ゆるゆる
2
乾杯が終われば、鬼道学園の生徒会が愛夢を取り囲んだ。
「久しぶりやなぁ。愛夢!!
愛夢が鬼道に来るのを今か今かと待ってるんやで!!」
「本当久しぶりだねぇ、信君。
ショーはいつも来てくれてたのに、最近は俺が全く出てなかったから会う機会なかったしね。
でも、副会長が信君とか面白いよね。」
「愛夢。信吾を調子に乗らせたらダメだよ。」
「そうそう。いつも」
「「煩いだけだから。」」
「りょーちゃん、身長伸びちゃったね…。
カー君も俺よりちょっと大きいし…ダメだよぉ。俺の身長を置いて行かないでよぉ!」
「愛夢。…今の、可愛い。」
「つー君!!可愛いのはつー君だよぉ!!相変わらず大型犬みたく可愛いぃ!!」
「あ、愛夢さん!健は見た目犬でも猛犬ですから!!騙されたら駄目ですよ!!」
「またまたぁ。ルイルイは。
こんな可愛い猛犬はいないよぉ。」
そう言いながら健の頭を優しく撫で続ける愛夢の手を止めたのは勿論弥彦しかいない。
健は不満気に弥彦を見るが、弥彦の嫉妬を察した愛夢が弥彦の頭を撫でて居るので渋々引き下がった。
賑やかな壇上に政宗に絆されて近づく存在に気付いた愛夢は笑みを浮かべて手を差し伸べた。
「蘭君。」
その名前に鬼道学園の生徒会もそちらを向けば見覚えのある顔があり顔を引き攣らせる。
弥彦は静かに見ていた。
蘭はオズオズと近づき、先ずは鬼道学園の生徒会に頭を下げた。
「そちらの学園で数々の迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
その姿に御一行は狼狽えるが、報告を受けている弥彦は動じなかった。
蘭の成長振りに愛夢は喜んだ。
蘭は愛夢を見つめた。
「愛夢…居なくなっちゃうの、か?」
愛夢は苦笑しながら蘭の髪を撫でた。
「うん。だけど、蘭君とはずっと友達だから何時でも連絡してぇ。
さっき俺が任せられる人に引き継ぎたいって言った事聞いてくれてた?」
愛夢の言葉に頷く。
「俺は蘭君にお願いしたいんだぁ。
蘭君は自分の気持ちをシッカリと持ってる。そして此処に来てから周りの声を聞くようにもなったしねぇ。
そして勉強も頑張ってきたのミー君に聞いたよ。
生徒会の経験はお母さんの仕事を手伝いたいと思う蘭君には良い経験にもなるからね。
蘭君が居てくれたら、もっと良い学園になって行くと思の。
引き受けてくれないかなぁ?」
蘭は涙が零れた。
兄の様に慕っていた愛夢が自分を頼りにしてくれる喜び、そしてその愛夢ともう少しでお別れと言う事。
蘭は涙を流しながらも強く頷いた。
「愛夢の事、本当の兄ちゃんみたいで大好きだ。
鬼道さんと幸せになって下さい!
俺はもっと頑張って良い学園を作る生徒会の一員になります。
俺を認めてくれてありがとぅ。」
蘭は愛夢のドレスの事もあり、抱きつきたいが我慢して涙を流していたが、ドレスなんてお構いなしに愛夢から蘭を抱き寄せて背中を撫でた。
「ありがとう。蘭君。
俺を兄と慕ってくれてることも、これからの決意も。大丈夫。
蘭君には沢山の味方がいる。それは君の努力を見てきた人達が沢山居るという事だから。
明日から放課後は生徒会室にミー君とおいで、あと一ヶ月俺と一緒に仕事を覚えて行こう。」
愛夢の言葉に強く頷いた。
その時拍手が響き渡り、全校生徒から蘭に頑張れと声がかかった。
蘭は照れながらも一度頭を深く下げて壇上から降りた。
愛夢は嬉しそうにしていたが、その姿を冷たい目で見ていた時雨が居るのを誰も気付かなかった。
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