しあわせの唄がきこえる
交換条件※
「んん、あっ、ん……」
薄暗い部屋に、俺のみっともない喘ぎ声が響く。時刻は午後7時過ぎ。帰宅後すぐに相馬と宮路を家に連れ込んでからずっとこの調子だ。俺に覆い被さっている男、相馬の汗が腹の辺りにポタポタと落ちてくる。ひっきりなしに腰を動かす奴の下で俺はもう何度もイってしまった。
「あっ…そこ、もっと…!」
気持ち良すぎてもうどうにかなってしまいそうだ。相馬はその体格にお似合いの立派なモノを持っていて、セックス自体はやや淡白だが俺は概ね満足している。
「何ちんたらやってんの。早くしてよ、俺もさっさと挿れたいんだからさ」
俺の上半身を後ろから支えていた宮路が退屈そうに耳元で呟く。舌を首筋に這わされ、敏感になっていた俺の身体はたったそれだけの刺激で震えた。
「あ…あっあっ、も、やだ…」
相馬の律動がいっそう激しくなり身体が揺さぶられる。だらしなく開けられた俺の口に奴が舌を差し入れてきた瞬間、熱いものが俺の中に流し込まれた。
「あ…」
「はいはい相馬交代〜。次、俺の番」
「待て、もう少し」
「はぁ〜? マジかよ」
「ん…動かさな、で…」
注ぎ込んだそのブツを突っ込んだままゆっくりと腰を揺らす相馬。うっわどうしよ、それ、すっげぇいい…!
「ったくもう、仕方ないなぁ」
「んっ…」
宮路は俺の身体を無理やり動かすと乱暴に上を向かせる。四つん這いの状態で後ろからの刺激に耐える俺を、奴は笑顔で見下ろしてきた。
「仕方ないから俺はこっちで我慢するよ。尾藤(ビトウ)ちゃん、舐めて」
「…っ、ま、マジで…?」
「マジマジ。ほら、早くして」
このドS野郎、と宮路を睨み付けながらも俺は躊躇いもなく目の前の奴のモノに口をつける。別にフェラなんか慣れているが、宮路の場合はただでさえデカいものを無理やり奥までねじ込んでくるから、苦しくて嫌だ。
前に集中しようとするも、さらに相馬の突き上げが激しくなってうまくくわえられない。快感で頭がボーッとしてあと少しでイくという時、突然開け放たれたドアに一気に現実へと引き戻された。
「おい、今ちょっといいか?」
「…っ、…いいわけ、ねぇだろがこの馬鹿!」
最悪のタイミングで邪魔しにきた友人、藤貴(フジキ)に思い切り悪態をつき枕を投げつける俺。まだ中に突っ込まれたままなので凄みはないに等しく、枕も奴には届かなかった。
「仕方ないだろ。俺だって別に好きで邪魔したんじゃねーもん」
「じゃあ何で入ってくんだよ! …くそ、抜け相馬っ…あッ」
俺の指示を無視してゆっくり動き続ける相馬。第三者が乱入しても続けようとする奴も奴だが、友人のあられもない姿にまったく動揺しない藤貴の神経もすごい。慣れてるからといえばそれまでなわけで、俺も俺で別に気にしちゃいないが。
「忍、お前に電話だ」
「はぁ? 誰からだよ」
「お前の兄貴」
「ああ!?」
藤貴の口から兄、という言葉が出て俺のイライラは最高潮に達した。なんであんな奴なんかからの電話で、俺の楽しみを邪魔されなきゃならないんだ。
「アイツからの電話は無視しろって言ってんだろーが」
「だって何回もかけてくるから、つい。声そっくりでビビった」
「勝手に、ん、出てんじゃねーよ! すぐに切れ!」
「もう切ったよ。伝言伝えてくれってさ」
「伝言?」
相変わらず相馬に突っ込まれたまま宮路に寄りかかる俺を冷めた目で見ながら、藤貴は気だるそうに答える。
「例の“アレ”、忍がまだやる気なら条件次第で考えてもいいって。良かったな」
「…マ、マジで!?」
まさかの朗報に状況も忘れて喜ぶ俺。まさか奴の方からそんないい返事がもらえるとは思っていなかった。
「俺はちゃんと伝えたからな。じゃ、後はごゆっくり」
話が終わるとさっさと扉を閉めて出ていってしまう藤貴。気が緩んで崩れ落ちる俺の中から、ようやく相馬のモノが抜けた。
「……てか、尾藤ちゃん兄弟いたの?」
下半身丸出しを気にもせず普通に尋ねてくる宮路。すっかり体力を奪われ話すのも疲れていたが、うつ伏せになりながらもなんとか答えた。
「…いる。今は離れて暮らしてるけど」
「へ〜、見てみたいなぁ」
「別に、見たってどうってことねぇよ。あんな奴」
「ははっ、嫌いなんだ?」
まだ少し息が上がったまま吐き捨てる様に言うと、宮路は俺の髪をいじりながら楽しそうに尋ねてくる。相変わらず鬱陶しい奴だ。
「大っ嫌いだね」
「何で?」
「……性格的にあわねぇ。一緒にいるとイライラする」
別に消えてくれなんて思うほど憎んじゃいないが、いなけりゃ良かったのにと思うほどには嫌いだ。あいつとは色んな面で真逆すぎる。
「…じゃあ、その嫌いなお兄ちゃんに頼んだ、“アレ”っていったい何?」
「………内緒」
「ふーん」
ヤった後独特の倦怠感に襲われながらも、俺はようやく計画が進められることを喜んでいた。この時のために俺は今まで必死でやってきたのだ。奴の協力さえ得られれば、計画はいつでも始められる。俺はシーツに顔を埋めたまま、沸き上がってくる笑みをこっそりと漏らした。
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