特権


いつも見ていた。変わった奴だって。

前に公園で見かけたときあいつに血みどろにされている奴がいた。そりゃあんなのまともに喰らったらそうもなるわ。馬鹿だな、近づかなけりゃいいのに。

あいつに触れたいって思うからそうするんだろうけど。俺にはわからない、あんなののどこがいいんだか。



「メッ定春!また発情期アルカ?」

「ワンッ」


うわ、噂をすれば影ってやつかィ。

目立つ風貌は相変わらずだし。食欲旺盛なのは結構なことだが、もう少し食うモン考えたらどうだ。いつもいつもろくなモン口にしてねーだろ。



俺はその辺の奴らとは違う。なんてったってこの距離はなかなか維持できねーだろ?

「…」

「何見てんだヨ」

「ワンッ!」

だってほら、俺には飛びかかってこない。

お前らにできるか、こいつと睨み合うことが。お前らにできるか、こいつと火花を散らすことが。お前らにできるか、こいつに対抗することが。




お前らにはできねーよ、こいつに触れることなんか。





「それはお前もできてねーダロ。この汚職警官が」

「ワゥワゥ!!」

酢昆布をクッチャクッチャ噛みながらのたまうこいつの飼い主、チャイナ。


「触りましたァ。こいつが巨大化暴走したときにしがみつきましたァ。そんときおめー俺のこと蹴落とそうとしてただろ」

「その前にお前が攻撃しようとしたじゃねーかヨ!!つーかそんなんなしアル。触れるっていったらなでなでヨ」

言いながら飼い主が撫でているとペットは牙を剥き出してその小さな手にかぶりついた。

血がドクドク、チャイナはきっとヒヤヒヤ。

「…」

「おい食われてんぞ」

「ただのじゃれ合いアル。助けろヨ」

「なんでじゃれ合いに助けが必要なんだよ」

俺の口が歪むのがわかった。そういう笑みはすぐに顔に出るからな。逆にあいつはさっきからずっとしかめっ面。あ、この"あいつ"はチャイナのことだから。

「死ねヨ」


「なでなで」

チャイナを助けず犬の方を撫でた。

ほらな、俺は他の奴とは違う。なでなでしてやったぞコノヤロー。

「離すネ定春。でないとご飯抜きにするアルヨ」

飼い主が叱るとようやく口を手から離した。帰るネ、と公園を去っていく飼い主。噂のあいつも楽しそうにそいつについていく。

最後にあいつは振り返ってこっちを睨んできた。ちっこい体でよくあんな眼力が飛ばせるもんだィ。

ほんと変な奴らだぜ、あの野獣コンビ…










開設記念に一発かましたれ!と書いたネタ(カス)。
沖→神と見せかけて沖→定(?)
深読みするもよし、読んだ私がアホでした!とキレるもよし。
もう、好きにすればいいじゃない。




あきゅろす。
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