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暮色の黄昏
05
 

そもそも、何で俺が改めていじめの対象になっているのか。
俺の場合、ほら、右を見ても左を見てもイケメンしかいないから、嫉妬しちゃうっていうの?
まあ、その辺は生きていく上でついて回るものだと思っているからいいんだけどさあ。


「暮色、ドヤ顔うざい」
「やだ、和彦いい笑顔」


なんて冗談はさておき。

和彦がトイレに行ったので、追ってきた俺。
連れションしたかったわけじゃないよ。


「和彦はなんか知ってんのかなーって思って」


俺に忠告してきたくらいだから。


「まあ、色々ね」
「えー、勿体ぶらずに教えてよー」


ぴったりと和彦の背中に張り付いてみる。
うえっへっへ。
あ、俺は断じて変態ではありません。
あ、ちなみに和彦は用を足して手を洗っている最中なので色々と大丈夫です。

はあ、と聞こえた和彦のため息。
お!教えてくれる気になってくれたかな!

てっきり諦めた顔をしてるかと思いきや、振り向いた和彦はなんだか嬉しそう、というか優しい顔をしている。


「出所ははっきりわからないけど」
「うんうん」
「まず、学園の裏掲示板」
「うんうん」


今の時代のあるあるですよねー。
初等部、中等部、高等部、それぞれ色んなネタの掲示板がネットにある。
俺も見たことがあるけど、誰々が可愛い!とか誰々に犯されたいとか書いてあって見るのをやめました。
懐かしき思い出です。


「暮色の些細な悪口から、皆で絞めちゃおうぜみたいなことに発展してた」
「うんうん」


俺ってばまだまだ人気者である。


「あと、生徒会メンバーのファンクラブに入ってる生徒が開いてるサイトからのメルマガとか」
「えー、和彦そんなの登録してんの?」
「色んなところのね。面白いよ」


へえー。
俺も登録してみようかな。
葵秘書に登録でもさせようかな。
…なんてね!


「他にも、色んなところで暮色の話題があがってるよ。暮色が風紀委員長と校内新聞に載った時よりも、色んなところで騒がれてる」


入学してから今までにないモテ期ってことですね、わかります。


「それこそ今まで生徒会や学園内の色恋沙汰にも、暮色にも興味がなかったやつまで」


うーん。
それは疑っちゃうよね。


「誰かが担ぎ上げてる気がするだろ?」
「するねー」


全校生徒の注目を俺に向ける。
単なる誰かの暇潰しだろうか?
それとも何かしら目的を持った計画的な犯行の第一歩といったところか。


「でも和彦、俺にそんなこと教えちゃっていいの?しかも誰が聞き耳を立ててるかわからない男子トイレの中で」


いや、そもそも女子トイレなんて来客の為に職員棟とかにしかないけどね。


「教えろって言ってきたのは暮色」
「そんな命令口調してなーい」


失礼しちゃう。


「まあ、浩太郎や俺に害が及ぶのはお断りだけど」


ですよねー知ってた。


「巻き込まれてみるのも、悪くないかなあって」


浩太郎主義の和彦からのまさかの一言に、今度こそ俺ははっきりと驚いた。
まじまじと和彦を見る。
すると、和彦は目を逸らしながら言う。


「丸っきり蚊帳の外っていうのも寂しかったりするんだよ」


その頬は少しだけ赤い。


「へえええええー、和彦も意外と可愛いところがあるんだなー」
「浩太郎が言ってたんだよ」
「和彦可愛いー」


可愛い可愛いと言ってたらからかい過ぎたのか、いつもより冷たいスマイルをいただくことになってしまった。


「春風、暮色は個室で春風といちゃいちゃしたいってよ」
「そういうこと言っちゃだめえええ」


最初から俺の背中にくっ付いていた紺が目をキラキラさせちゃうからだめえええええ。
 

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あきゅろす。
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