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神様とその子供たち
005※


イチ様は僕を跨いで押さえつけたまま、ポケットからシリンジのようなものを取り出しキャップを投げ捨てた。

「な、何ですかそれ…!?」

「ナナに押し付けられた潤滑剤だ。使うつもりはなかったが、もらっておいて良かった」

「ま、待って! んっ……!?」

後ろの穴に細いものが入れられたかと思うと、冷たく滑り気のあるものが注入される。イチ様の指で丁寧に中へと塗り込まれて僕は思わず逃げようとしたが、イチ様がそれを許さなかった。

「あっ、ん…ああっ」

指の数が二本、三本と増やされていく。イチ様を受け入れたい気持ちと、別人のようになってしまった彼への戸惑いでパニックになる。イチ様は僕に噛みつくようなキスをし続け酸欠寸前だ。朦朧とする僕の目に彼の性器が見え、その規格外のサイズに思わず声が出た。

「う、イチ様、それは…」

「っ……ごめん…」

「イチ様?」

「カナタを傷つけたくない……」

いくら時間をかけてほぐしたとしても、イチ様のものを受け入れる事は簡単じゃない。それがわかっているからこそイチ様がやめようとしているとわかり、僕は覚悟を決めた。

「……いいから、挿れてください。イチさ……ッッ!」

その言葉を言い終わらないうちにイチ様の性器の先端がねじ込まれる。その質量のあまりの圧迫感に息ができなくなる。こんなに苦しいのに、半分ほどしか入っていないのが見えて言葉を失った。

「ごめん、カナタ…っ」

「大丈夫です…から……」

僕はずっとイチ様と繋がりたかった。彼が抱いてくれたら、僕は紛れもなく彼の特別になれるだろうと。そうなったらどんなに幸せかと思っていたが、いざそうなるとそれどころではなかった。

「んっ…」

後ろが裂けたらどうしようと心配だったが、ナナからもらったという潤滑剤の滑りが良く効果てきめんだった。ゆっくりと確実に僕の中に埋め込まれているそれに、身体を串刺しにされるような息のつまる感覚と待ち望んだものを手に入れた満足感が僕を同時に襲った。

「うっ……イチ様ぁ……っ」

最奥を突かれてもすべては収まりきらなかったが、中までイチ様で満たされた僕は彼の首に手を回して唇を求めた。彼のすべてを受け入れたかった。

「カナタ、好きだ……」

「うっ、あ、あ、んん」

僕もあなたが好きだとイチ様に言いたかった。しかし息をするのもやっとで、同時に中を突かれて何も考えられなくなる。足の感覚がなくなり、腰に負荷がかかっているのがわかる。苦しくてたまらなかったが、イチ様にやめて欲しいとは思わなかった。

「あっ…イチ様……!」

イチ様に首筋に噛みつかれ腰を打ち付けられて声を上げる。突然圧迫感が増して、イチ様が中で達したのがわかった。おさまりきらなかったものが溢れてこぼれ落ちていく。終わりがないのではと一瞬恐怖するほどの長い射精だった。溢れたイチ様の大量の精液がつたっていく。

「……これでようやく、匂いが消えた」

「え……?」

「忌々しいマーキングだ。こんなものつけやがって」

「それ、は……」

ロウのマーキングのことだというのはすぐにわかった。未だイチ様にわかるくらいには残っていたらしい。イチ様のらしくない言葉遣いに背筋が凍った。

「あの、ごめんなさい…イチ様。ロウ様とのこと……」

特殊な状況だったとはいえ、僕は自らロウと関係をもってしまった。愛想をつかされてもおかしくない話だ。

「許さない」

イチ様は僕と繋がったまま僕の身体を持ち上げ上体を起こす。さらに深く突き刺された僕は痛みに耐えるため歯をくいしばった。イチ様から与えられるものは痛みや苦しみであろうとも、すべて僕のものにしたかった。

