短編
浮気男の専属ハーレム
18禁/女性との絡みあり
中東の砂漠の国、その中心部にある宮殿に住まうハーレムの一人、サミアはその美しい顔を歪ませ憤っていた。原因は自分の夫である第二王子ラダムスが、日本の男に入れ込みハーレムの女達に見向きもしなくなってしまったことにある。この国が一夫多妻制であるとはいえ、他国の男に王子の寵愛を奪われるなどあってはならない事だった。
「セイタ!」
目当ての男を見つけたサミアは怒りに唇を震わせながら男の名を呼んだ。頭用のスカーフで顔を隠した男は自らの名を呼ばれて立ち止まり、ゆっくりと振り返る。
最愛の王子の関心を一瞬で奪っていったその東洋人を、サミアはよく知らない。遠目で見た彼の姿と、セイタという名前。どうやって王子をたぶらかしたかは知らないが、新参者に一言言ってやらねばとても我慢できそうになかった。
「貴方、いったいラダムス様に何をしたの!? 私達に挨拶もなしで、あの方に少し気に入られているからといっていい気にならないでちょうだい!」
この男が来てから、王子ラダムスはハーレムの女達に見向きもしない。以前はどの女も平等に愛し、すでに彼の子を産んだ女は二人もいる。にもかかわらず今はその二人の女さえも王子はどうでもよくなってしまった様だった。
「貴方は男のクセにあの方に取り入ったりして、恥ずかしいとは思わないのかしら。貴方のような浅ましい男を、私は絶対に認めないわ!」
いくら怒鳴っても黙ったままの男にサミアの怒りはさらに増した。頬の一つでもひっぱたいてやろうかと身を乗り出す。
「ちょっと、ちゃんと私の話を聞いて……きゃっ」
あまりに興奮していたせいですぐ足元の段差に気づかずそのまま躓いてしまう。その身体を抱き止めたのは、お供の人間ではなく敵であるはずのセイタだった。
「お怪我はございませんか?」
「なっ……」
完璧な発音の美しいアラビア語に思わず目を見開く。サミアを抱き止めた逞しい腕の主の顔を間近に見て、立場も忘れて見惚れてしまう。
素性のしれない日本人などと馬鹿にしていたが、目の前の日本人の男はラダムスに負けない均整のとれた顔立ちをしていた。身長もラダムスとそう変わらず体格にも恵まれている。自らを大切に抱く優しい腕とその甘いマスクに、恋敵と知りながらときめいてしまったとしても仕方がない。
「よかった。貴女の様な美しい女性の身体に、何かあったら一大事だ」
「な、なにをするの無礼者! 離れなさい!」
ようやく我に返ったサミアが抵抗して身をよじる。警戒して身を震わせる彼女を安心させるように、セイタはスカーフをとり優しい笑顔を見せた。
「申し訳ありません、サミア様。怖がらせてしまって」
「私の名前を知っていたの?」
「もちろん。サミア様とは親しくなりたいと一目見たときから思っておりました」
「私と? いったいどうして」
相手の思惑がわからずきょとんとするサミアとの距離を一瞬で詰める。あまりに自然すぎて逃げる事を考える間もなかった。
「貴女があまりにも美しくて…、あの男の物だというのが悔しかった」
「あの男って、ラダムス様のこと?」
「もちろん。彼以外にサミア様を所有できる者がいますか?」
男の甘い囁きに顔に熱が集中する。そっと捕まれた腕をどうしても振りほどくことができない。
「セイタ、貴方こそラダムス様の側女ではないの」
「形式上は。しかし男である私が、サミア様のような美しい女性よりラダムス様に魅力を感じるとでも? ……ありえない」
男の言葉を真に受けてはいけない。わかっているのに、ラダムスに放置され女としての尊厳を踏みにじられてきたサミアにとって、その言葉はまるで甘い蜜だった。
「サミア様はその美しいお姿で私を惑わす。罪な方だ。貴女の色香にやられて、私の目はもう貴女しか見えない……」
「……」
「人払いを頼めますか? サミア様とはもっと親交を深めたい。これから、二人きりで」
耳元で囁かれ首筋を撫でる手つきの慣れたこと。嫉妬の対象であるはずのラダムス王子の側女を、もはやサミアは一人の男としてしか見られなくなっていた。
「セイタ」
