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青祓
死なない
メフィアマ






視界の端に緑がうつる。それが鬱陶しいと感じるようになったのは、最近になってからだ


別に、菓子のくずを落とす、私物を破壊される、などのことはどうでもいい。ただ、
なんだか鬱陶しい



こいつは、末の弟に負けたのがよほどこたえたようで あれからずっと動かない


ときどき思い出したように、ハッと目を見開いて兄上、父上、などと叫んでは 豊かではない表情を精一杯崩して、ベヒモス、とあの汚い悪魔の名前を呟き 眠る







どうでもいいことなのでほとんど忘れてしまったが、串刺しのように刺していたあの傷はまだ癒えていない。
全く くだらない

それならもう、帰れと言ったがまるで耳がないように私を見て、首を傾げた


「何か、仰いましたか」
波のない声がこれまた不快だった




見るだけでは、寝ているのか死んでいるのかわからないほど、横になり動かない弟がほんとうに















「アマイモン この憑依体はお前に合っていないのか」
「何か仰いましたか」
「お前が好んでいた菓子は、もういらないのか」
「兄上」
「なあ 私を」
「兄上は」


「私を赦してくれ」

人間のように、無様に乞う
ギリっと力をこめれば、アマイモンは少しだけ苦しそうに喘いだ




「やっぱり、この憑依体は合ってなかったな」
「私の大昔のミスだ」




久し振りに、ちゃんと見たアマイモンの目は澄んでいた

と言っても 多分人間にしては淀んでいるのだろうが







私とよく似た、濃い隈のある目が瞬きをした

それから、血色の悪い唇が動いた

「それを、望んでいたんです」


はじめて美しいと感じた。弟の首を絞める私を醜いと感じた








それほど、弧を描いた薄い唇はきれいだった いや、唇だけではなく、不健康で色の薄い顔がとても


そういうところが鬱陶しいとも感じた


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