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神様とその子供たち
006


キュウは言ってた通り、二人の護衛をロウに会わせた。ロウは笑顔で二人に声をかける。

「いつもキュウを守ってくれてありがとう。ゼンとトウキが側にいてくれれば俺も安心だ」

「いえロウ様、もったいないお言葉です」

「ロウ様のお元気な姿を見られて嬉しいです」

二人は一礼したあとロウに頭を撫でてもらい嬉しそうだった。どちらも筋骨粒々の逞しい人狼だったが並んだ尻尾が仲良く揺れている。

「キュウちゃん小さいから力も弱いだろ? 野蛮な人間にさらわれないか心配で心配で」

「大丈夫だよパパ、僕もう大人だもん」

「ええーーキュウちゃんはずっとパパの可愛い子供でいてくれるんじゃなかったの?」

このいちゃいちゃを僕らはいつまで見てればいいのか。ロウはキュウの頬に何度もキスをした後、じっとりとした目でイチ様を見た。

「いっちゃん、やっと謝りに来たな」

「……」

特に謝りに来たわけではないのだがイチ様が無言なのでそういうことになった。ロウはキュウを抱き上げながらつんとした態度を取る。

「謝らないといっちゃんは撫でてやらないからな」

「……」

イチ様はロウの前に立つと、そのまま膝をついて目線を下げた。

「父上に反抗してしまって、ごめんなさい」

「いいよーー! 俺も冷たくしてごめんねー!!」

さっさと許してイチ様を抱き寄せるロウ。少し涙目のように見えたのでロウの方が限界だったらしい。ロウがキュウとイチ様を抱き締めていたのでナナが負けじと割り込んだ。

「親父! 俺も俺も!」

「え? ああ」

ロウがナナの頭も撫でたが、ナナは不満そうにその手を振り払った。

「親父なんか俺にだけ冷たくねぇ!? 俺はこんな好きなのに」

「ごめんごめん、ナナが悪いんじゃなくて、ただ同じ顔すぎてだな…」

「なんだよそれ、親父の阿呆!」

ナナがロウに容赦なくクッションをぶつける。巻き込まれないようにイチ様はさっと僕の横に戻ってきた。ゼロが怯えてないかと心配になったが、彼は僕の腕の中ですやすや眠っている。

「あの、よろしいでしょうか」

センリがしびれをきらした様子ですっと手を上げながら声をかける。

「一つお訊きしたいのですが、ハツキ様をどうやって帰らせたのですか」

そこ? とも思ったが確かにそれは気になる。あんなに僕がいることを嫌がっていたのに、その僕を無視して帰るなんて何をしたのだろう。

「あんなに笑顔でお帰りになられたところを見ると、ロウ様が特別なことをしたのでは?」

「そうなのか!?」

ナナにも問い詰められて、ロウが気まずそうに視線をそらす。全員の目が自分に向けられて、彼は渋々白状した。

「別にたいしたことはしてねぇよ。ただ二人だけで1日過ごす約束しただけで」

「えええ!?」

なんだそれだけか、と思ったのは僕だけでそこにいた全員が叫んだ。後ろに控えていたキュウの護衛はもちろんのこと、僕の横にいたイチ様までもが「えっ…」と小さく声をあげていた。

「ずるいずるい! 僕とだってそんなことしてくれないのに!」

「親父はなんでハツキばっか贔屓すんだよ! 許さねぇ! 俺は絶対許さねぇからな!」

「ロウ様……それはあまりにもあまりなのでは…?」

全員から責められてロウは自らの耳をぺたんと自分の手で塞いでしまった。「だから言いたくなかったんだよ」とぶつぶつ呟いている。

「どうしてそこまでハツキを優遇するんだよ。一瞬一緒に暮らして世話してやってたからって、息子は俺達の方だぜ」

「ハツキは小さい頃大変な生活をしてたんだ。気をつけてやらねぇとあの時の荒んだ性格に戻っちまう」

「戻ったらその時にボコってやればいいだけじゃねーか」

「カナタに何かしてからじゃ遅いだろうが」

突然名前を呼ばれて体が固まる。もしかして、僕のせいでこんなにもめているのだろうか。そうだとしたら申し訳ない。

「カナタはこれから俺と一緒に過ごすんだから、ハツキには理解してもらわないと」

「一緒に過ごすとは決まってないですけどね」

「えっ、何何? どういうこと??」

「カナタのこと受け入れられねぇのはハツキだけじゃねぇと思うけど、そいつらにはどうわかってもらう気だよ」

首を可愛らしく傾げるキュウとイライラがおさまらないらしいナナ。ロウはキュウの耳を触りながら後頭部に顔を埋めた。

「話して説得する。ヒトもフウビも、マドカもいいって言ってくれたし」

「俺だって反対なわけじゃねぇよ。ハツキだけ贔屓すんなって話だから。カナタがいて眠れるんなら、親父のためならそっちのがいいに決まってるんだし……」

「なー君…優しい子に育ってお父さんは嬉しいよ……」

「あの! カナタさんがロウ様と一緒に過ごすとは、まだ決まってないですから! あしからず!」

センリの言葉に全力で頷く僕。このままでは人狼全員を説得して僕が一緒に行く既成事実を作ってしまいそうだ。



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