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騒擾恋愛
006


下着をゆっくりと焦らすように脱がされ、ついに着衣は上半身のみにされた。俺は晒された場所をどうにか隠そうとして足を閉じたが、沢木はそれを許さず俺の膝を持ち上げ自分の肩にのせる。なんて格好だ。普段外気に触れることのない場所を沢木に見られ、耐えられなくなった俺はすぐ横にあった枕で顔を隠したが、沢木はそれを気にすることなく俺の中に指を入れようとした。

「うっ…」

身体が緊張して沢木の指を拒んでしまう。これからどうするか知っているだけに恐くてたまらない。元々入れるための場所ではないところに無理やり性器をねじ込むのだ。沢木の指は濡れてはいたが滑りは悪く、指でこれならとても沢木のものが入るとは思えなかった。

「う…あ…っ」

俺の身体は指の侵入を拒み続けたが沢木はかまわず押し進めてくる。自分でも目にしないような場所をすべてを見られているのかと思うと、俺は恥ずかしさのあまり枕にすがりついた。それと同時に、沢木は俺みたいな男にこんなことをして気持ち悪くないのかという不安を覚えた。

「ああっ! 痛っ…!」

無理に入れようとすれば痛みを感じるのは当然だ。沢木はお構いなしに指を最後まで突き入れようとしているが、痛みを我慢するのももう限界だった。

「やっ、も…無理! 痛ぇ!」

俺は上半身を持ち上げ沢木の手をつかみ、それ以上の侵入を阻止する。顔の上にあった枕は横にずり落ち沢木と顔をつきあわせることになった。

「やっぱり痛い? 千石、涙目になってる」

「うっ…」

慌てて顔を隠そうとする俺を見て沢木が笑む。沢木の手によって足がさらに上げられ、彼の舌が太ももに触れた瞬間、敏感になっていた俺の身体は再びベッドに倒れこんだ。

「ああっ…! さわっな、やめ!」

感じているのが丸出しの自分の声にさらに羞恥心を煽られる。たかだか太ももを舐められたぐらいで、なんて声を出してるんだ俺は。

「痛ぇ、痛ぇよ沢木…! もう無理だ…っ」

太ももを舐めている間も沢木は指を押し進めてきて、俺は痛みに身をよじった。全身全霊でやめてくれるよう懇願しても、沢木はしれっとした顔で指を動かし続ける。

「沢木? そうじゃないだろ千石。俺はお前の何だよ」

「…うっ、あ、ご主人さま…」

「だったらそう呼ばなきゃ、そうだろ?」

「あああっ!」

ぐりっと指を中で回されて痛みを感じた身体は反り返る。駄目だ、これ以上突っ込まれたら絶対に裂ける。

「ご、ご主人さ…ま」

いつも普通に使っているはずの言葉なのに、今は口にするだけで消えたくなるぐらい恥ずかしかった。慣れたはずの呼び名が俺をどんどん惨めにさせた。

「や、やだ! それ以上入れな、いでっ」

「やだ、だって? 千石、ご主人様には敬語を使えよ」

「あああっ! あっ!」

喘いでるかのような自分の泣き声に、俺は慌てて口をふさいだ。こんな格好でこんな醜態をさらして、気持ち悪いにもほどがある。プライドはズタスダにされ情けなさで涙が止まらなかった。

「ご、ご主人様、やめてくださ…っ」

身体を震わせながらぼろぼろとマジ泣きをする俺に、沢木の手が止まる。中から指が抜かれ、ようやく俺はまともに息を吸うことができた。

「…ああ。ごめんな千石、ついいじめすぎた」

「うっ…ん」

「痛かったよな…。傷つけるつもりはなかったんだ。ほんとにごめん、もう二度としない」

沢木は俺をあやすように抱きしめ、頬に伝う涙を拭う。そして俺にズボンと下着を渡し、自分はベッドに腰掛けた。
ああ、助かった。

けれどそう思ったのはほんの数秒で、俺はすぐに後悔した。沢木があれだけ優しい口調で謝ってくれたにも関わらず、俺は沢木に落胆されたように感じたのだ。なぜかはわからないが直感でそう思った。今は沢木の背中しか見えないが、見放されたような気さえしてくる。

「俺、なにか飲み物とってくるよ。千石は着替えて…」

「待って!」

俺は腰を浮かした沢木にすがりつき引き止める。沢木が優しく優しく頭をなでてくれている最中も、俺は沢木の気持ちを取り戻そうと必死だった。

「千石、どうした?」

「…やめないでくれ」

「なにを─」

「俺、したいんだ。ご…主人様に入れてほしい。頼む、最後までしてくれ」

「……」

しばらくの間、沢木は返事をしなかった。何か気に障るようなことを言ったのかと怖くなったが、気がつくと俺の身体は乱暴に押し倒されていた。

「ははっ、千石…っお前はほんと、予想以上だよ…」

「え?」

沢木が今まで見たことないぐらい可笑しそうに笑っている。笑い声1つ1つに毒気を感じるような、そんな笑い方だ。けれど沢木はすぐ真剣な表情に戻って、俺の首筋に噛みついた。

「んっ…」

そこから先、俺達の間に会話はなかった。やめてくれと懇願してしまいそうになる口を自らふさぎ、悲鳴をあげそうになるのを必死でこらえた。沢木の方も俺を中をほぐすのに手一杯という感じで、先ほどまでの余裕はない。
俺は与えられる痛みにひたすら耐えつづけ、沢木をその身に受け入れた途端、あっけなく気を失ったのだった。


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