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少年小説
運命の出逢い
ドンっ


…いけない、ちょっと疲れからかボーッとしてしまった。
即座に謝ろうとする前に柄の悪い声が僕に降りかかる。

「いってぇなぁ!この野郎!」

…うわーっ…見るからにあったま悪そうな高校生だ…眉毛無いし、前歯も溶けてスカスカだし。
当たった相手としては最悪だろうなぁ…

でもぶつかったのはこちらの落ち度だし謝らなきゃね。

「失礼いたしました。お怪我はありませんでしたか?」

頭を下げて笑顔で話しかける。
なんか驚いてる…
ああ、怖がらずに笑顔で話しかけたからか。

驚いてる高校生は何か思い付いたのか一瞬ニヤリと笑い、ぶつかった左肩を押さえて痛む演技を始めた。

「いてててて!マジいてぇ!こりゃ折れてるかもなぁ…」

学芸会のお遊戯レベルの演技に閉口しつつも、要はタカろうって魂胆なのは容易にわかる。


う〜ん、どうしようかなぁ…
人通りは運悪く今無いから助けを呼ぶのは無理そうだな。
力的には逃げきれなさそうだし。
お金を払ったら払ったでこの手のタイプの人は面倒くさそうだしなぁ…


あぁ、金ばらまいた上で逃げるっていうのはいいかも。


「おい!だんまり決め込んでねぇで何とか言えよ!」

そういうと高校生は胸ぐらを掴んできた。
…辛抱足りないなぁ…

はぁ、仕方ない。金ばらまくか…

そう思ってズボンの右ポケットに手を入れたその時―

「お巡りさん!こっちこっち!高校生がカツアゲしてるんだよ!」

という少し高い感じの綺麗な声が聞こえた。

あ、胸ぐら掴んでた手を離してキョロキョロしてる。
自分だって自覚あるんだ。

焦っている高校生の陰からスッと動く何かが近づく。

それは僕とほぼ歳が変わらないだろうという髪は短くて凛々しい顔をした少年だった。


ドキンッ!


何…今の…


彼を見た瞬間に感じた経験の無い心音。

彼はガシッと僕の手を掴むと

「こっちだ!」

と言って走り始めた。

「あ、おいこら!待ちやがれ!」

高校生から逃げるように走りながら…僕は彼に捕まれた手に意識が集中しているのがわかった。

脈は激しくなり、顔は赤くなっているのか熱くてしょうがない…

そして…泣きたくなった。


あぁ、僕は君に会うために産まれてきたんだ…




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あきゅろす。
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