爆走少女
市中見廻りという超めんどくさくつまらない仕事は更々する気がなくて、俺はあの白髪の天パをボーッと眺めていた。すると奴もまた日がな一日中とくにすることもなくあっちをプラプラこっちをプラプラしている。観察したら物凄く面白そうなのに逆に全くつまらない人間である。
「つまんねェー…」
「当たり前だ。一日中くだらねーことしやがって。なに君、俺のストーカー第二号?」
第二号って第一号は誰だ?
「旦那ァ気づいてたんですかィ。ところで今日はオフで?」
「ここんとこ毎日オフだよ。もう最近オンしてないからどこにスイッチあったか忘れちまったよ」
「俺は明日やっとオフですぜィ?まったく警察って奴ァ大変でさァ」
「オイオイ一日中一般市民観察しといてよく言うぜ」
旦那との会話も自然消滅しそうな頃、なんだか久しぶりの特徴的な頭が遠くに見えた。
「あのバカはいったい何をやってんですかィ?」
俺達の視線の先は逃げる男を追うのに爆走するチャイナ。生身で時速いったい何kmかわからない速さを出せる女である。一応男は車で逃げてんだがな。
「あ?神楽じゃん。さぁな、お魚くわえた人でも追っかけてんじゃねェの?」
「魚くわえて街に出る人ってどんな人でさァ。なんかあいつ怒ってますぜィ?」
「待つアルー!この泥棒ォォォ!」
「ほらみろ泥棒じゃん」
「魚は関係ねェみてーですが」
旦那はとくに興味を示さずまたどこかに行こうとしている。どこに行くのかと訊ねるとはぐらかされた。
「お前もストーカーするなら俺なんかより可愛い娘にすりゃいいじゃねーか。あァでも顔だけの奴もいるからな、酢昆布臭くて頭がゆるいクソガキもいるから世の中には」
そんなこたァ百も承知でィ。でも普通の女は見ようと思わない。いつもどこ見て突っ走ってんだかわからないバカの方が面白い。アンタだって本当は凄く興味深い人間なんだ。
いつの間にか俺の周りにはずいぶんと面白ェ奴らが集まっていたんだな…
5分後、俺は地面に転がっていたドラム缶を逃げる車に向かって投げつけていた。だってドラム缶があったそこは今日の俺の昼寝場所だったんでィ。
意味わからんし!
沖田ストーカーになる、の巻?
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