ゆるゆる
3
三時間ぐらいしてから政宗が起きて、少しスッキリした顔を見て愛夢はホッとした。
「んー。もう少し寝てて欲しかったけど、少しスッキリした顔になったから良かったぁ。
俺は書類を風紀と恭ちゃんに届けに行って来るねぇ。」
「ん。1人で仕事させてゴメンな。」
政宗の申し訳なさそうな顔に、苦笑する。
「政ちゃんは、俺に気を使いすぎだよぉ。俺が寝込んでる時は、いつも政ちゃんが負担してくれてるんだから、このぐらいさせてよねぇ。」
愛夢がそう言うと、政宗は目を見開き驚いた後、嬉しそうに笑いながら愛夢の頭を撫でた。
「…気づいてたんだな。要がやってる様に思わせてたつもりだったんだが。」
「俺はそんなに甘くないのぉ。
要も否定した事無いけど、誰がしてくれてたかは解ってたよぉ。」
愛夢は悪戯が成功した様な笑顔を見せて生徒会室から出て行った。
残された政宗は苦笑したから、携帯を取り出した。
表示されているのは主人の名前。
「そろそろ連絡しなければな…。」
一瞬辛そうに顔を歪めたが、政宗にとって唯一の尊敬できる人であり自分の絶対的な主。
そして、主の大切な人である愛夢は政宗にとっても思い人。
ふっと息を吐く。
愛夢が主と共にいれば、一生離れないで居れるのだと思い自分の気持ちを押し留める。
そんな自分に苦笑を漏らして携帯のボタンを押す。
数コール後に主である鬼道弥彦の声が響いた。
『よぅ。やらかしたみてぇだなぁ。』
主の言葉に苦笑が漏れる。
愛夢の近くで守れるのは政宗だが、この学園には弥彦の使いの者が何人かいるのだ。
どうせ弥彦に褒められたいが為に我先にと連絡をしたんだろう。
「…口出しはしたくありませんが、愛夢の気持ちを無視して先に連絡する様な輩は感心いたしません。」
『お前に言われなくともそいつは既に処分した。俺を思って動く奴はいらねぇ。俺と愛夢を思い動ける奴しか。』
「安心しました。では遊びの片付けも終わりましたか?」
『当たり前だぁ。1人気狂いな女がいたが大丈夫だろ。』
「…貴方の大丈夫は当てになりませんね。その女の資料を送って置いて下さい。」
『あぁ。来月の文化祭の招待状をこっちの生徒会に送れ。』
「わかりました。愛夢にも伝えておきますか?」
『あぁ。愛華さんがファッションショーをするから体調整えとけって伝えとけ。
政ぁ。盛大に公表するぞぉ。ククク。』
あぁ。怒ってるなぁと頭が痛くなる。
「…暴力問題はなるべく避けて下さいよ。」
完全には無理だと思い、一応伝えておく。
『ククク。善処してやる。
愛夢が悲しまない様にしてやらないとなぁ。』
「そこを忘れないで下さいよ。」
そして電話を切り溜息を一つ付きデスクにむかう。
(俺の主は2人共手を焼くよ…。)
と思いながらも、2人を思えば優しく微笑んでしまう自分がいた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!