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日がな一日
002※


「睡眠姦したい」

瀬田は以前、年下の彼氏にそう頼まれたことがある。言われてすぐは意味がわからず、その場で携帯を使って検索した。今までハメ撮り以外はNGがないのかというくらい恋人のありとあらゆるプレイ願望に応えていたので、感覚が麻痺してこれくらいならと安請け合いした記憶がある。
夏目はとても喜んでいたが彼の、瀬田が目覚めた時にはすでに挿入されている、という希望にはかなり引っ掛かった。そんなの絶対途中で目が覚めるだろ、と突っ込みたかったが夢を壊すのも悪いので何も言えなかった。

しかし結局、多忙とタイミングの問題でそのプレイを叶えてやることは未だに出来ていなかった。それでも忘れた頃にいきなりされるのは心臓に悪いので嫌だなぁと、その事をずっと心のどこかで気にしていた。
そのため、すやすやと安眠の世界に入っていた瀬田が、身体中をまさぐられる感覚により現実に引き戻された時、これは以前に言ってたアレだ、とピンときた。

「んっ……」

そろそろと制服のズボンを少しずり下ろされて下半身を露出させられる。性器をやんわり握られて思わず声が漏れる。もう目は覚めてしまっているが、夏目の希望を叶えるために瀬田はずっと目を閉じて寝たふりをしていた。
自分のものが温かくぬめりと弾力のあるものに擦り付けられているのがわかる。兜合わせさせられていると、経験のある瀬田はすぐに勘づいた。夏目のものと一緒にまとめて刺激されて熱が集まっていく。身体が抱かれる準備を始め、興奮してくるのがわかった。

「んんっ……あ……」

ご無沙汰だった瀬田はあっという間に達してしまい、自分の腹に精子が飛び散るのを感じた。見えないのでわからないが、もしかすると夏目の精液も混じっているかもしれない。彼に触られるだけで簡単に感じるようになっていて、瀬田の身体は夏目との繰り返された性行為によって完全に開発されていた。
腹にかけられた精液を掬いとられ、後ろの穴に濡れた指を挿入される。いつもより躊躇いがちなのは瀬田が目覚めないかどうか不安に思っているからなのか。浅い場所で繰り返される抜き差しに我慢できなくなった瀬田は、自ら足を広げて腰を押し付けた。

「あっ、ああ……あっ」

指で押し広げられる感覚に思わず派手に喘いでしまう。もう起きている事はバレてしまっただろうが、目を閉じていればセーフだろうと寝たふりは続行した。夏目の亀頭がぐりぐりとねじ込まれそうになる感覚に、ようやく挿れてもらえると喜んだが何故か躊躇うような動きをされて焦らされる形になってしまう。業を煮やした瀬田は、手探りで相手の首に触れて、後ろに手を回してぐっと引き寄せ耳元で囁いた。

「早く、いれてっ……それ欲しい……」

夏目の唾を飲み込む音にもう一押し、と瀬田は口づける。自分から舌を差し入れて、夏目の舌を舐めとった。尻を押し付け足を絡ませ受け入れる準備は万端、となった時瀬田はふと思い出した。


ここは、一体どこだ?


自分は先程まで、生徒会室で嵐志を待っていたはずだ。そこでうっかり寝こけてしまったこと、ここが公共の場であることを思い出す。ここで最後までするのはよくない、とようやく気づいて目を開けた時、そこにいたのは夏目ではなく佐々木嵐志で、瀬田はその場で驚きのあまり叫び声を上げてしまった。

「うああああ!!」

「せ、先輩?」

「何で? 何で!?」

こんなに驚いたことは後にも先にもない。相手が夏目ではなかった事がまず最悪なのに、間違えた相手がよりにもよって佐々木嵐志とは。全部夢だったら、と一瞬期待したが下半身を露出した姿と濡れた腹と尻にすべて現実だと思い知らされる。

「嘘嘘嘘嘘、嘘!」

「先輩、大丈夫ですか?」

心配そうに瀬田に声をかけてくる嵐志。シャツのボタンは全部はずされ、履いていたはずのズボンと下着が床に散乱している。瀬田は真っ青になりながらその場で床に頭を擦り付けた。

