Short story1 おやすみ前の運動 ※R-18注意 「はっ、は…、ああっ」 どうせ暑くなるから、と初春のまだ寒い夜の中。 暖房を切って身体を絡め合うと自然に漏れてしまう荒い息。 高野さんの思惑通りその熱を発した体からは汗が噴き出し、おろしたてのシーツを濡らす。 だがそんな冷たいシーツの感触も気にならないくらいに、今日も俺と高野さんは激しく愛し合っていた。 「んっ、うう…」 「声ガマンすんな。いいからもっと出せ」 ごり、と神経が過敏になっている部分を硬い肉塊で擦られ、身体が震え上がる。 もう既に限界が近いというのに高野さんはそれでもまだ此方を追い詰める気らしく、俺の反応を見ては一番感じる箇所に刺激を与えようとしてくる。 その強い刺激に堪えられなくて俺は腰を捻ったが、それは許して貰えず、直ぐに逞しい手の平に捕まってしまった。 「っそこ……、そこ、ダメなんです…って!」 「駄目、ってことは善いってことなんだろ」 「ひっ、あぁあ!」 両手でしっかりと固定された肢体にズン、と熱い塊を打ち付けられ飛び跳ねる体。 高野さんはその角度が気に入ったのか、そのまま何度も腰を揺すると俺の柔らかくなった粘膜を押し広げる。 しかし柔らかいと言っても、そこは幾つもの筋肉が張り巡らされている器官。当然女性器よりも固く、何かを受け入れる機能も備え付けられていない。 それでもその固く閉ざした粘膜の壁を突き進むことが出来るのは、おそらくこの人の持つ硬度のお陰なのだろう。 男性器は何よりも硬さが重要、とはよく言ったものだなと荒々しく体を揺さぶってくる高野さんにしがみ付きながら考えていると、摩擦により射精感を促されたのか、体内を抉るそれの質量がグンと増した。 「っあ!…ちょ、これ以上大きく、しないでください……っ!」 「無茶言うなッ、このまま中出すぞ…!」 「い…っ、あ!」 その掛け声と共に、ズリズリと快楽だけを求めて乱暴に擦られる、粘膜の襞。 でもそんな動きさえもこの人と同じく、高ぶった身体には気持ち良くて。 俺はもっと善くなるようにと自分の意志で腰を突き出すと、訪れる波に我慢出来ず高野さんの背中に爪を立てた。 「高野さんっ高野さん!たか……っ、」 がり、と何かを引っ掻く感触が指先に伝わるが、そんなことを気にしている余裕はもうない。 好きな人が目の前に居て、尚且つその人が今、自分を抱いていて。 もうそれだけで絶頂を迎えるには充分だった。 自身を貫く肉の感触をより鮮明に感じる為にも下腹部に力を込めると、その波は一気に訪れた。 「あ、あ、あ……!!!」 「……っく…!」 ぎゅう、と二本の太い腕に力強く抱き締められると、腹の中に広がるのは沢山の熱い液体。 高野さんは細かく痙攣を続ける直腸の奥深くに、ぶるりと身震いしながら射精を果たすと、力尽きたのかドサリと俺に覆い被さった。 「……っはー、」 「あ……」 こういう時は、どうすればいいんだろう。 先ほどよりも、ずっと近くなった煙草の匂いに微かに戸惑う。 しかしそんなの、考えるまでもない。 自分達は付き合っていて、昔とはもう違うのだから。 「たかの、さん」 緩み掛けた抱き締める手に再び力を入れると、嬉しそうに呼び返される自分の名前。 ああ、いま、堪らなく幸せだ。 自分が自身の腹の上に放った物と同じそれを体内に感じると、俺はそんなことを思い静かに余韻に浸った。 「……あー、やっばいわ。腰イテー」 だがしかし、こんなにも甘ったるいムードも一瞬にしてぶち壊してしまうあたり、さすがこの人。 高野さんは歳のせいか、などと言いながら上に乗っけていた体を横に倒すと、抱き締められていた為一緒に横向きとなってしまった俺を胸の中に収めた。 