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騒擾恋愛
004


時刻は午前1時。夜は怖すぎてできないと言っていたにも関わらず、沢木と俺はまだテレビの前に座ってホラーゲームに熱中していた。ゲームを中断したのは風呂と食事のときぐらいで、それ以外はずっとテレビの前にかじりついていた。
ホラーゲームを俺は少々馬鹿にしていたが、やってみると意外と面白くなかなか盛り上がった。主人公は探偵で、昔起こった殺人事件を解決するために、今は閉鎖された古ぼけた洋館に助手と共に潜入する、といったストーリーだ。単なるホラーかと思えばミステリー要素もあり、ここぞというところではちゃんと怖い。何度かゲームオーバーになってしまったが、セーブしたところからまた始め着実に殺人事件の謎を解いていった。

「うわっ、ここ出る! 絶対出てくる!」

コントローラーを握りしめた沢木が叫ぶ。自分からやると言い出した割に沢木は怖がりらしく、幽霊が出てくるたび騒いでいた。あまり怖がりではない俺すらちょっとビビっているのだから、相当恐ろしいゲームだ。

「千石、どうかした? 眠くなった?」

「いや、ちょっと目が疲れてきただけ…」

慣れないゲームに目頭をおさえる俺を見て気づかってくれる沢木。さすがに6時間以上ぶっ通しでテレビゲームをするのはつらかった。

「じゃあ今日はもうおしまいにして、明日続きをやろう。もうセーブするな」

「うん…、ありがと」

沢木とするならたとえホラーゲームでも楽しかったが、昨夜あまり眠れなかったこともあり俺の目は今にも引っ付きそうだった。コントローラーを沢木にわたし、部屋を片付けると一気に眠気が襲ってくる。

「えっと、ご主人様、俺どこで寝ればいい…?」

沢木の部屋にはもちろんシングルのベッドが1つだけ。まさか2人で使うわけでもあるまいし、布団を用意してくれるのだろうか。

「あれ、千石もう寝るの?」

「えっ、何かする?」

まさかまだ遊び足りないのかと俺が目を両手でこすりながら訊ねると、沢木は意外そうな表情をしてとんでもないことを言った。

「恋人同士の2人が一緒の部屋で一晩過ごすのに、何もしないわけ?」

「えっ!?」

沢木のありえない大胆発言に俺の眠気は一瞬で吹っ飛ぶ。もしかして俺はすでに夢の中なのではないかと自分の腕をつねってみた。普通に痛い。

「な、何かしてもいいの?」

「普通、キスぐらいするもんじゃないか?」

「うぇえ、キス!?」

ちなみにそれは先程まで俺の最終目標だったものだ。沢木とキスなんて、夢のまた夢だとばかり思っていたのに。

「嫌?」

「まさか! やりたいです! やらせてください!」

必死に懇願する俺を見て沢木が吹き出す。ちょっと、いやかなり恥ずかしい。どれだけがっついてんだよ俺は。
沢木に引かれてないだろうかと不安になったが、彼はただ照れくさそうに笑っただけだった。

「千石の方からしてくれる? 俺、キスとか慣れてなくて…」

「えっ、あ、うん」

俺は沢木の視線を感じながら正座して姿勢を正す。それを見た沢木がおかしそうに笑い俺も俺もと正座した。

恐る恐る沢木の肩に手をかけると、それと同時に沢木の目が閉じられ、俺は理性をつなぎ止めておくのに必死だった。近くで見れば見るほど、沢木は綺麗だ。見た目も中身もこんなに綺麗な沢木が俺のものになってくれただなんて、今でも信じられない。

俺は緊張で身体を堅くしながらそっと沢木の唇に自分の唇を押し当てる。小学生でもできるようなくっつけるだけのキス。それでも俺は沢木の柔らかい唇の感触にやられてしまった。

唇を離すと沢木の目が開かれ大きな目が俺を見つめてくる。赤くなっているであろう自分の顔を隠したかったが、沢木の瞳からどうしても目が離せなかった。

「これで終わり?」

「へ?」

「もっとしてもいいけど」

「……」

俺は沢木に断りも入れず、彼の肩を引き寄せ噛むようにして口づける。明らかに先ほどより深いキスだったが沢木はまったく抵抗しなかった。さすがに口の中に舌を入れるようなことはしなかったが、沢木の頬に手をかけ激しくその唇を蹂躙し、息苦しくなったであろう頃に解放した。

「なんだよ、千石。そんなキスで満足か?」

「……っ」

さらに挑戦的な言葉を耳元で囁かれた俺は、沢木をその場で押し倒した。床に身体を打ちつけないように両手で頭と背中を支え、少しずつ口の中に舌を侵入させ沢木の舌をからめ取る。

「んっ…!」

呼吸がしにくいのか沢木が苦しそうに身をよじるが、すぐにはやめてやれない。俺は沢木の小さな抵抗なんてものともせず、欲望のままにその口の中へ舌を差し入れていた。
俺がようやくキスをやめるころには、沢木は服を乱し肩で息をしていた。赤く染まった頬が扇状的でもっとキスしたくなったが、これで嫌われてしまっては元も子もない。俺ははやる気持ちをぐっとおさえ沢木から手を離した。

「ごめん、ちょっとやりすぎた…」

沢木は嫌だっただろうかと反省していた俺だが、次の瞬間、沢木の手が俺の首にふれ、起き上がると同時に優しく抱きつかれた。

「千石」

「え…」

「…最後まで、する?」

「……っ」

沢木の口が紡いだ言葉の意味を、俺がわからないはずがない。俺は身体全体で沢木の熱を感じながら、自分の性欲をコントロールするのに必死だった。


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あきゅろす。
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