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居ない君(リト×ティナ)



あばばばば


頭が真っ白で何も考える事ができない。目が泳いで心臓が爆発しそうな勢いで脈打っていた。

ティナが隣に居ない。あぁきっと誘拐されたんだ。そうだきっとそうだ!
じゃぁ、アレ、そう!
ティナに触った奴をぎたぎたに刻まなきゃ!
血祭りどころじゃない。バラバラにして家族にでも送ってやろう


自分の中で勝手に納得して一人で何度も頷いた。そして同時に不安感に襲われた。


どうしようどうしよう。ティナって可愛いから襲った奴がティナを犯しちゃったらどうしよう!

ティナって可愛いしふわふわしてるから流されて抱かれるかもしれない!

考え始めると頭がおかしくなりそうで一瞬目が回った。
膝が笑い始めてその場に立って居られなくなった。

汚い路地にへたり込む。
白い服が汚れるのも構わずお尻を付けて袖を擦らせた。


死にたい死にたい今すぐ死にたい。

というか抱かれたティナも殺しに行きたい。

確信は無いし殆ど妄想で構成された非事実だか混乱している頭ではそれが精一杯の想定だった。

あぁでもどうしよう!


殺される恐怖に歪むティナの顔と殺される寸前の血にまみれた悶える顔を見た瞬間に襲いたくなるかも!


そしたらティナの事許した事になっちゃう!でも絶対我慢出来ない!



でも


でも


でも!



どうしたのだろうか変な妄想ばかりして一人で不安になって。君が居ない事がこんなに大きいなんて!


こんなに心配になるのはきっと君を愛しすぎてるせい。この世で一番愛してるから不安になるのかも!


何時間経っただろうか。すっかり汚泥にまみれて汚れてしまった長い袖を捲り腕時計を見てみる。なんと5分も経っていなかった。


「どこにいった、ん、だよぉ…ティナのばかぁ」


不安の極地に立たされてついに泣いてしまう。

立ち上がろうと腰を浮かせてみるももう一度地面にへたり込んで泣き喚いた。するりと帽子が頭から落ちる。

「ティナが居ないと立てないよぉぉっ」

泣いて嗚咽で息が詰まり嘔吐きそうになりながらティナの名前を叫んだ。

「ひうぅぅっ!てぃっ、ティナぁぁぁぁぁぁぅっ」


「何?リト」


そこには首を傾げたティナの姿。両手には食べ掛けたソフトクリームと溶け掛けたソフトクリームを握っていた。

「え?」


「あのね、さっきぐるぐるあまあまソフトクリーム売ってるお店ぴーんて見つけたから、だーって買ってきたの」


「こっちあげる」と差し出したのは食べ掛けた方のソフトクリーム。

「ばっかかあほたれしんでしまえかすばかあほまぬけかすしねあほあほせいじん」

それを聞いたティナがリトの顔を覗き込み口付けを交わす。唇を離すと困った顔でリトを見つめた。
「ごめんね?ボクぺこーって謝る?」

「いい。ソフトクリーム頂戴」

涙を肩の辺りで拭って手を出す。

「あーんしてあげるね」

「うん。あーん」

ティナが差し出したのはやはり食べ掛けた方で。それでも仕方なく目を閉じて口を空けた。

「あ」

口どころか顔に冷たい物が覆い被さった。

「ああっ」

ぼだだっ、ぼと。靴に冷たい物が落ちてきた。
目を開けると半泣きになってぐずっているティナの顔。

「美味しいね。また買い直そうか」

顔にアイスをぶちまけられても怒らずティナの頭を撫でる。
靴にアイスを落とされても拗ねずにティナと手を繋ぐ。


僕と君は一緒に居るだけで幸せなんだ。一緒に居るだけでこんなに落ち着く。

君と居るだけでいいんだ。


ちょっと離れるだけで不安になるならずっと一緒にいればすっごく安心するんだよね。



「…アイスの前に服と靴が欲しいんだけど」


「…ボクもぴよんって思ったかも」



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あきゅろす。
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