少年小説
人なればこそ
さて、深刻モードな悠斗は置いといて・・・とりあえずは純たんの黒い部分を調べないことにはどうしようもないんだろうなぁ〜・・・気乗りはしないけど。
まずは部室に戻って、部員名簿から出身校を割り出すかな。
「・・・あの・・・薫先輩」
「おや?剛ちん。どしたの?」
声のした方を見れば、剛ちんが両手でしっかりとなんかの雑誌を握り締めながら深刻そうな顔してこっちを見てる。
「・・・これ、見て欲しいんです」
どれどれ・・・ん〜?3年前のリトルリーグの関連の記事が載った雑誌だ。こういうの見ると世の中には小部数ながらもしっかりと需要のある雑誌って存在するんだなぁ〜って思っちゃう・・・どうでもいいことだけど。
「・・・これがどうか・・・・・・あ」
全国大会のベスト4のチームが載ってるけど、その一つのチームの写真の中に純たんがいる。チームのメンバー紹介もあって、純たんしっかりスタメンだね〜、4年生でスタメンって中々の実力者じゃない。
「・・・これ、純太・・・ですよね・・・?」
「そのようだね〜・・・」
俺の考えはあんまり外れてなかったみたい・・・やっぱりリトルでしかもかなりの実力持ってるみたいだねぇ。調べる手間省けてラッキー☆
・・・とその前に剛ちんとしっかり話ししなくちゃ。
「・・・純太は、なんで・・・」
「・・・」
剛ちんが俯いてちょっと怒りを含んだ悲しそうに顔をしている。そうだよね〜事情があるにせよ本人の口からじゃなくて昔の雑誌からわかっちゃうってなんか複雑だよね。
しかも、野球初心者・・・ってふりしながら、実際は剛ちんよりも技術的には本当は旨いかもしれないって・・・馬鹿にして!・・・って発想になってもおかしくはない。
「剛ちんは、純たんが本当は野球旨いくせに下手なふりしてたことが馬鹿にされてたみたいで腹立たしいの・・・かな?」
剛ちんは目を見開いて俺の方を見る。そして、すぐに視線を地面に戻した。
「・・・違う・・・って言ったら嘘になるかも知れないけど・・・」
そして、再度俺のほうを向いて声を荒げる。
「・・・でも!同じ・・・チームメイトなのに!!なんで・・・そんな嘘を・・・!!」
きっと頭の中は混乱しててうまく言葉が出ないんだろうな〜、詰まって俯いちゃった。
「・・・チームメイトだから・・・秘密があるのはおかしい?」
顔を傾けて覗き込むように聞いてみる。返事はないけどこっちは見てる。
「俺だってみんなに全てのことを言ってるわけじゃないし、剛ちんにしたってチームメイトなら全てをさらけ出すってわけじゃないでしょ?」
「・・・そりゃまぁ・・・」
言っていることはわかるけど納得は出来てないって顔してる。・・・気持ちはわからなくはないけど。
「剛ちんの気持ちはわかる・・・でもね?純たんが野球を好きなのは・・・見ててわかるでしょ?」
「・・・」
「その好きな野球のことでみんなに隠し事してるって・・・よほどのことがあると思わない?」
俯いて困った顔してる剛ちん。きっとどうしたらいいかわからないだろうなぁ〜・・・
「いい?俺たちはチームメイトとはいえ他人であることは変わりないんだ。相手の気持ちを100%理解してあげることは出来ない。じゃあ俺たちがチームメイトとして純たんにしてあげられることって何だと思う?」
困った顔のまま俺のほうを見てる。にっこりと笑って俺は続けた。
「・・・信じて、いつか自分から本当のことを言ってくれると信じて待つしかないんだ。」
「・・・はい」
「みんな色々な秘密を持ってる。人ならば当然のことだよ・・・だから知ってても黙っていたほうがいいこともあるんだ」
俺はそう言い終ると剛ちんの耳元に顔を寄せて小声でつぶやいた。
「練習が終わった後の部室で隠れて大地と二人でいけないことをしてること・・・とかね?」
「!!!?!?!?」
俺のほうを向き真っ赤な顔で目を見開き絶句している剛ちん。プププ!可愛い反応☆
「あ、ちなみに純たんも知ってるよ?」
「え、あ・・な・・・・」
「だって、全員帰ったか確かめずに部室で盛っちゃいけないよね〜☆」
俯いてさらに顔を真っ赤にしていく剛ちん。まぁ、状況的には大地が盛って巻き込まれた感じには見えたけどね〜
「・・・ちなみにね?純たんは次の日の朝誰より早く部室に行って、窓開けたり、ファ○リーズまいてくれたんだよ?みんなに二人のことがばれないように」
にっこりと笑ってそう言うと剛ちんはすっごくどもりながら
「わ・・・わか、わかりました!!じゅ、純太のことはだだ、だま、黙っています!!」
そう大声で返事するときびすを返して「失礼します!!」と早口で言ってその場を立ち去った。
・・・ちょっとからかいすぎたかな?ま、いいか☆少しは控えてもらわないと、ばれて大変な目に合うのは剛ちんだけだしね〜(大地は別に気にしなさそうだし・・・)
さて・・・と、俺もそろそろ行動始めようかな。
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