湯浴みの後、一人後宮の自分の部屋にいた男の名を優しく呼んだのは、ここの主である王子ラダムスだった。ある種の芸術作品ともいわれる均整のとれた凛々しい顔立ち、そのエキゾチックな色気には老若男女問わず誰もが見とれてしまう。
「あれ? ラダ、もしかして俺のこと待ってた?」
その高貴な男に気安く話しかけたセイタはヘラヘラ笑いながらベッドで足を伸ばしていた。 サミアとの情事を匂わすものはすべて片付けさせた、清潔なシーツの上にだ。
「今度の相手はサミアか。少々気の荒いじゃじゃ馬だったと記憶しているが、お前にかかれば生娘同然だな」
「だって勿体無いだろ、あんな可愛い子放っておくなんてさ」
サミアの吸い付くような肌に触れた感触を思い出しながら、しまりのない表情を晒す。うっとりとその余韻にひたり、セイタは夢ごごちの気分だった。
セイタこと、御堂清太は超がつくほどの女好きである。彼にとって女は生き甲斐であり人生のすべてだった。特にアラブ系の美女が好みで、この国の現地ツアーガイドとして働きだしてからは、要領のいい性格を最大限利用して色々な女性と上手に遊び、充実した日々を送っていた。
その姿がこの国の王子ラダムスの目にとまり、一目惚れされるその日までは。
「セイタ、お前を抱くぞ。早く脱げ」
「えええ〜〜、俺もう何も出ないんだけど……」
「私は違う。私を満足させるのが、ここでのお前の役目だ」
「はいはいはい」
「返事は一度でいい」
たった今纏ったばかりの服を性急に脱がしてその身体を押し倒す。抵抗しても無駄だということを嫌というほど理解しているセイタはなすがままにされていた。
突然ここに連行され、自分の女になれと言われた時はもちろん抵抗して逃げようとした。しかしラダムスはそれを許さずセイタを閉じ込め、その身体を無理矢理犯した。そして逃げ道を絶つためにセイタの死を偽造し、この世の中から存在を完全に消したのだ。
精神的にも追い詰められ身も心もボロボロになったセイタの姿を見て、さすがの暴君ラダムスもこのままではいけないと思った。ただ欲望を満たすだけの綺麗な人形が欲しかったのではない。初めてその姿を目にとめた時の、幸せそうに顔を綻ばせるセイタの笑顔に惚れたのだ。
どれだけ様々な貢ぎ物をして贅沢させようとしても、戻らなかった惚れた男の笑顔。それを取り戻させたのは、最早ラダムスには不要となった後宮の美女達だった。
結果、ラダムスはセイタの浮気を許した。
無理強いはしないこと。
必ず避妊すること。
そして絶対に、本気にはならないこと。
この3つの条件と引き換えに。
「あの子達全員、俺にぞっこんになるのは時間の問題だろ。ラダより、俺のがいい男だってすぐにわかる」
「たいした自信だな」
「だってまだ誰もラダに告げ口してない。俺との関係を続けたいって証拠だ」
得意気に鼻をならす男の妾に笑みがこぼれる。こんな生意気な言葉ですら愛しく思えた。
「減らず口はそこまでだ。今は私に集中しろ」
「だから今はそんな気に……ああっ……ラダ…っ、まだ早…んっ」
丁寧にほぐされたそこに、ラダムスの立派な雄が侵入してくる。もう何度となく経験したその感覚には溺れるのも早い。
愛しいセイタが喘ぐ様を見て、ラダムスは興奮しすぐに律動を開始する。熱い固まりに突き立てられ揺さぶられた身体は、与えられる快感に悦ぶことしか出来なかった。
「セイタ、愛している。私にここまでさせるのはお前だけだ」
「あっ、あっ、んんっ」
セイタが女を抱くことに嫉妬を感じないわけではない。生まれて初めて自分だけの物にしたいと強く願った相手だ。男であろうと女であろうとその身体に自分ではない人間が触れるのには我慢ならなかった。が、
「セイタ、お前はどうだ。私が好きか?」
「…すき、すきっ……」
こうやって自分の望む言葉を引き出せるなら、多少の浮気など些末な問題だ。どれだけ愛を囁いても罵倒され続けたあの頃を思えば。
「ラダ、すき…もっとして……」
自分の身体を素直に求めるセイタのなんと可愛いことか。自分と身も心も一つになったセイタに口づけるこの時が、ラダムスの一番幸せな瞬間だった。
おしまい
2015/8/29
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