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少年小説
ほれた弱み
「お〜い、悠斗〜」

すっごい深刻顔の悠斗の前でひらひらと手を振る。・・・が全くの反応が無い。

しっかたないなぁ・・・

すっと悠斗の背後に回り込み、首筋に息が来るくらいの距離を見計らってわざとボソッと話しかける。

「は・る・と君」

「ひっ!!」

もっのすごく気持ち悪かったのかびくっと反応して振り向く悠斗。何すんだと言わんばかりの顔でこっちを睨んでる。ぷぷっ予想通りの反応で可愛いなぁ〜。

「薫・・・!何すんだよ・・・」

ほら、思った通り。でも何回話しかけても気付かない悠斗も十分悪いと思うけどなぁ〜

「だって、ず〜〜〜〜〜〜〜〜っと話しかけてるのに全く反応がないんだもん。こんくらいしないと気付かないでしょ?」

「え?・・・そうなのか・・・?」

おや、やっぱり無自覚か。

「・・・どうかしたの?なんか悩み事かい?」

ちょっと紳士に聞いてみるけど苦虫を噛み潰したような顔で黙る悠斗。まぁ、予想の範囲内だけどね。


悠斗の様子がおかしいのは1週間前の大雨の日から。部活はなかったんだけど、最近純たんにメロメロな悠斗のことだから連絡より早く部室に行っているだろう純たんのことが気になって部室に行ったに違いない。

・・・でそこで何かあったんだろう。
何かっていっても悠斗のことだから、ついついむらっときて手を出した・・・なんてことは無く、純たんに関する人には言えない秘密を知っちゃった・・・ってとこかな?
あと、純たんに対する自分の思いに気付いちゃったってとこかな?


そう、純たんには何かはわからないけど、秘密がある。しかもかなり黒めのやつ。
なんでわかるかって?そりゃ、俺自身が本心を人前で決して見せないタイプの人間だから。
元々純たんが俺タイプの人間じゃないだろうから・・・なおさらね。

野球に対して好きだという情熱は悠斗に近い純粋なものを感じる。
・・・でも話している端々に周囲の様子を伺いながら、自分を目立たないよう動いているのがわかる。
目立たないよう・・・違うな、巧く見えないようにわざと手を抜いている。

そういうことに疎い悠斗は気づいてないから話し合わせてるけど・・・俺が思うに大地なんかより格段に巧くて、リトルでやってた剛ちんとタメ張れるくらいの技量は持ってるように感じるんだよね〜。


・・・まぁ、推測でしかないけど。


とにかく、大雨の日から悠斗の純たんに対する接し方がやたら遠慮深くなった。とにかく腫れ物を扱う感じ・・・というか、気をつかってるつもりなんだろうけど、ぎこちなさすぎて見ていられない。
で、あとは深刻な顔して押し黙ってることが多くなった。
純たんもそれを感じ取っていて、悠斗と地味に距離置いてる感じなんだよね〜。

さらに、アホな大地はともかく、周りの空気を敏感に感じ取っちゃう剛ちんや、周りの部員もなんかもこの雰囲気に違和感を感じてきちゃってるみたい。


いまや野球部の空気が重くてしょうがないわけ。


はぁ、気乗りはしないけど・・・俺が動かないとしょうがないだろうなぁ・・・


ま・・・惚れた弱みってやつだよね。


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