ある木の上で

太陽がサンサンと照りつける。その強い日射しのもと私は愛用の傘をさして公園のベンチに座っていた。

今日はとくに暑い…。暑くて暑くて何もやる気が起こらない。元々やることもないのだけど。

「オイ神楽!かくれんぼしようぜェ〜」

よっちゃん達が呼んでいる。まったくこれだからこどもは。大人のレディは日焼けとか気にしてこんな日には遊び回ったりしないのヨ。


「仕方ないアルナ〜!今行ってやるネ」

ガキ共の面倒を見るのも大人の仕事アル。我慢して遊んでやるカ!





「よっちゃん見ィ〜っけ!!」

「あ゙ークソぉ!最後の砦がァァァ」

フフン。これで全員見つけたアル。チョロいもんネ。ゲハハハハハ!!




「いーち、にィーい、さァーん、しィーい…」

さぁどこに隠れようか。あそこはさっき隠れたところだし、あっちは確か誰かが隠れてたような…。んじゃああの木の上でいっか。絶対見つかりっこない。


何本もある木の中のある1本に目をつけヒョイヒョイと登っていった、が。

「げ!?」

上にたどり着くとそこにはムカつく無表情があった。

「オイここは私の隠れ場所アル。退きナ」

「俺の方が先なんだからお前が退け」

「無理アル、もう鬼さん来ちゃうヨ!」

木の上で掴み合い蹴り合い、そして私の一発がクリティカルヒットしてこいつが落ちそうになった。しかしなかなか食い下がってくる。木の枝にしがみついているので早く落ちろと腕を踏んづけていたが、大変なことに鬼さんがやって来た!一旦動きを止める。これでバレないかナ?



ってコイツの下半身は丸見えじゃねェかァァァ!!!!

鬼さんめっちゃこっち見てる!バレてるヨ完璧!このバカのせいだァ…


「なんか見たことある下半身だけど子供じゃないな」

そのままどこかに行ってしまった。助かった…?助かった!空気の読める鬼さんアルナ!

「よかったな、俺のおかげで逆に疑われずに済んだじゃねーか」

「べつにお前のおかげじゃねーヨ」

「ちょ、引き上げてくれ。でねェとバラすぞ」

仕方なくムカつく野郎を引き上げた。私じゃなかったらお前そのまま落ちてたネって言ったら、お前じゃなかったら落ちかけてもねーよって言われた。まぁそうなんだろうけどさ。



「暑ィー…」

「暑いアル…」

「でもここ日陰でちょっと涼しいな」

いいとこ見つけたな俺達、なんて。いつもの会話と少し違うのは、暑さで頭の中がクルクルパーになってるからなのか。どっかの天パ並みのパーアルネ。



「よっこらせっと」

バランスをとりながら立ち上がったので私は思わず見上げた。

「傘忘れんなよ」

それだけ言って去っていった…私の背中を押しながら。

「ギャファァ!!」


ドスン、鈍い音と鬼さんの声が聞こえた頃にはもう既に奴はいなかった…








遊びに夢中になっている内に傘を置き忘れた神楽。だから無意識に木の上に行こうと思ったんだろうな。
鬼役の子のセリフ「見たことある下半身」ってのは隊服のことですたぶん。




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