少年小説
黒い世界
「やめて!!やめてよ!!」
どれだけの懇願、どれだけの謝罪、どれだけの涙・・・
どれだけやっても、何をやっても何も変わらなかった。
ただ、真っ黒な沼の中に少しずつ少しずつ引きずりこまれるようなものだった。
助けて!!誰か・・・!!
あたりに救いの目線を向けても目をそらされるか、蔑んで嘲るような表情しか読み取れずさらに絶望する。
なら自分の力で逃げるしかなかった。
ドスッ!!ドガッ!!
「ぐぅ・・・」
鈍い音が自分の腹部に襲い掛かったことを知った。
胃の中のものが逆流してのどのところまで来ているのを感じる。
「逃げようとかすんなよ・・・なぁ?」
目からにじみ出てきた涙でもう全てが歪んでしか見えない・・・
なんで?
なんでこんなことするの?
僕が何をしたの?
僕は・・・
あざ笑う声が聞こえる中世界は真っ暗に覆われていく・・・
あぁ、こんな痛いだけの・・・辛い世界なら真っ黒で何もわからないほうが・・・きっと・・・
「!!」
見慣れた天井が見える。まだ夜中なのか、部屋の中暗かった。ただ、外に立っている街灯の光のせいか顔を動かしてみれば部屋の中は暗いながらもおぼろげに部屋の全様は見える。
机の上に置いている時計を見ると深夜0時を指していた。
「はぁ・・・」
夢・・・
あれは悪夢・・・忘れたい過去・・・
もう起こらないはず・・・なのに、今でも夢に出ては僕を苦しめる・・・
布団を巻き上げ、上体を起こす。
全身から汗が吹き出ていて、気持ち悪い。
冷房がはいっているはずなのに全く効果がない。
パジャマの袖で額の汗を拭おうとする。
でも、腕がうまく動かない。
ガタガタと震えている。
力を入れてぎゅっと自分を腕で自分を抱きしめる。
「・・・大丈夫、もうあんなことは起こらない・・・」
呪文のように唱えながら震えがとまるのを待つ。
そんなことしか出来ない自分が悲しかった。
だけど、こうでもしていないと涙があふれて大声で泣いてしまいそうだった。
タッタッタッタ・・・
外があまりに静かで、自分の神経が過敏になっているのか外を走っている人の足音が聞こえてきた。
じょじょに家の近くまで迫ってきている。
夢の中ではあんなに絶望したのに、誰も助けてなんかくれないとわかっているのに、今は誰か他の人の存在に触れたくって・・・閉めていたカーテンと窓を開けて外に目を凝らす。
そして僕は走っていた人と目が合ってしまう。
相手も僕を見て目を見開き走っていたのをとめてしまった。
「・・・先輩」
そこに立っていたのは悠斗先輩だった。
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