少年小説
決まった未来
僕の名前は有栖川忠臣(ありすがわただおみ)。
県内で有名な私立小学校に通う6年生。
で、父は来生会っていう系列病院の院長。
母はその系列病院の会長の一人娘。
つまり、おじいちゃんが取り仕切る系列病院の一つを任され、行く行くはその後を継ぐのがお父さんってわけ。
そして僕はそこの一人息子。
ここまで言えばわかるよね?僕に未来の選択肢はないんだ。
産まれる前から強固に組まれた未来のレールがあったってことだよね。
…一応口では「お前のしたいことをしなさい」っていうけど、言葉の裏のプレッシャーに気付かないほど子どもだって馬鹿じゃない。
まぁ、その分裕福な生活をさせてもらってはいるけどね。
正直別に不満もない。
そういう運命なんだって割り切ってる。
嫌だ嫌だと駄々をこねてもしょうがないし…
ただ、時々思うんだ…
父や母に、祖父に必要なのは『有栖川の息子』であって僕じゃないんじゃないかって?
ううん、父達に限らない。周りの人にとったら僕は『有栖川の跡取り』としかみてないんじゃないかって…
そう考えるとクラスメイトの態度も納得いく。
友達になりたいわけじゃない。親が、自分自身が僕を通して『有栖川』という大きな権力の恩恵を得たいんだ。
フフ…我ながらひねくれた考えをしているな。
そう苦笑しているところでズボンのポケットに入れている携帯のバイブが動いていることに気付いた。
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