神様とその子供たち
拍手お礼小説(ロウ×カナタのIF)
ロウに拾われたカナタのIF番外編。本編とは無関係です。番外編1の続きみたいなものです。
当然未来に飛ばされた僕が、ロウという人狼に保護され軟禁されてからはや数ヶ月。未だに僕は自由に外を出歩けないでいた。
安全のためと言われてしまえば従うしかなく、仕事で全国をまわるロウについていっているにも関わらず、どこにいってもあてがわれた部屋から出ることは許されなかった。
カナタという偽名を咄嗟に名乗ってしまいそれがすっかり定着してしまったが、もう僕のことを呼んでくれるのはロウしかいない。狼の耳と尻尾を持つロウは見目がよく、まだ若く見えるのにお金持ちで周りの人狼達からかなり敬われているようだった。大企業の社長とかなのかな、と彼の仕事内容を訊ねたことがあるが、笑ってはぐらかされてしまった。
一人寂しく留守番をする僕のために、色んな映画やドラマが見られる特殊なメガネをプレゼントしてもらった。それからはこの軟禁生活もかなりマシになったが、フィルタリングがかけられているのか、見られない映像がかなり多かった。
日中は一人、ロウがあらかじめ用意してくれたご飯やお菓子を食べてゴロゴロ横になりながら映画を観る。そんな自堕落な生活をいつまでも続けていくわけにはいかない。夜も更けて、ようやく僕のいる部屋に戻ってきたロウに僕は直談判した。
「外には出るのは駄目。カナタが危ない目にあうから」
彼はベッドの上で僕を膝にのせながら、困った顔で僕を見つめる。反対されることはわかっていたので、僕はめげずに説得を試みた。
「そうはいっても、一生このままというのは申し訳ないですし。人間でも戸籍さえあれば普通に皆生活されてますよね? 僕も働けるように、何とかしてくれませんか」
「何で働く必要があるんだよ。何か足りないものがあるのか」
「そうじゃないですけど、でもこのままじゃ僕、居づらくて」
ロウはとてもよくしてくれる。それでも不安は消えない。自分一人の力で生活できていないというのもそうだが、僕はロウ以外の人狼達からはあまりよく思われていないようだ。こんなヒモのような男がよく思われるわけがない。
「カナタが退屈なのはよくわかる。俺が側にいてやれない時、一人でいるのは不安だともと思う。誰か世話役をつけて話し相手になってもらうべきなんだろうが、俺はそれが耐えられそうにない。カナタの側に誰か置いたりして、カナタが俺のことよりそいつを好きになったら困る」
「ロウ様、それって……」
「カナタ、こっちみて」
「ん……」
ロウに抱き寄せられて口づけをされる。もう何度彼とキスしたかわからない。それ以上のこともロウに求められると断れなかった。
「俺はカナタが好きだ。カナタといると幸せな気持ちになれるし、大事にしたい。本当は……恋人にしたいと思ってる」
「恋人?」
聞きなれない単語に一瞬面食らう。彼がそんな風に思ってるいるとは思わなかった。嬉しい、という気持ちが自分の中に確かにあるのを感じた。
「でも人間と人狼は恋人になっちゃいけないって決まりがあるから、カナタを大っぴらに皆に紹介できないんだ」
「そうなんですか?」
「ああ。だから今のところ他の奴らには、カナタの事は可愛がってるペットだって言ってるけど……」
「ペット!?」
「ごめん、嫌だよな」
「いえ、逆にしっくりきます」
家で飼い主の帰りをひたすら大人しく待つペット。完全に今の僕だ。でも僕が本当にペットなら、こんな不安な気持ちにもならないのだろうか。
「だから俺たち、内緒の恋人になろう」
「内緒の? 恋人?」
「うん、俺たちだけの秘密。嫌?」
「嫌というか……、どうして僕なんかを恋人にしてくださるんですか」
「カナタからキスしてくれたら、おしえてやる」
「……」
意地悪なことを言うロウに、期待に満ちた顔で見られ困ってしまう。暫しの逡巡のあと僕はそっと彼の唇にキスしたが、顔から火が吹き出そうだった。
「何で俺が、カナタを恋人にしたいか知りたい?」
「それは、だって、んっ……んう」
僕に再びキスしてきたロウは舌を中に絡ませて、深く口付けてくる。僕はいつものようにそれを受け入れていたが、恋人としてのキスだと思うと身体が熱くなった。
「お前をこんな身体にした責任、とらなきゃいけねぇだろ」
「こんな、って」
「ここ触るだけで、可愛くなっちゃうように俺がしたから」
「んっ」
シャツの下に手を入れられて乳首をつままれ、声が漏れる。そのまま優しく弄られて、身体が敏感に反応していった。
「カナタ、こうされるの好きだろ」
「す、すき」
「俺のことは?」
「…………好き」
僕の言葉に満足げに笑ったロウは僕を押し倒して服を脱がせる。ロウに恋人にしたいと言われて、それが嬉しくて、ようやくハッキリと自分の気持ちを自覚できた。結局僕の思い通りには何一つならなかったのに、彼の内緒の恋人にしてもらえるだけで十分だと思ってしまった。
それから数週間後、早めに部屋へと戻ってきてくれたロウが僕を抱き上げながら笑顔で言った。
「カナタ、俺、家買った!」
「……家?」
一応、すでにロウには家がある。最初の頃はずっと僕はそこにいた。広くて大きな庭もある大豪邸で、ロウの帰りを待っていた。
「俺も前から思ってたんだよ。カナタをあんな狭い部屋にずっと閉じ込めて、不健康な生活をさせるのはよくないって。人間だって日光浴は必要だからな」
「は、はあ……」
「だから広ーい庭付きの別荘30軒ほど買ったから、今度からそこに泊まるようにしよう」
「30軒!?」
思わずロウの前で飛び上がって驚いてしまう。理解がまったく追い付かない。
「ど、どこに?? 何故30軒も!?」
「どこって、全国各地に。これでどこに行ってもプライベートな広い庭があるから、いつでも外に出られるぞ」
「な……」
「今までは好意で友人の家に泊めてもらってたけど、それだとカナタをずっと狭い部屋に閉じ込めないといけなくなるから、思いきって買って良かったよ」
ロウが何でもない事のように言うので、僕はそれ以上なにも言えなくなってしまった。外に出たい、と言っただけで庭付きの家を30軒も買わせてしまうなんて。これからは不用意な発言には気を付けなければ。
買った家の写真を一枚一枚上機嫌で見せてくるロウを見て、この人は石油王の息子か何かなのかな、と僕は真剣に考えていた。
おしまい
2022/11/27
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