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先憂後楽ブルース
Winding


「3対2、賛成多数でリーヤ同居決定〜!」

ジーンはにまにましながら険しい表情の弟を見た。クロエはキレながら賛成票を入れてくれた少年をにらむ。

「エクトル! てめぇどういうつもりだ!」

エクトルと呼ばれた少年はクロエを無視し、肩をすくめて部屋から出ていってしまった。俺は日本人なのにエクトル? と疑問に思ったりもしたが今はとりあえずどうでもいい。
ありがとうエクトル君! 君の行為が俺を救ったんだ。さっきは目が死んでるとか言ってごめんな。

「クロエ、約束は約束だから」

悔しそうに歯ぎしりする弟に向かってジーンが子供をなだめる親のようにそう言った。

「ちっ…わかったよ」

「よろしい」

大人しくなったクロエの横に座っている赤い髪の女の子は、まだ不満そうだ。貧乏ゆすりしてるし。

「さて、話が決まったところで自己紹介しよっか?」

ジーンは陽気に自分の胸に手を当てた。

「さっきも言ったけど僕はジーン。ここの家主で、そこでふてくされてる奴の兄」

ジーンはクロエを顎でさした。

「あの…何で肌の色が?」

ジーンは白人で肌は真っ白。日焼けでもしようもんなら真っ赤に腫れそうだ。それに引き換えクロエの肌の色は薄茶色。最初から焼けている。

「僕達母親が違うんだよ。だから肌の色も自然とね」

成る程。でもここまで差がでるもんなのかな? ……まぁ俺に外人同士のハーフのことなんてわかんねぇし、400年後の未来なんだから何があったって不思議じゃない。

「こっちの綺麗な女性がゼゼ。20歳でここの一番の年長さん」

「はじめマシテー。ゼゼ・ラベル、デス。ゼゼって呼んでくだサーイ」

片言で自己紹介してくれたゼゼはとても美人だった。肌はクロエと同じ褐色だったが髪の毛はキレイなプラチナブロンドで動くたびサラサラ揺れる。彼女の瞳は薄いグリーンでキラキラ光っていた。

「よろしく…」

そしてなんと言ってもナイスバディだ。見てはいけないと思いつつ、悲しいかな、俺も男。ついつい目がいってしまう。

「であっちで機嫌悪くしてるのが、イルカ・カマリー。通称カマ、高校1年生」

「どーも」

カマと呼ばれた女の子は手をぶらぶらさせて適当に俺に挨拶をした。ってかそのあだ名どうよ。
さっきの一連のやりとりで彼女がいかに凶暴であるかがわかっている。
俺より年下だけあって色気というものはないが、近くで見ると結構可愛い。あぁもったいない。

「で、その隣の真っ黒い奴が僕の弟でチームのリーダー、クロエ・ダリル・ダラー。凶暴でどうしようもない問題児。高1にして少年院に入った回数、5回」

「ええぇええ!!」

「びっくりだろう? 僕もいまだに信じられない。5回もよく行けるよね…」

「いやそうじゃなくて!!」

そんなことじゃなくて!

「そいつ高1!? 嘘だろ!? 俺より年下じゃねえか!!」

なんてことだ! こんな凶暴そうな奴が年下!? 後輩!? うわー信じらんねぇ。世も末だな。

「リーヤいくつ?」

「高2だよ! 今年で17」

「じゃあ僕の1つ下だね」

「マジで?」

こんな大人なカッコいい人がまだ高校生なのか…。

いちいち大袈裟に驚く俺にイラついたのか、クロエがいきなり机をバンッと叩いた。

「年とか関係ねぇっつうの! ここのリーダーは俺なんだから俺を敬え。俺がしろと言ったことは何でもしろ! 生意気な口きいたらタダじゃおかねえからな!」



……こっえー‐…‥





だがそんな脅しも兄には効かなかった。

「リーヤ、クロエにへりくだる必要なんかないんだからね。気に入らなかったら好きなだけ殴っていいから」

そんなこと出来ません……。

まだギャーギャーと叫ぶクロエを無視してジーンは開けっ放しのドアを指差した。

「最後のチームメンバーが、さっき出ていったエクトル・ターナー。中2で、僕達の弟」

「えっ!? 弟!?」

またまたびっくりさせられてしまった。

「ぜっ…全然似てない……」

だってどっからどう見てもアイツ日本人だったぞ!?

「似てなくて当然。エクトルとクロエはお母さんが一緒なんだ。僕とエクトルは、血のつながりがないんだよ」

ジーンが笑顔で説明してくれるが、いかんせん、ややこしい。

「えー…つまり、ジーンとクロエはお父さんが一緒、クロエとエクトルはお母さんが一緒。そんでジーンとエクトルは血がつながって……あれ?」

「あってるよ、リーヤ」

いやーエクトルのお父さんは日本人の血を濃く受け継いでいてねー、とジーンが笑顔で説明してくれている時、真っ黒クロエが立ち上がり、俺を指差した。


「おい、リーヤ・垣ノ内!!」

「ぇ? あ、ハイ」

俺が怒られる時の癖で背筋をピンとのばすとクロエは俺を鋭く睨む。

「いいか、ここでは働かざる者食うべからず、だ!! 食いたきゃ働け! 俺は兄貴みたいに甘くないからな!」

そう言い放つ彼の瞳は、冷たく金色に光っていた。



…これから一体、俺はどうなるんだろう……。


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