「ごめん佐々木くん! 俺なんてことを……!」

「え、ちょ、先輩やめてください。頭上げて。何も謝られるようなことはされてませんから」

「で、でも俺、こんな……」

夏目と嵐志を間違えるなんて前代未聞だ。猛省する瀬田に嵐志はにっこり笑って、顔を上げさせた。

「大丈夫です先輩! そりゃいきなり積極的でびっくりしましたけど、先輩を尊敬する気持ちは変わりません」

「佐々木くん……」

佐々木嵐志の心の広さに涙目になる瀬田。これは逆レイプというやつではないかと不安で堪らなかった瀬田に、嵐志は躊躇いもなくキスしてきた。

「!?!?」

「そんなのいいから、続きしましょうよ」

「続き!? しないよ!?」

一体何を言い出すんだと嵐志を見ると、彼の性器が完全に勃ち上がっているのが目に入った。目を潤ませてこちらを見てくる。

「でも先輩、俺ここで止められんの超辛いんですけど。先輩もノリノリだったじゃないですか」

「や、でも、それは……」

夏目と間違えていたから、と言いそうになって思いとどまる。生徒会で二人の仲は周知の事実だったが、殆ど生徒会室に来ない嵐志にはまだ知られていなかった。誰かが話しているかもと思ったが、この様子じゃおそらく知らされていないのだろう。

「ていうか、佐々木くんって男もいけるの!?」

夏目との事を言うべきか悩んでいたが、まずそちらが気になってしまう。佐々木嵐志は大ファンの瀬田が知る限りでは一度も誰かとスキャンダルになったことがない。高校生だからと言うのも勿論あるが、基本的に恋愛をしてはいけないという圧が世間からかけられている存在でもあった。

「いや経験はないですけど、瀬田先輩ならいけるかなって」

「いけるかな?」

「先輩だって、俺の大ファンだって聞きましたよ」

「誰から!?」

「生徒会のみんな」

どうして皆にバレているんだ? と頭を抱える。しかし特に必死に隠していたわけでもないことを思い出し、自分の迂闊さを呪った。

「ファンだけど、そういうことはしないよ! 佐々木くんだってファンの子だからって簡単に寝たりしないでしょ」

「それはまあ……イメージ最優先の職業ですし」

「だよね。ここはお互いちょっと冷静になって……」

「でも前にちょっと聞いたことがあるんですけど、……先輩が生徒会の男全員と寝てるって」

「は!? 何それ誰!? 誰が言ってたの?」

「誰っていうか、生徒会室で椿会長と萩岡先輩が言い争ってるの聞いちゃって。その話を要約すると、そういう事になるっていうか」

「あ、あいつら……」

思わず怒りを椿と孝太にぶつけてしまう。瀬田の光の象徴である佐々木嵐志にこんな裏の汚い部分をうっかりとはいえ公開するなんて許せなかった。

「あっ、弘也とは、弘也とは寝てないから!」

言い訳するポイントが微妙に違う気がするが、全員とというのがどうしても引っ掛かった。嵐志はきょとんとした顔を瀬田に向けてくる。

「他の人達とは寝てるってこと? 夏目とも?」

「や……っていうか、俺、夏目くんと付き合ってるから。今は夏目くんとしか……その……そういうことはしてなくて……」

そこまで知られているなら正直に話すしかない。ごにょごにょと歯切れが悪いながらも夏目との交際を認めると、嵐志はとても驚いていた。

「つまり夏目とはヤりまくりってこと?」

「い、言い方ぁ」

爽やかで天真爛漫キャラの佐々木嵐志の言葉とはとても思えない。いや、この場合俺が言わせてしまっているのか。

「じゃあ夏目がオッケーしたら俺と寝てくれるの?」

「えっ、いや、それは……っていうかオッケーしないと思うけど」

「でもでも、生徒会の中で俺が一番瀬田先輩のこと尊敬してますし、大好きだと思うんですよ。その俺だけが先輩を抱けないっておかしくないですか?」

「だから、今は夏目くんとしか出来ないって言ってるじゃん! 付き合ってるから!」

嵐志はそのまま瀬田に覆い被さり、身体に触れる。にっこり笑うその顔にうっかり見とれていると、再びキスされてしまった。

「話ちゃんと聞いてた?」

「聞いてましたよ。夏目には内緒にして欲しいって事ですよね」

「ぜ、全然違う……!」


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