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神様とその子供たち
005


「儂の護衛も連れていってかまわんか。父上に一目会わせてやりたいのじゃ」

そう言ったキュウは外にいた人狼を連れ、イチ様の後をついて歩いていく。相変わらず杖は持っているだけだ。遅れてついていく僕が杖を凝視していたせいか、センリがこっそりおしえてくれた。

「キュウ様の杖は仕込み銃なんです。キュウ様は人狼の中ではトップの腕を持つ狙撃手なんですよ」

「ええ! すごい!」

あんなに可愛らしい容姿なのにやはり人狼なのか。子供に見えても中身は子供ではない。

「まあ、銃を使う人狼があまりいないっていうのもあるんですが。でもキュウ様は円陣格闘で一度、優勝したこともある猛者ですから」

「え!? あの身体でどうやって……あ、すみません」

失礼な言い方をしてしまったが、本人には聞こえてなかったのか気にしていないのか無反応だ。センリが笑顔で説明してくれた。

「いえ、ちゃんと理由があるんですよ。あんな小さい身体に暴力的なこと、普通の男ならできないでしょう。僕も無理です。そこを利用して、すべて不戦勝で優勝されたんですよ」

「そ、それってありなんですか?」

「相手の庇護欲をかきたてて、無力化するのはキュウ様の得意技なんです。意図的にあの方を傷つけるのは、どんな極悪非道の悪人であろうと不可能です。だから護衛なんていらないんですけど、ロウ様が心配性で」

「ロウ様が?」

そうこうしているうちに僕たちはゼロの部屋に到着した。先頭にいたナナが扉をノックする。どうぞ、と聞こえてきたのはロウの声ではなかった。扉を開けると、ロウを膝にのせて満面の笑みを浮かべるハツキがいた。

「な、何やってんだてめぇ!!」

ナナがキレると同時に彼の目が真っ黒に染まる。表情が死んでいたロウも素早く膝からおりる。上機嫌のハツキは自らもベッドから立ち上がり、こちらに頭を下げた。

「ナナ様、随分早くお戻りで。あっ、キュウ様お久しぶりです。相変わらず可愛らしいですね」

可愛らしいと言われたキュウは無言で仕込み銃を抜いていた。ナナがいち早くハツキに殴りかかったがそれはロウに止められる。

「ナーナー、お前はすぐそうやってハツキを殺そうとする。油断も隙もねぇな」

「親父こそ何イチャついてんだよ! こいつと付き合うのか!? 俺は死んでも認めないからな!」

「そんなわけねぇだろ。気がついたら乗せられてたんだよ」

「ボケッとしてっからそんなことになるんだろ! ってかスイは!? どこいった!?」

「用事言いつけて出ていってもらった」

「何でだよ?!」

「わめくな。心配しなくてもハツキはもう四群に帰るって。な」

「はい、ロウ様」

にこにこのハツキが弾むように返事をする。尻尾がゆらゆら揺れてなんとも嬉しそうだ。

「お騒がせして申し訳ありませんでした。そろそろお暇いたしますね。あとは家族水入らずで……邪魔物は失礼いたします」

それだけ言ってスキップでもしそうな程浮かれた様子で部屋を出ていくハツキ。僕の存在は目にも入っていない様子だ。あんなに僕を疎ましがっていたのに、どういう風の吹き回しだろう。

「キュウちゃん!」

いつもはイチ様の姿に喜ぶロウ様がキュウの姿を見て顔を輝かせる。キュウの方も仕込み杖を放り出して、ロウに駆け寄った。

「パパー!」

パパ? と思う間もなくキュウが無邪気に抱きつく。そしてそのままひょいとキュウを膝に乗せてベッドに座った。

「あはは、キュウちゃんは相変わらず可愛いなぁ。もしかしてパパに会いにきてくれたの?」

「うん! 僕、パパが心配でみんなにワガママ言って来ちゃった……」

「えーーキュウちゃん優しーー」

「えへへ、パパのためなら当然だよぉ」

突然キュウの人格が変わってしまったので思わずセンリを見る。彼は何かの病気なのかそれとも突然憑依でもされたのか。

「キュウ様はその見た目を利用して、父親の前では子供のように振る舞ってるんです。その甲斐あってキュウ様はイチ様に続き、二番目にロウ様の愛情を受けているんですよ」

「あ、なるほど。いい考えですね……」



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あきゅろす。
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