」

「あちきはアンタです、分かっているくせに意地の悪い」

薬師は式に富んだ二人の間に挟まれていた。最中を買い差し入れた先に何故か支奴がいたのだ。今回は嵐王が本体のようで、式である支奴はやれやれと言わんばかりに薬師の隣を陣取っている。

「あの、喧嘩はなさらないでくださいね、小屋が壊れてしまいます」

「せぬ」「しませんよ」

「(本当に?今にも武器を構えそうなのに)」

はらはらしながら見守り、九角でも来てはくれまいかと期待したが、口に出したら最後、二人に何をされるかわかったものではなかった。三人で茶を囲む日がきたことは喜ばしいのに--夢にまでみていたのにこんなことになるとは。

「ユエさんは恩人ですからね、そんな顔しないでください」

「心配するでない、何もせぬ」

人払いをしてあるからと仮面を外した漆黒は最中を口に含み茶を飲んだ。

「お二人には感謝しております、村の皆を助けることが出来たのですから」

「大したことはしてません、あちきたちこそ、感謝しているのですから」

「目が覚めたのは確かだ。あのまま死んでいたら若の悲願が達成せぬ、感謝しておる」

「いいえ、いいえ、ここまで頑張れたのも--」

言葉を詰まらせ、はらりと頬を伝う涙に二人は驚いていた。いつからこんな弱くなったのかと薬師は二人の衣をギュッと掴んで見上げる、好いた人を助けることができて嬉しいと心から感じたのだ。

「お二人が、いてくださったからです、束の間で構いませぬ、どうかこの幸せを奪わないでくだされ」

「ユエ」「ユエさん」

「お慕い申しております、今だけ、触れることを許してください。そして、どうか私を忘れてください」


愛しいからこそ

幸せになりたいのに、彼女の宿命は重すぎるのだ。



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