「セックスの後って、なんで眠くなるんだろーな」 「…知りませんよ、疲労感からじゃないんですか」 おいおい、なんだこのピロートークは。 つい三分前までは恥ずかしながらも少女めいた気持ちで胸が一杯だったと言うのに、この男が口を開いた途端これだ。 くあー、と高野さんが欠伸をする音をBGMにまあ実際はこんなものか、と現実のしょっぱさを痛感する。 「………ん…っ、」 それにしてもこの人は一体全体、いつまでヒトに突っ込んでいる気なのか。 欲を出し切り、性器が萎えたことで中を埋め尽くす容積は大分減少したが、それでも下半身に残る異物感はそのままで気になってしまう。 挿れられたまま眠りに付かれたのはまだ最近のこととして記憶に残っている俺は、気付けば口数の少なくなってきている高野さんにヤバいと察すると、慌てて声を掛けた。 「高野さん、寝るなら抜いてからにしてくださいよ」 「いや、もう一回する…」 「はぁ!!?」 この状態で!!? アンタ明らかに今すぐ眠りこけそうな雰囲気じゃないですか!!? 「ちょっと、馬鹿言ってないでさっさと抜いてください!高野さん寝ちゃうと大変なんですからっ」 「尻やらけー…」 「ひぁうッ!」 気が付けばいつの間にか回されていた両手に尻を鷲掴みされ、変な声を上げてしまう。 高野さんは本気でもうワンラウンドに及ぶ気なのか、掴んだ尻を左右に広げると横向きの体勢のまま緩やかに腰を揺すり出す。 「ほ…っ、本気なんですか!!?今日はもう無理ですって…!」 「お前だって、まだ足りないんだろ」 「そんな……っ、」 と、否定の為に口を開いたが俺はそこで思い留まった。 ……いや、でもあと一回くらいならいい…、かもしれない。 なんともふしだらな考えではあると思うが、何分此方とてまだまだ盛んな年頃。ヤれる時にヤっておきたい。 それに自分から進んでこんなことを言うのは恥ずかしいが、今なら高野さんに無理やり押し切られたと言い訳も出来る。 なによりすぐ間近にある高野さんの体温と、ゆるゆると与えられる刺激に身体はもう期待を募らせ始めている。 だったらもう、いっそ誘いに乗ってしまった方が美味しいんじゃないだろうか。 考えた末、心の中で続行を決意するとまたしても疼き出す、はしたない下半身。 そのもどかしさに堪えられず、高野さんの体を跨ぐ形で上に乗せている右足を曲げると、甘えるように温かい下肢へと絡み付けた。 「も…、もう一回だけ、ですからね」 足を絡めたことにより、密着した股関がほどよく気持ち良い。 高野さんに釣られて小さく反応を示しだしたそれを硬く締まったその下腹に擦り付けると、クチャリとささやかな水音が立った。 あとは、この人の逞しい物に貫かれるだけ。 ドキドキと高鳴る鼓動もそのままに、準備万端でいざ次にやってくるであろう快楽を待ち構える。 …だが、予想外なことに肩すかしを食らったかのごとく、それが訪れることは永遠になかった。 「………高野、さん…?」 自分からすると言ってきたのに、どうしたと言うのか。 俯けていた顔を上げ、恐る恐る呼び掛けてみると、なんと聞こえてきたのは安らかな寝息。 スッと何の前触れもなく尻から引かれた手に、俺は感じていた懸念を確信へと変えた。 「………え、本当に?」 くたくたに萎れたシーツの上。 残されたのはすうすうと気持ち良さそうに夢の中を旅する高野さんと、この人の性器を突き刺したまま勃起状態の自分。 どこか裏切られたような気分になりながらも、俺はとりあえず高野さんの鼻を摘むと、その行き場のない思いを指先に込めたのだった。 ちなみに翌日、高野さんと丸一日口を聞いてやらなかったのは言うまでもない。 ――――――― 横向きでぬるぬるが書きたかっただけです。すみません [*前へ][次へ#] [戻る] |