少年小説
純太との出会い
「やべ〜!やべ〜よ〜!」
頭をかきむしりながらついつい絶叫してしまった…
何がやばいかっていうと『部の存続』…である。
俺の住んでいるの地区は昔からサッカーが盛んだった。
なんでかって?
そんなもん知らん!
でもそのせいか野球をしていた俺は昔から肩身の狭い思いをしてきたのだ…
小学生が入るような野球グラブはとなり町にしかなく、はたまた練習試合をしようと思ったら県越えをしなくてはならない有り様。
親から何度、サッカーにしとけばいいのに…と恨み言を言われたことだろう…
それでも俺は野球が良かった。
それに、そんな肩身の狭い思いも小学生までだ!
中学なら部活がある!
クラブほどの金はかからない!…はず。
何より同じ野球部のメンバーと学校で野球トークができる!
これがどれだけ嬉しいかわかるまい…
…だというのに…
「あはは〜たまんないねぇ〜、新入部員入らないと廃部だなんてねぇ〜」
「笑い事じゃねぇ!」
俺は呑気な事を言う同じ野球部の薫(かおる)につい大声をあげてしまった!
「だって、事実だよ〜?」
「だからって連呼すんな!縁起でもねぇ!」
「そうはいってもさぁ〜…あの部活紹介じゃ人来ないんじゃないかな…?」
「うっ!」
「僕が新入生だったら正直嫌かなぁ〜…と思うけど、悠斗(はると)ならどうなの?」
薫の視線が凄く冷たい…
お、俺のせいだっていうのか…?!
…俺のせいか…
部活動紹介では、薫が体育館の後ろから全力で投球して、ステージ上にいる俺が構えるミットの中にジャストミートする予定だった。
そして格好よく「新入部員募集中!」というはずだった…
だが、ミットを構えた俺はあろうことかよそ見をしてしまったんだ…
可愛いって表現が似合う一年生がきらきらした瞳でこっちを凝視していた。
でも、なんていうか…憧れのスターに会ったっていうか…羨望っぽいかんじ…の眼差しでさ…
よくわかんねぇけど…気になっちまってさ。
とまぁ、よそ見したあげくにその子をガン見してしまったわけで…
薫の速球は容赦なくそんな俺のみぞおちにヒット…
部活動紹介は昼休み直後…
…もうわかるだろ?
「おぅえぇぇぇぇ〜!」
リバースした消化しかけの俺の昼食に一時騒然となったわけだ…
「あれは正直…ないよね〜…ねぇ、ゲロキャプテン?」
「…うっせぇ…」
「あ〜ぁ、長い野球部の歴史も俺達で終わりかぁ〜」
「い、いざとなったら腹芸してでも集めてやるさ!」
「キングオブ逆効果じゃないかなぁ〜…見たくないしそんな汚いの」
「なっ!俺の腹は綺麗だぞ!」
「…せいぜい頑張りなよ」
心底冷たい目線を向ける薫。…なんだよ、そんな目で見るなよ!
俺だって悪いとは思ってんだからさぁ…
「…あ、あの!」
突然、雰囲気の悪い部室を声変わりを終えてない感じの高い声が割って入る。
振り向いた俺と薫の先には初々しい感じの一人の一年生がいた…
俺がステージからガン見していたあの子だった。
「…もしかして…」
淡い期待がよぎる。
「は、はい!1年A組、福永純太。よろしければこちらの野球部に入部させて頂けませんでしょうか!」
にっこりと微笑む少年。
それが俺と純太の出会いだった。
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