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神様とその子供たち
002

「ロウ様…!」

「げぇっ、ハツキ」

ナナがハツキの姿を見て、嫌そうにその名を口にする。ハツキはなぜか花束を抱えていて、背後には困った様子のスイが立っていた。入るのを止めようとして失敗したらしい。

「ロウ様ご無事ですか。療養されてると聞いて心配で飛んで参りました」

「えーっと、この花は…?」

「お見舞いには花かな、と思いまして」

捧げられた花束をありがとうと受け取りながらそのままスイに渡すロウ。その間にずかずかとナナがハツキとロウの間に割り込んだ。

「ようようこの野郎、相変わらず馴れ馴れしい奴め。親父に近づくなって言ったろ?」

「ナナ様の命令をきく理由はありませんので」

「ああ? テメェ四貴だからって自分が俺より偉いとか思ってんじゃねぇだろーなー」

どうやらナナはハツキの事が大嫌いらしい。誰に対しても愛想がいい男だと思っていたのでこの態度には驚きだ。

「そんなことは。ただ俺とロウ様の事に口出しされても困ります」

その言葉にナナの目が一瞬すべて黒く染まる。これは殺意100パーセントの目だ。

「はあ? お前が親父を襲おうと画策して俺が何度食い止めたと思ってんの? 今すぐ失せろこの変態野郎」

中指を立てて喧嘩っ早いチンピラと化すナナ。このままでは殺し合いでも始まるのではないかというくらいの険悪ムードの二人をロウが諌めた。

「まあまあまあ、落ち着け二人とも。ナナ、カナタを連れて外に出ていてくれないか」

「ええ!? 親父こいつと二人きりになる気か!?」

「スイもいるから大丈夫だって。あんまりハツキをいじめてやるなよ。お前から見たらこいつはまだまだ子供だろ」

「親父は甘過ぎんだって〜〜。俺は! こいつがヤバイの! 知ってるから!」

「だからカナタを連れて行けって言ってるんだ。今のところ俺は大丈夫なんだろ?」

「ま、まあ……たぶん……」

「ならよし。あっそうだ、なー君ちょっとこっちおいで」

ナナを手招きしてこそこそと何やら耳打ちするロウ。何を言われたのかわからないがナナは驚いた様子だった。

「カナタをよろしくな」

ロウに促されしぶしぶ部屋を後にする。部屋を出ていく寸前ハツキがせせ笑い、それを見たナナが再び中指を立てて挑発していた。慌てて足元でおすわりしていたゼロを抱き上げ、僕はナナに腕引きずられながら部屋を出た。慌ててゼロを抱っこして彼はかなり苛ついている様子だったが、突然思い出したように僕の方を見た。

「あっ、そうだ! 俺マジでびっくりしたんだけど、カナタと兄貴ってほんとに付き合ってんの?」

「…一応、そうです」

「えーー! なんで俺わからなかったんだろ。地味にショックだわ。勘が鈍ったのかなぁ。兄貴が人間と付き合うなんてすげー大ニュースなのに」

ナナの発言はもっともだ。あの人がなぜ僕と付き合いたいと思ってくれたのか、いまだにわからない。

「でもお前の手握っても見えたのはまだ親父だったから、普通に別れさせられんじゃね?」

「えええ!? それは困ります!」

「うわびっくりした、急に大声出すなよ〜」

ナナの先見はこの事を暗示していたのだろうか。僕とイチ様は離れ離れになって、ロウと過ごすということを予言していたのなら、もう心が折れそうだ。

「ど、どうすればいいんですか。もう諦めてロウ様についていくしかないんでしょうか」

「お前…っ、親父を名前呼びとか心臓強いな。俺の見る未来は変えられるから、これから頑張ればいいんじゃない」

「何でそんな最後丸投げなんですか!? アドバイスとか下さいよ〜〜」

「俺占い師じゃないし。つか少し会わないうちに図々しくなったなぁ。いや、俺はちょっと気が強い方がタイプだからいいんだけどね」

「そんなことどうでもいいんです! あ、いやすみません。どうでもよくはないです。ただ僕はイチ様と……あ、そうだ、イチ様に会えませんか。どこにいらっしゃるかご存じではないですか?」

「いや俺もまだ会ってない……って何だよカナタ、連れねぇなぁ。せっかく二人きりになったんだから俺とデートしようぜ」

「今そういうのいいですから!!」

僕の肩を抱いて歩き始めるナナに抗議する。上機嫌なナナに反して僕は不安でたまらなくなっていた。


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