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しあわせの唄がきこえる
007


気を失ってしまった戸上を無理矢理叩き起こして、俺は奴を問い詰めた。途中から奴が意識のないふりをしていることに気がついたので、もう一度指に手をかけてやると戸上はすぐに飛び起きた。

「うっわ! マジでやめろって!! お前鬼かよ」

「てめぇが意味不明なこと言うからだろ」

「意味不明なもんか、俺はあっきーに何もしてないんだから!」

「さっきやったって自分で認めてたじゃねぇか」

「それはあんたがあっきーだと思ったから、あっきーには俺がやったと思わせておかないと」

「よくわかんねぇな。暁がお前だって言ってんなら、思わせるも何もねぇだろ」

「あんたちゃんと話聞いてんのかよっ。あっきーはずっと目隠しされてたんだから、誰にやられたかなんてわかるもんか」

「ああ?」

目隠しなんて初耳だった俺はかなり動揺したが、すぐにこいつの言うことなんて信用できないと思い直す。目隠しの話は本当なのだろうが、それはこいつが何もしてない証拠にはならない。

「本当だって! あっきーに聞いてみてよ」

「例えそうだとしても、お前はその真犯人とやらに荷担してるってことだろ。だったら同罪だろーが」

「だってしょーがねーじゃん! 脅されてんだから」

脅しというワードにこめかみがピクリと動く。今さっき会ったばかりだが、こいつは誰かに脅されるような人間には見えないので失笑しか出てこない。

「へぇ……誰になんて脅されたんだよ」

「それが言えたら苦労しないし!」

その後も俺は戸上をあの手この手で吐かせようとしたが、奴は何一つ話さなかった。よっぽど酷い弱味を握られてるのか、その真犯人とやらがよっぽど怖いのか。業を煮やした俺は最終手段を使うことにした。

「なに、何してんのあんた」

「メール送ってんだよ」

携帯を取り出して操作する俺を見て戸上が不安そうに視線を泳がせている。俺がやろうとしていることを無意識のうちに理解しているのだろう。

「……だ、誰に?」

「羽生」

「うっわ、てめぇやめろ、今すぐやめろ」

「もう送った。早けりゃすぐここに来る」

殺意のこもった目で睨み付けてくる戸上を俺は負けじとにらみ返す。一触即発ともいえる空気の中、互いに相手の出方を窺っていた。

「……あんた、本当の名前は」

「尾藤忍。覚えてくれていいぜ」

「名字違うけど、あっきーの双子の兄弟か何か?」

「双子じゃなきゃこんなに似ねぇだろ」

「あっきーは今どこに?」

「俺が匿ってる。何だよ心配してんの? 良かったな、お望み通りかなりまいってるぜ」

「ああ、もう。どうやったら俺がやってないって信じてくれんだよ。何のために俺があっきーに近づかないようにしてたと思ってんの。脅されてなきゃ一回だけで満足してたりしな……うおっ!」

怒りに任せたまま振り上げた拳はすんなりかわされる。今すぐこいつをぶっ飛ばしてやりたかったが、目的のためになんとか堪えた。

「その真犯人とやらの名前を吐かないなら、お前に犯されたって羽生に言う。今すぐ決めろ」

「だからそれを言ったのがバレたら俺が不味いことになるんだって!」

「へぇ、今以上に不味いことがあるのか? なら永遠に黙ってろよ」

俺の言葉に戸上は長い間黙り込んでいた。迷っているのか、それともこの場を乗りきる方法を考えているのか。奴がどう出るかしばらく様子を見ていたが、意外と早く決着はついた。


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