唐紅に
道化の告白



 期待というのは残酷だ。
 ひとつをこなせば次、次を乗り越えればその次を──際限なく寄せられる。

 身の丈に合った期待なら、どんなに苦労しても、何度失敗しても、それは成長に繋がっていく。だけど期待というやつは厄介で。

 ある一定のラインまで、期待を裏切らずこなした奴には、簡単には剥がせないレッテルが貼られる。



 出来るヤツ、
 優等生、
 天才、



 名称に多少の差異はあっても示すところは同じで、一見、相手を肯定する単語の後には、何故だか「だから」と続く。



 出来るヤツ“だから”。
 優等生“だから”。
 天才“だから”。



 “だから”何なんだよ。





 問い詰めたい衝動を堪えるのは、答えが判っているからだ。

 真の意味で万能な人間なんているはずないのに、期待は勝手に肥大していく。
 見せ掛けだけで中身が伴っていなくても、期待する奴らには虚実の見極めがつけられない。



 ──いや、本当は解ってる。
 だけど、見極められない“振り”をする。
 自分達とは違うんだと、押し付けたレッテルで分類し、相手を褒め称えながら遠退ける。

 見ているそこに、自分は欠片もいなくても。

 皆は何を見ているのだろう。










 俺はそれが──怖い。





 

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あきゅろす。
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