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先憂後楽ブルース
こんにちはプリンセス



結局、要求を受け入れるしかない日本はそのあからさまな政略結婚を承諾し、DBのお姫さまを迎え入れることを決めた。一応お見合いという形をとってはいるが実際は結納と大差なく、すべてが順調に進んでしまえば即結婚なんてこともありえるのだと知って俺は身震いした。何もできないままあれよあれよといううちにその日はやってきて、騒ぎはタワー内にとどまらす世間もその噂でもちきりだった。



今日はテレビをつければどの局もこぞって同じニュースが流れている。ダヴィットとアウトサイダーが破局しDBの王女との結納が進められていると事実のみを報道しているところもあれば、アウトサイダー様涙! DBによって引き裂かれた2人! などと恐れを知らない事実無根をならべたてている局もある。しかしニュースというのは便利なもので、俺の知らない情報を色々くれた。今回ダヴィットがお見合いをする相手の名前はレイチェル・D・ブルー。名前ぐらいは俺も聞かされていたが、レイチェル王女は正妻の子ではなく側室の長女とのプロフィールがワイドショーで公表され、DBは一夫多妻だったという事実に俺はかなり驚かされた。残念なことに顔写真はどこの局も放映してはいなかった。詳細は謎なところもあるが、なんでも日本語がペラペラの才女らしく日本にきても差し支えはないだろうとのことだった。





「で、なぜ俺がここに…」

客人を迎えるため大広間に用意された大きなテーブルに、俺はダヴィット達と座らされていた。ここでDBからやってきた王女様と初めて対面するらしい。そんなところに俺なんかがちゃっかり座っていても大丈夫なのかと1人そわそわしていたが、誰も何も言わないのでどうやら問題はないらしい。それはいいとして、このまるで最後の晩餐かのような雰囲気を醸し出す場所で、はたして俺はいったいどんな顔をして座っていればいいのだろう。


この場いるのはダヴィット本人はもちろんのこと、ダヴィットの親である国王陛下と王妃様、その補佐官であるダーリンさんとハリエット。そしてその他よく知らないお偉方が数人そろっていた。ジローさんはいつも通りダヴィットの横に控えている。その中で、俺はダヴィットとハリエットにはさまれた特等席に座っていた。

周りの様子を観察してみると、無表情の陛下やダヴィットとは対照的に、ダーリンさんやハリエットは見ればわかるほどに苛立っていた。この場のムードは明らかに険悪で、どうにもいたたまれない。

緊張状態が続く中、ついに扉が開かれ、厳重な警備のもとレイチェル様達DB御一行が入室した。どんな人なのだろうと興味津々だった俺は、王女様見たさに背筋と首を目一杯伸ばした。


「……っ!」

仰々しく入ってきた彼女の姿を一目見た瞬間、俺は言葉を失った。俺だけではない。男女とわずこの部屋にいるすべての人間が息をするのも忘れ彼女に釘付けになっていた。

レイチェル・D・ブルーは、過剰防衛だろうといいたくなるような人数の護衛と秘書らしき赤毛の女性を引き連れ、軽い足取りで俺達の前に颯爽と現れた。俺達がレイチェル様に見入っていた最大の理由は、彼女のその型破りな美しさにあった。
美は主観的なものというが、こんなに綺麗な人は他にはいないのではないかと思わされるほどに、彼女の容姿は異質だった。歩くたびに揺れる美しいプラチナブロンド、すっと通った鼻筋とセクシーな赤い唇。身にまとう赤いドレスも輝く装飾品も彼女の美しさに負けている。もし許されるならば、俺はもう永遠に彼女を見つめていたかった。

免疫がついている、もしくはただ単に無表情が徹底しているDBの警備隊以外の人間は、彼女がにっこりと微笑み会釈した瞬間我に返り、アホみたい開けっ放しだった口をようやく閉じた。
すぐさま、先頭に立つ他の護衛とは一線を画した妙齢のハンサムな男が一歩前に進み、深々とお辞儀をした。

「バーナード陛下、お目にかかれてこの上なく光栄です。奥方様もご機嫌うるわしゅう。私、ディー・ブルーランドの特使として全権を担っております、アリソン・ワイクと申します」

護衛と紛らわしい服を着た特使の男は、絶賛に値するほど日本語がペラペラだった。日本を支配している国の使者だからもっと威圧感があるのかと思っていたが、意外とへりくだっている。いや一国の王相手なのだから、いくら大国の特使といえども敬うのが当然か。どうにも後ろの規格外美女が気になってまともな思考能力が働かない。

「ワイク殿、長旅ご苦労であった。ろくな出迎えもできずにすまない。なにしろ急な話だったものでな」

「気遣い傷み入ります。連絡が行き届かず、誠に申し訳ございません」

バーナード陛下の些細な嫌味をものともせず、男はにこりと微笑む。男の口元からは八重歯が覗き、まるで吸血鬼のようだったと思った。肌が白いから尚更そう見える。しかしすぐ後ろにはそれ以上に透き通る肌をした美しい人が佇んでおり、俺は特使であるアリソン・ワイクに目線を固定することに必死だった。

「我々はそなたたちを歓迎する。不備があればなんなりと申すが良い。ワイク殿、そこもと達を紹介してくれぬか?」

「この者達はわが国の衛兵にございます。私と見分けのつかぬ格好で申し訳ごまいませぬ。そしてこちらが」

ワイクが手で示したのはもちろん圧倒的な存在感を持つ美少女、レイチェル・D・ブルー。そらきたぞ、と俺は思う存分レイチェル様を見つめた。

「我が国の第一王女、フランカ・D・ブルーです」




……あれ?


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