生類憐れみの令
エネルギッシュな少女…いやマウンテンゴリラ?の名前は神楽。あいつからはゴキブリ並みの生命力を感じる。チャイナ服で頭に変なモン二つもつけて語尾もアルアル似非チャイナ。口は悪いわ頭は悪いわ、そうそう前に見かけたがおつかいなのかスーパーの袋を手に持っている時にガキ共に遊びに誘われて袋をベンチに置いたかと思うとそのままフラフラと…夢中になってしまったみたいで遊び終わるとベンチへ寄らずに万事屋の方に帰っていった。もう哀れとしか言い様がない。
「総悟、お妙さんはどうしてあんなに美しいんだろうなァ?」
「近藤さん、どうしてなんでもかんでもすぐツンデレって言うんですかねィ?」
「お妙さんはツンデレなんかじゃないぞ。いつでもニコニコしながら死んでくださいって言ってくるからな」
「ツンデレってのはデレが必要でさァ。デレって何?キモくね?」
「おい総悟?どうした大丈夫か?」
「大丈夫でさァゴリラさん」
「ゴリラさん!?ゴリさんがいいんだけど!」
「あーすいませんゴリラックマさん」
「カワイイ!!」
パトカーに乗っているとどっかの路地裏からうるさい女が飛び出してきた。本能的に危ない、と思ったが一瞬でそれが誰だかわかったから急ブレーキを踏んだりハンドルをきったりはしなかった。
ドォォォーン
まぁそうなるわな。飛び出してきた女はパトカーにモロ激突したというのにピンピンしてそうだ。そんな奴だからひいたのだが。
慌てて近藤さんが車を降りたので一応俺も仕方なく降りた。
「総悟ォォォ!?あの娘ひいちゃったよ?ちょっといくらなんでも…俺達警察なんだし一般市民見てるし!」
「大丈夫でさァゴリマッチョさん。奴ァゴキブリ並みの生命力の持ち主なんで」
「ギャアアア!!そうアルヨ、ゴキブリが!」
車道に転がっていたのに突然飛び起きたチャイナは俺達の背中に隠れるように涙目で路地裏を見ている。いったいゴキブリがどうした。
「ゴキブリ?いるのか?あそこに」
うんうんと首を縦に振るチャイナ。俺達の隊服を掴むその手は震えている。まさか、ゴキブリみたいな奴がゴキブリが苦手なのか?は、笑えるじゃねェか。
「ゴキブリさァ〜んこっち来いよ、一緒に遊ぼうぜェ」
「ギェエエ!!バカ!ハゲ!サドの変態!ゴキブリなんかが好きなのかヨ!」
「は?べつにそんなんじゃねェし」
「何マジに捉えてるアルか!ゴキブリ相手に中二病みたいな反応すんなヨ」
その時路地裏の闇から何か黒光りしているものがこっちに飛んできた。今までその話題をしてたんだもん。きっと俺が呼んだゴキブリさんだ。
「「「ギャァァァ!!!」」」
俺は一目散にパトカーに乗り込んだ。続いて近藤さんとチャイナが来るがドアは閉めたから御愁傷様。二人共泣きながら窓を叩いている。いい眺めだ。
するとゴキブリがチャイナの頭に止まりそうに…。思わず目を逸らした。
しかし目を開けるともう既にそこに二人はいない。後ろを振り返ると二人共後部座席に雪崩れ込むように倒れていた。窓は割られている。そういえばさっきすごい音がしたな…。大方チャイナの馬鹿力が破壊したのだろう。チッつまんねェ。つーか窓割れて全開なんだから意味ねーじゃん。俺知らねーからな。今回は俺じゃない。
「とりあえず逃げまーす」
二人にそう声をかけて直ぐ様アクセルを踏んだ。後ろからゴロゴロと人が転がる音と悲鳴が聞こえたがそんなモン知ったこっちゃない。
ただ、追い付けないからかどこか寂しそうにしているコオロギが見えた…
え?コオロギ?
「てめェ…騒がせやがって…」
しかしきょとんとしたチャイナに俺は何もできなかった。
ゴキが苦手な人、名前を聞くだけで嫌な人ごめんなさい!
思いついたんです。
だからコオロギにしました。
コオロギは夜行性でね。
うん、でっていう。
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