参
第参夜
夢の世界、ふわふわした心地よさが手放せない―…
深い、深い眠りから、お姫様が目を醒ます。
「ヒ、ノエ……んっ…あ、あっ!」
艶やかな吐息が空気を震わせ。
少年よりも大きいはずの九郎の躰は細やかにうち震え、甘い快楽を享受していることを如実に伝えていた。
2人の身体が揺れるたびに、ベッドがギシギシと短い悲鳴を上げる。
「九郎、イイ?」
「ぁ、ん…ふ、ぃい…いっ……」
ヒノエは九郎の白い首筋へ、小さな牙を突き立て、ジュルリと血を啜る。
吸血族が、生き残るための行為。
ふわりと甘い香りが漂い、悦が心身を万遍無く支配する。
意識が遠退きそうな快感に見舞われる中、九郎の身体が柔らかく撓って熱棒から暖かい飛沫が飛び散り、相互の腹部を熱く濡らす。
余韻に浸るなか不意に、廊下側から扉を叩くノック音がした。
「ヒノエ様、お休み中失礼します。お客人様がお目覚めになりました。また、ご友人の敦盛さまもおいでです。」
室内に使用人の声が伝い、2人の周りには濃厚な色が残り、ヒノエの身体が離れベッドへと沈む。
「へぇ?敦盛がね…了解。後から行くよ。」
呼吸を整えている九郎をちらりと見た。
自然と口角が吊り上がるような微笑みを浮かべ、是と答えてからベッドから滑り降りる。床に散らばっている衣服を拾い上げた。
虚ろな眼差しの相手の瞳を覗きこみ、橙色の前髪をそっと指で掬い。
枕元へ服を置き、裸身のまま身を屈んで汗が滲む額へと優しく口付ける。
「九郎は、先に風呂に入ってきなよ。オレは先に行ってるからさ。」
「あぁ…」
何所か不満げに貌を顰めていることに、果たして本人が気付いているのか。
些細な表情の変化に、くすりと笑った。
ヒノエは九郎を安心させるよう、甘い微笑みを目もとや口元へ乗せ。
重い腰を持ち上げてベッドから滑り降りた相手の背中を、遠い眼差しで見送る。
「…さて、お待ちかねのお姫様をお迎えにあがろうか。」
浴室から漏れるシャワーの流れる水音を聞いてから服をまとい、目覚めの姫が待つリビングまで足早に向かった。
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