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少年小説
ショック
 呆然として、もう全身から思いきり力が抜けた俺の体を、勅使河原先輩はそっと優しくマットに寝かせ直した。しばらく舌で俺の口の中をかき回してから、名残惜しげにちゅっと吸って、唇が離れていく。
 体が火照って、力が入らなかった。すげぇだるいっつーか、プールに入って熱いシャワー浴びたのを何倍も強くしたみたいな感じ。すごく疲れてんだけど、ふわふわして、体が溶けそうな感じに、体の中に気持ちよさの余韻が残ってて――
「山田次郎、山田次郎」
「へ、え……?」
 俺はぼんやりした頭を巡らせて勅使河原先輩の方を見――て仰天した。先輩の手の中に、ものすごいたっぷりと白くて、ねっとりした液体がある。
 あれは匂いからしても見た感じからしても俺のよく知ってる白い液で、つまりは精液なわけで、状況から考えてお、お、お、俺の精液なわけで、それを勅使河原先輩が手の中に溜めてて、なんでかっていうとそれは。
 頭をものすごい勢いでぐるぐるさせる俺の方を見て勅使河原先輩はにやりと笑い、ひょいっと首を伸ばして、その手の中の精液をずずっとすすった。
「――――!!!」
「すっげぇ濃いな。お前あんまオナニーしてねーだろ」
 にやにやと笑って言い、ぺろりと精液の溜められていた手のひらを舐めてみせる。
 ――数秒脳味噌が固まって、それから一気に沸騰した。
「っ!」
「っ、と、おいっ!」
 俺は勅使河原先輩を突き飛ばすように跳ね起き、ばっとズボンを拾って走り出す。パンツが残っていないが、そんなの気にしている余裕なかった。全身の力を振り絞って一瞬で体育倉庫の扉をずらし、わずかにできた隙間に身を潜り込ませて走る。
 下半身丸出しで、上半身もかなりずれてて、みっともないったらありゃしない格好だったけど、そんなのはどうでもよかった。本当にどうでもよかった。だって。
『――勅使河原先輩に遊ばれた』
 そんな言葉がわんわん頭の中に響いていた。
『勅使河原先輩に遊ばれた。いたずらされた。脱がされて、尻叩かれただけじゃなくて、ちんちん見られて、しごかれて、尻の穴に指入れられて、キスされて、そんで、イかされちゃった』
 堪えきれずに、ぼろっと涙が目からこぼれた。泣き声が情けなく喉から漏れた。頭の中がかんかん熱くて、目も熱くて、鼻も熱くて。
『俺、初めてだったのに。ちんちんああいう風に見られるのも、触られるのも、尻の穴に指入れられるのも、……キスされるのも。みんなみんな、初めてだったのに』
『先輩は慣れてて。すごい手馴れてて。絶対こういうことしまくってるんだろうなって感じで。すごく遊び半分って感じで。……俺がなに考えてるかとかどうでもよくて』
『先輩にとっては、あれって、いたずらで。遊びで。面白がりながらできちゃうことで。俺がすごく気持ちよかったこととか、ドキドキしたこととか先輩にとってはどうでもよくて。……俺のこととか、先輩はきっと、どうでもよくて』
『先輩にとって俺は、ただ遊び相手で、いじめる相手で、暇つぶしの相手ぐらいでしかなくて。俺が、俺なりに、一生懸命先輩の言いつけこなそうとしたのとか、先輩には本当、どうでも、よくて』
「ひっ、う、ひ、ぅあ、あ……」
 堪えても堪えても、喉の奥から熱いものがこぼれてくる。嫌なのに。こんなみっともないとこ見せるのとか、先輩の思う壺だろうから、絶対、絶対嫌なのに。
「ひぃああぁぅ、あぅ、うえぇぇえぇっ………!!」
『先輩は、俺が嫌いなんだ』
 その想いが一番悲しいのが、ものすごくものすごく悔しいと、俺は走り泣きしながら思った。


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