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先憂後楽ブルース
プライベートは大切に


「洗濯機はこっちデース」

ゼゼがリビングの扉を開けて俺を手招きした。食器洗い機の中から取り出したビショビショの洗濯物をカゴに入れ、よっこらせと担ぎゼゼについていく。

「大丈夫デスか?」

ヨタヨタと歩く俺に気を使ってゼゼが手伝ってくれた。
我ながら情けない。

リビングを出るとコンクリートで出来た長い廊下があり、一瞬ここはマンションでジーンの家はこのリビングだけなのかと思ってしまう。でもそれは間違いで、この固い灰色の廊下もマイハウスの一部だ。

「ここはクロエの部屋デス、勝手にはいったら怒られるので注意デスよ」

リビングを出ると一番に目に入るクロエの部屋の扉はやはり真っ黒で、白いペンキで大きく「KEEP OUT!!」と書かれていた。異世界にでも続いていそうな怪しい雰囲気の扉。この部屋のことは密かに「伏魔殿」と呼ぼう。

「コレはーゼゼが書きマシター」

俺がクロエの部屋に気を取られていると、ゼゼは隣の部屋にかかっているプレートを触りながらそう嬉しそうに教えてくれた。そこには「ジーンのおへや」とファンシーな文字で書かれている。ドアの色はなんともいえないどピンクで、まるでどこでも繋がる某有名ドアみたいだった。

「………可愛いね。ここがジーンの部屋?」

「そデス。それでコッチが…」

ゼゼは俺達がでてきたリビングの横のドアを指差した。

「エクトルの部屋デース」

あぁあの末っ子の。

彼の部屋には何かが書かれた白い紙が貼ってあり、そこに雑な文字で「入るな」とだけ書かれていた。

「エクトルも勝手に入ったら怒りマス。ダカラ掃除は自分でするんデスね」

そう言いながらゼゼは一番奥のドアを開けた。未来の世界のドアのすべてが、自動で開くなんてことはないようだ。

「コレが洗濯機デス」

「でかっ」

洗濯機は、ものすごくデカかった。

何もそこまでと思わずにはいられない大きさの洗濯機がドンと置かれている。地味なトイレの横には曇りガラスの扉があった。風呂かな?

「チャッチャとしマスよ! 洗濯が終わったら、スッミズミまで掃除するんデスから!」



…もしかして、毎日これするの?


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あきゅろす。
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