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僕と僕  ★殺人、病注意(ユナー)


ふわり


甘い薔薇の匂いが辺りに漂っていた。




どろり



真紅の薔薇のその紅さは生暖かい血だった。



何故かその薔薇に手が勝手に伸びる。

根元から折って摘もうとすると、どこかで聞き覚えのある声が遮った。



「摘んでしまうのかい?」


辺りを見回しても誰もいない。


薔薇の茎に爪を立てる。

「そんなに呆気なく摘んでしまうのかい?」


また声に遮られた。


もう一度よく辺りを見回す。

よく見ると紅い薔薇畑に黒い一つの人影が突っ立ていた。


ぽきり


ついに薔薇の茎は儚く折れた。


茎の断面から生暖かい液体が垂れている。


紅い紅い血の色をした液体が。


短く驚愕の悲鳴を漏らし薔薇を放り投げる。


「あーあー。やっちゃったよ」


また声が聞こえる。


「誰!?何処にいるんですか!?」



恐怖に怯えるユナーの顔に温かい息がかかった。


「ここだよぉぅ?」


目の前にはユナーと同じ顔の人間。
違うのは紅く燃える真紅の瞳。



「そんなに呆気なく命を絶ててしまうんだねぇ?やっぱり僕はどうしようもない殺人鬼だねぇ…?」


ユナーが投げ捨てた薔薇をもう一人のユナーが拾いあげ、優しく撫で愛でる。


そしてユナーの胸に手を置いた。

ユナーは恐怖に押しつぶされそうで、震えながら立っているのがやっとだった。



「ほら、見て?僕の…君の大好きな血だよぉ…?復讐に燃える真っ赤な血。」


歪んだ笑みがユナーの青い双眸に移る。



「どくんどくん。ほら興奮するでしょう?思い出して?」



意識と正気が同時に飛んだ。


「生きたままの人間の内臓を食い破ったり、引き契ったり、ナイフで引き裂いたり…あぁ口にするだけでぞくぞくしてくるよぉ…」




快感に溢れる目を細め、小さく震える。



「ほらぁ…行こうよ?復讐するんでしょぅ…?」



ずぶり


緋色の目をしたもう一人の自分がユナーの体に沈んでいく。



「殺せ、殺せっ!僕がやられたことみんなに仕返すんだ!痛みを、最愛の友人無くす苦しみを」



ユナーがその声に答えるように奇声を上げ狂った様に笑う。





肉切り包丁を振り回し薔薇畑を刃で凪いでいく。


紅い花びらが辺りに舞う。



その花びらが頬に掠めた。

生暖かく、ねとり。と肌に付いたまま離れない。

凪いだ薔薇の花は人の頭に変わり、美しく舞っていた花びらは血飛沫に変わった。



「ーッ!?僕は、何を…ッ!?」


正気を取り戻し辺りを見回す。



血溜まりに転がる首の無い死体。死体。死体の山。


手に握った肉切り包丁は血と人間の脂肪で濡れていた。


「殺した…ッ!?殺した…ッ!?僕が、…また…ッ!?」


頭を抱えて血溜まりに倒れ込む。


「あ、あ、あ、ああああああああぁぁぁぁぁッ!?」


誰か助けて…

僕じゃない僕が


勝手にお花を摘んじゃうの

誰か

誰か…



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あきゅろす。
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