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帰国子女×生徒会長
「ぜったい、ぜったいもどってくるから!だからそのときまでぼくのことわすれないで!」


「うん!おれ、ずっとまってるから!ずっとずっとまってるからくぅちゃんもおれのことわすれないで!」


「わすれない!だからぼくがもどったらそのときはーーーーー」

幼き時の美しき思い出は時に残酷に裏切られる。


「キャーーーッ!クリス様素敵です!」

「僕を抱いてくださいっ!」

「狡い!僕はどうですかっ!?」


男の子なのにまるで人形のように可愛いくぅちゃんは俺の天使だった。

ちょっと泣き虫で、でも強がり。
転んで泣きかけてるのに泣かないもんと強がる姿はとても可愛くて子どもながらに庇護欲をそそられたのを強く覚えている。


やんちゃだった俺と少し内気なくぅちゃん。
誰もが気が合わないだろうと予想するなか誰よりも気が合って、これからもずっと、ずっと一緒だって漠然的に思っていたのに―――


彼は小学生の時に両親の都合で米国へと旅立った。


連絡は月に一度の手紙だけ。


アメリカなんてすぐ行ける距離、でも行かなかったのはくぅちゃんが帰ってくるまで待つって約束したからだ。

律儀にそれを守ってた俺はきっと馬鹿以外の何にでもない。


「どーしたのかいちょー。超怖い顔してるよ?」


食堂の二階席、生徒会役員特権のそこで一人昼食をとっていた筈なのにいつの間にか現れた会計の柳川が向かいに座って俺の顔を覗き込んでいた事にぎょっとする。

それと同時にそこまで過去に引き摺られていた自分自身に嘲笑した。

「別に、なんでもない」

それだけを答えて目の前にあるすっかり冷めてしまった食事に手をつける。

「最近のかいちょーは変だよ」

柳川のその声は聞こえなかった事にした。


さっき階下で騒がれていたクリス様こと早乙女久里守は今年度から途中編入してきた。

アメリカからの帰国子女な彼は海外培養だからか、日本人なのに日本人離れした容姿をしていて、
180を超える体躯に服の上からでも分かる均等の取れた体つき、そして女なら誰もが惚れそうな鋭さの中にも甘さを含んだ面もちは性観念をどこかに置いてきたこの学園の男達をも虜にさせた。


入学から一カ月で人気投票で決められる生徒会、その頂点である生徒会長よりも今や人気があるらしい。
けれどそんな事俺にとっては取るに足らない事、それが俺の初恋の人でなければな


俺の天使、くぅちゃんはとんでもない成長を遂げて帰ってきた。


俺だって子供の時は可愛いと持て囃される容姿をしている方で、今は自分ではなんだが男らしくはなれたと思う。

現に親衛隊からは抱いてと騒がれるし、抱かせろなんて聞いた事もないけれど幼い頃の写真を見せれば面影があると言われる。


なのに、なのに、だ!

くぅちゃん、否、早乙女久里守には面影なんてこれっぽっちもない!

手紙で今年から編入すると書かれていて、どれだけ俺が心待ちにした事か!

それを入寮日に迎えに行った俺のあの衝撃といったら人生ーまだ17年しか過ごしてないがワースト3には入るだろう。


「Hello.何難しい顔してんだよ」

「ひっ!」


い、いつの間に…!

肩越しに伸びる長い腕、耳元で聞こえた低いバリトンにぞわぞわと全身の毛が逆立った。


目の前にいた柳川なんてスプーンに乗ったカレーが口の中に入る寸前で止まってる。

「っ、早乙女!ここは役員以外立ち入り禁止だ!」


ガタガタっと大きな音を立ててその腕から抜け出した俺は距離を取り声を荒げた。


バクバクと騒ぐ胸は驚いたせいだ、うん。それしかない。


自分に言い聞かせながらジリジリと距離を広げる。


「Why?いいじゃねぇか、あんなうるせぇ所で飯なんて食えやしねぇ。風紀のah...なんだbuzz?なんたらっつー奴も実質人気は役員以上だからって言ってたぜ?」

蜂屋め……!

どうして人名を蜂ーbuzzだと覚えたのか知らないけれどそんな姿を見て一瞬でも可愛いと思った自分が信じられない。

そうだ。こいつはくぅちゃんの偽物、くぅちゃんはきっと未だ異国の地だ。

そう自分に言い聞かせる。

だってこんなの詐欺だ!


「なぁ、いい加減現実見ろよ。俺がお前の初恋のくぅちゃん、早乙女久里守なんだ」

「ーーーーーっ!」


壁際に追い詰められ、掬われた顎

そして否が応でも目にはいった早乙女の顔、その表情に息を飲んだ。

切なげに歪められたその表情はまるでーーー

「くぅちゃん……」


あの別れの日のくぅちゃんと早乙女が重なって見えた。

「やっと認めたか」


嬉しそうにくしゃりと笑う顔、それもくぅちゃんと同じで俺は何だか泣きたくなった。


容姿が変わっても、言葉遣いが変わってもくぅちゃんはくぅちゃん、早乙女久里守は変わらないただ一人だ。


俺は一人置いてかれた気持ちになって、あの頃から変わらない気持ちが辛くてくぅちゃんの気持ちも考えずに逃げていた。

くぅちゃんはちゃんと約束を守ってくれたのに。


俺が守らないでどうすんだ。


「くぅちゃん、大好き」

「俺も愛してるぜ?ヨシ君」


あの時小さかった君は俺の腕じゃ包みきれない程に大きくなったけど、柔らかいキスは何も変わらなかったよ。



『だから、ぼくがもどったらそのときは、だいすきっていってぎゅってしてねぇ!ぼくもだいすきってよしくんにちゅーするからー!』



「…やば、とまんない」

「んっ!?んーーーー!!!!!」


訂正、

あの頃の天使はただの獣でした。


そして俺は気が済むまで咥内を犯され、我に返った時に羞恥で死にたくなったのは言うまでもない。






あきゅろす。
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