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短編
常套句
チャラ男×流されノンケ/超短編









「あっれー、超ひさしぶりじゃ〜ん!」


「え」


友人と集団で来た近所の夏祭り、みんなとはぐれてしまった俺が人混みの中をウロウロしてた時、突然知らない男に後ろから声をかけられた。

「うっわ、懐かしいー…。何年ぶりだっけ? 元気にしてた?」

「いや…」

俺に親しげに話しかけてきたのは見るからに軽薄そうなチャラ男。必死に思い出そうとするも、いったいこいつが誰なのか全く思い当たらない。

「え、何。もしかして俺のこと覚えてない?」

「あー…」

「マジで!? 超ショックなんすけど! 俺じゃん、タカポンじゃん!」

「た、たかぽん……?」

駄目だ、まったくわからない。あだ名の安易さからいって小学校の同級生あたりの知り合いだろうか。俺にこんな自分とステージが違うような友人がいたとはしらなかった。気軽に声をかけてくるぐらいなのだから仲は良かったのだろう。にしても金髪長髪にでかいサングラスって。高校デビューすぎて絶対原型なくしてるだろ。

「忘れられてるとかマジありえねぇー。昔はタカポンタカポンうるさかったくせに。え、お前は今は周りから何て呼ばれちゃってる系?」

「呼ばれちゃってる系って……、普通に良紀だけど」

「ヨシキ? へー、じゃあ俺も今日からヨシキにしよっと。ヨシキいま暇? 祭りに一人でくるとかマジうけるー」

「別に1人で来たわけじゃ…友達とはぐれて」

「そうなんだー。じゃ、丁度いーじゃん。お友達にはメールしといてさ、久しぶりの再会なんだから今日は俺と楽しもうぜ」

「えっ、でも俺、まだあんたのこと思い出せてないんだけど」

「そんなん話してたらすぐ思い出すって。あ、ヨシキ今から俺んち来る? 俺すぐ近くのアパートで一人暮らししてんだよねー」

「え、あの…」

「いやー、ほんとに懐かしいなぁ。あ、ヨシキのおばちゃん元気? よろしく言っといてよ」

俺の肩に手を回し始終テンション高く話し続けるチャラ男。奴が強引に俺を引っ張っている間も、俺はタカポンという昔の友人を必死に思い出そうとしていた。









そんなことがあった日から約半年後。なぜか俺の恋人のような存在になっていたそいつに、実はあのときが初対面だったのだと告げられるまで、それがナンパの常套句なのだと真っ当な男である俺は知るよしもなかった。


おしまい
2011/10/6

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