[携帯モード] [URL送信]

少年小説
・・・スパンキング?
 放課後。生徒会室に行かなきゃ、と立ち上がった俺は、後ろになにかが立った、と思うやわっしと尻がわしづかまれたのに悲鳴を上げた。
「ぎゃあっ!」
「なんだよー、悲鳴出すならもっと色っぽい悲鳴出せよー」
「……てめーは中二の男にどーいう期待してんだこのっ!」
 叫んで俺は尻をつかんできた相手にヘッドロックをかける。相手はぎゃーわー叫んでばたばたしたが、こいつのどこをどうすれば動きを封じられるかはよく知っている、そのくらいで抜け出せるか。
 こいつの名前は梶木剛。みんなからは梶キングとか呼ばれてる。一年の時から同じクラスの友達なんだけど、いっつもその場のノリでとんでもないことしでかす奴で、俺はけっこう何度も被害をこうむっている。
 二学期ぐらいからいたずらをしでかす回数は減ったんだけど、その代わりにこんな風にセクハラをしてくるようになった(男子校だから当たり前だけど、男にばっかり)。なのでそのたびにこんな感じでしつけてるのだ。
「ジロちゃんって運動部に入ってるわけでもねーのにいいケツしてるよなー、なんか体操とかやってんの?」
「や・か・ま・しいっ!」
 ……その甲斐はあんまりないっぽいけど。
 なんだよんっとにいいケツって、とぷりぷりしていると、ふと気づいた。運動部に入ってないのにいいケツって、まさか、勅使河原先輩の、アレで?
 いやいやまさかいくらなんだって、と思いつつもちょっと不安になって、スリーパーホールドを解いて梶キングに訊ねてみる。こいつはAV部(オーディオビジュアル部。でもこいつはてっきりアダルトビデオ部だと思って入ったというすさまじくバカな過去を持っている)なんだけど、なぜか学校の方々に顔が広く、妙な知識もいっぱい持っているのだ。
「なー、梶キング。あのさ……まさかとは、思うけどさ。雨上学園体育会伝統のお仕置きで、ケツがでかくなるとか……ねーよな?」
「へ? なんだよその体育会でんとーのお仕置きって」
 げほげほ息を整えてからきょとんと逆に訊ねられ、う、と言葉に詰まる。なんだよ普段ならどんな話振ってもきっちり返してくるくせに、と筋違いな不満を口の中で漏らしつつ聞いた話だと注釈をつけて(脱がされるとこはぼやかして)説明する。
 と、梶キングはにやぁ、といやらしーい笑みを浮かべて言ってきやがった。
「なーんだよジロちゃーん、ウブな顔してしっかりやることやってんじゃーんこのこのぉ」
「は? って、その顔やめろムカつくっ」
「だってさーぁ。それってどー考えたって、スパンキングプレイだろ?」
「……は?」
「だからさー、SMプレイの一種っつーかさー。どー転んだってエロにしかいかねーじゃん」
「……はぁぁ!?」
 呆然とする俺の脇腹を、梶キングはにやにや笑いつつつんつん肘でつつく。
「お客さんなかなかお盛んですなぁ。で? で? 誰だよ相手、言えよ言えよ、俺とジロちゃんの仲だろ?」
「だ、だから聞いた話だっつってんだろ! 俺じゃねーってば!」
「うっそつけよー、ジロちゃんのそのケツが動かぬ証拠だぜ? ほらほらー、とっととゲロっちまえってばよー」
 だから違うっての! と叫ぼうとしたところで、ばーん、と教室の扉が開けられた。ぎょっとしてそちらの方を見る――と、予想通りといえば予想通りなんだけど、ラグビー部主将で体育会会長、つまり校内でもかなりの有名人な勅使河原先輩が、すさまじく俺様な顔で叫びやがった。
「おい山田次郎! ついてこい、俺のカッコいいとこ見せてやっからよ!」
「…………」
 とりあえず、俺ににやにやした顔を向け、人差し指と中指の間に親指を挟んだ握り拳を向けてくる梶キングは、一発蹴っておくことにした。

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!