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先憂後楽ブルース
やさしいひと


「レジスタンスって、反抗運動!? 国家に!?」

「そうデース」

あまりの驚きに椅子から立ち上がった俺の顔は真っ青になっていく。

「じ、じゃあゼゼ達って、犯罪者!?」

国家に反抗ってことは、そうなるよな。
うわー…全っ然見えない! ジーンなんか、あんな善人面してるのに。

なんだか怖くなってきた俺だが、ゼゼの表情が強張っていくのを見て、さらに顔が青くなった。

「犯罪者なんて…そんな言い方、しないでくだサイ!」

本気で怒っているゼゼに、俺は言葉を失う。

「ジーン達は、犯罪者なんかじゃありまセン!」

「ごっ、ごめんっ」



やっぱり俺は無神経だ。



そうだ、レジスタンスなんてやってるくらいなんだから、つらい目にあっていないわけがない。
きっと今まで、重税にあえいだり圧政に苦しんだりしてきたんだ。

そんな人達を犯罪者だなんて…。


「ごめん…。本当にごめんな…」

勇気をだして見たゼゼの顔は、いつもの優しい表情に戻っていた。

「いいんデス…、ゼゼも言いすぎマシた。 リーヤは事情を知らないんデスから、そう思うのも当然デス」

ゼゼは俺の手を引き、再び椅子に座らせる。

でも俺はゴメンナサイと謝るゼゼを見ていたたまらなくなり、彼女のその綺麗な細い指をゆっくりほどいた。

「俺っ、ちょっと外出てくる。頭冷やしてくるよ」

だがゼゼは俺の腕をガッと掴み離さない。

「1人で出ちゃダメデス!」

「…どうして?」

「えー…外は暑いデスし、リーヤ1人じゃ出口までたどりつけまセン。…絶対迷いマス」

俺は思わず目を細めた。…何だその理由。

「いや俺、玄関の場所知ってるんだけど」

リビングでたとこだろ?

「ソコじゃなくて、地上にでるタメの、出口デス」

「へ?」

ゼゼは慎重に俺から手を離した。



「ココ、地下デスから」





えぇえ!?




「嘘だろ? だって太陽の光、差し込んでんじゃん!」

俺はこの部屋唯一の窓を指差した。

「アレは『人工窓』デスよー。人工の太陽光デス」

「オレンジ色なのに!?」

窓から差し込む光は夕方になりだんだんとオレンジ色になっていったのだ。
偽物なんて、疑いもしなかった。

「オプションデスよ」

逃げようとしていた俺は外に出るという手段をなくし、この気まずい空気ただよう部屋にいることになった。

「…ゼゼさっき言いすぎマシた。ごめんなさい。…怒ってマスか?」

「怒ってるわけないだろ」


俺が悪いんだからさ。





俺の言葉にゼゼは天使のようにふんわり笑い、ライトグリーンの瞳が細くなった。





「リーヤは、優しいんデスね」





優しいのは、そっちだろ。



俺がゼゼにそう伝えようとした時、いきなりリビングのドアが開く音がした。




「エクトル!」

ゼゼの言葉に振り向くと、そこにはカラの皿を持ちながら入ってくるエクトルがいた。

どうやらシチューは完食したようだ。


「シチュー、どうでした?」

ゼゼが料理の感想を求める。
エクトルは皿を流し台に運んだ。

「うん、おいしかったよ。なんか人参がやたらデカかったけど……ってリーヤ?」

エクトルに呼ばれ、あわてて顔を上げた。

「なに泣いてるの?」

「は? なっ、泣いてないって!」

まさかと思いまぶたをさわると、ほんの少し濡れている。
自分でも気づかないうちに俺は感傷に浸り泣いてたようだ。


「大丈夫? なにかあったら、いつでも俺にいいなよ。出来る限りのことするからさ」



「……うん」





彼らのやさしい言葉に、俺の涙腺がさらにゆるんでしまった。


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