「俺を一番愛してるって言わないと、許さない」

「あ……」

自分のことを俺、というなんてイチ様らしくない。でもきっとイチ様にも若い頃があって、今みたいな大人びた言葉遣いじゃない頃もあったはずだ。

「一番、誰よりも愛してます。……イチ様以外、誰も好きになりません……っ」

心からの言葉だった。しかし言うと同時にさらに深く中をえぐられて身体が痙攣した。しかも何度も何度も好き勝手突くものだから何も考えられなくなってしまう。苦しさのあまり涙が滲んだ。

「イチ様、もう、もう無理…っ」

一度達したはずなのにイチ様が腰を動かすのをやめてくれない。喘ぐ声もだんだんと掠れていって声を出すこともできなくなった。どこが痛いとか苦しいだとか、そういう感覚すらなくなってきて僕はイチ様に揺さぶられるまま気絶してしまった。


◇ ◇ ◇


「おはようございます!」

まったく起きてこない僕とイチ様に業を煮やしてセンリが起こしに来てくれた。僕は裸のままイチ様に抱き締められていたのですぐに彼から離れようとしたが、自分の身体が岩のように微動だにしないことに気づいた。

「センリさん…」

「どうしました? 声枯れてません?」

「身体が、動かないです。たすけて…」

ガラガラの声で僕がなんとか訴えると、裸の僕とイチ様を見てすべてを察したセンリが「イチ様!!!」と聞いたことない大声で叫んだ。イチ様の耳がぴくぴく動き目が開いた。

「ん…カナタ……」

「イチ様! カナタさんにどこまで無理を強いたんですか!?」

「センリ…?」

突然センリに怒鳴られてイチ様はしばらくきょとんとしていた。しかしダウンしている僕に気づいて、慌てて僕を抱き締めた。

「カナタ、大丈夫か!? わ、私のせい……だよな?」

「いえ……」

「なんて声だ。すまない、私はなんて事を」

「いえ……」

「どいてください、イチ様」

センリはイチ様を突き飛ばすと、僕の身体をシーツごとゆっくりと抱き上げる。

「まずは身体を綺麗にしましょう。シャワールームに行きましょうね」

「センリ、それなら私が」

「イチ様は自分のお身体を洗ってきてください」

刺々しい口調でイチ様を拒絶するとセンリは僕を部屋に備えつけられた浴場まで運んでくれた。彼は自分の服を脱ぎ、ずぶ濡れになりながら僕の身体を温かいお湯で洗い流してくれた。全裸でも恥ずかしがる余裕もないくらい僕は疲弊していた。

「つらくないですか?」

僕を座らせて背中を自分の胸に預けながら全身にくまなく適温のお湯をかけてくれる。センリに包まれていると安心できて完全に身を任せてしまった。

「こんなところにまで噛み痕が……酷いですね。イチ様は加減というものを知らないんでしょうか」

あまりにセンリがずっとイチ様の悪口を言うので、「大丈夫ですから、怒らないで」とやっとの思いで口にした。

「イチ様を嫌いになっていないならいいですが、あなたはもっと怒った方がいい」

彼はむすっとした表情のままそう忠告してくれた。僕は昨晩のことを思いだし、センリを見上げて声を絞り出した。

「イチ様が抱いてくれて、嬉しかった……。でも、次もこんなことされたら、僕、たぶん死んじゃう……」

「!」

センリは「あー、もう!」と叫びながら僕を壁にもたれ掛からせると、シャワーで思いっきり自分に水をかけた。

「か、風邪ひきますよ…?」

「おかまいなく!」

センリは僕を再び抱き上げて部屋に戻り、タオルで全身をくまなく拭いて服まで着せてくれた。イチ様は別のシャワー室を使っているのか部屋にはいなかった。センリは自分も服を着ると僕に水を飲ませてふかふかのソファーに寝かせた後、「すぐ戻ります」と言って部屋を出ていってしまった。


後で聞いた話だが、その後センリはその足でロウに会いに行きイチ様の僕に対するやりすぎの所業を報告して何とかするよう訴えてくれたらしい。その後イチ様はすぐ父親に呼び出され、お叱りを受けた。イチ様は可哀想になる程落込んでいたので、僕に謝るのをやめてもらうのが大変だった。


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