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日がな一日
004


「瀬田ー! 軽音部の奴に変な薬飲まされたせいでずっと興奮しっぱなしになってる瀬田ー! 大丈夫かー!」

「やめろよ弘也!」

夏目に呼び出された弘也はすぐに保健室に来てくれた。頭を抱えてうずくまる夏目と、ベッドの上で呼吸を荒くしながらも抗議する瀬田を見て慌てて駆け寄ってきた。

「おいおい顔真っ赤だし目死んでるし何か重症じゃね?! どーすんだよ、夏目」

何やら考え込んでいる夏目に弘也は狼狽しながらも訊ねる。このままの状態では、瀬田は劇に出られそうにもなかった。

「当然、やり返すんだろ? 誰がやったか顔わかってんだったら特定も簡単だよな。協力してボコってやろうぜ!」

「そっちの心配!?」

この状況よりも報復を考えている弘也にしんどいのに突っ込まなければならない瀬田。余計なことをしないようにと弘也の制服の裾をつかむと、夏目がおもむろに立ち上がった。

「弘也、ちょっと柊二のこと見ててやってくれ」

「えっ、お前は?」

「俺はさっきの奴らが本当に柊二に薬盛ったのか確かめてくる。そんで、どんな薬なのか何がなんでも吐かせる」

「えー! それ俺がやりたい……」

「駄目。俺の方が早い」

夏目の姿が瀬田からはよく見えなかったが、怒っているのはわかる。危ないことはしないでくれ、と言いたかったがとても口を挟める雰囲気ではなかった。

「弘也、俺が戻ってくるまで柊二に変なことするなよ」

「はい?」

「柊二はいま薬でおかしくなってるだけだから、誘われたからってほいほい乗ったりすんなよ」

「あー…」

俺の様子と夏目の言葉から何かあったのだと悟った弘也。彼は任せろとばかりに親指を立てて頷いた。

「大丈夫だ夏目。一ついいことおしえてやろう。どんなに薬でおかしくなってたって、こいつが誘う男はイケメンだけだ」

「弘也!?」

人をそんな面食いミーハーみたいに言うな! と怒ろうとしたが事実だった。夏目はその言葉に一応安心したらしく、頷いて出ていった。

「酷いよ弘也……夏目くんの前であんな……」

「うるせー、事実だろうが。このイケメン食いビッチ野郎」

「だ、誰がビッチ野郎だよ……!」

「お前、あのイケメン後輩誘ったんだろ。抱いてくれとか頼んだんじゃねぇだろうな。そんなんだから椿とか萩岡にいいようにされるんだろうが」

「抱いてくれなんか言ってないっ、ただ、ただちょっと…」

「ちょっと?」

「手で……抜いてくれないかと……」

「あぁ?! 十分誘ってんじゃねえかボケ!!」

「だって、自分じゃうまく力入んないんだもん!」

涙ながらに仕方がなかったのだと訴えると、弘也は無言でその場を立った。そして隅の方にある戸棚の引き出しを開け、何やらごそごそと探している。しばらくして、怖い顔をした弘也は手にグローブをつけていた。

「そんなに抜いて欲しいんなら、俺がやってやるよ」

「ひっ、ひぃぃい」

「なんつー声出してんだテメェ」

「いい! 弘也はいい!」

「はあ?! 何であの馴れ馴れしい後輩はよくて、俺はダメなんだよ! 自分の身体はイケメンにしか触らせねーってか!」

「そんなこと言ってないっ」

瀬田が弘也に触らせたくなかったのは、普段から一緒にいる親友にそんなことをさせるのはとても恥ずかしいからだ。言うなれば、家族に頼んでいるような感覚に近い。自分のことを恋愛対象として見てくれている夏目ならともかく、弘也は気持ち悪くないのだろうか。

「はーい瀬田くん。さっさと出してスッキリしましょうねーー」

「嫌だ嫌だ嫌だ」

「こんなの治療と思えば平気だろ。つかそんな暴れる元気あるなら大丈夫じゃね?」

元々力が抜けている瀬田を弘也はいとも簡単に押し倒し下着ごと脱がせる。マスクとティッシュペーパーをちゃっかり用意し、一応の抵抗を見せる瀬田の弱い部分に遠慮なく触れた。

「はい。じゃあいきまーす」

「ぎゃーーー!」






放心。

自分の痴態を晒した後、瀬田はショックのあまり脱け殻になっていた。弘也の前で変な声を出して思う存分イかされてしまった。呆然とする瀬田を放置して弘也は手際よく片付け換気を始める。

「体調どうだ?」

「最悪」

「あれ? まだ足りねぇ? もう一発いっとく?」

「いいい、いらない! かなり気分よくなったから!」

これは本当だ。まだ頭はボーッとするし、身体の熱も抜けていないが先程よりはマシだ。これなら劇にも出られるかもしれない。
瀬田が身体を起こそうとした時、保健室の扉が開いた。夏目が戻ってきたのだ。

「おう夏目、奴ら見つかったか」

「ああ、やっぱりアイツらだった。軽音部の露木の命令でやったんだと。あいつに逆らえなくて指示通りのことをしただけだから、何もわからないの一点張り。かなり脅しつけてもそう言い続けてたから嘘じゃねぇとは思うけど」

あのいつも笑顔の夏目がどうやってクラスメートを脅したのか気になるところだが、普段温厚そうな人ほど怒らせると怖い。瀬田は先程それを身をもって知った。

「じゃあ瀬田はこのままにしとくしかねぇってのか? 軽音部も考えたよな。普通に下剤とか睡眠薬とかだったらこっちも教師に言いつけられるけど、媚薬盛られて興奮してますなんて簡単には言えねーよ」

お前が気にしないならチクるけど、の言葉には慌てて首を振る。こんなことは自分でも早く忘れたいくらいなのに学校の問題にされるなんて無理だ。

「そういや、どうして窓開けてんだ?」

「あ、それは瀬田が一人で処理したから換気を……」

本当は一人ではないがそんなことはわざわざ言わない。弘也が夏目に隠していたので瀬田も黙っていた。

「そうか……そんなに長持ちする薬じゃないはずだってやつらも言ってたから、効果がそろそろ切れると良いんだけどな。どうだ瀬田、劇には出られそうか」

「……うん。出るよ」

まだ万全とはとても言えなかったが、瀬田は迷うことなく頷く。こんなことされて、黙って泣き寝入りなんて絶対嫌だ。意地でも劇には出てやると瀬田は固く決意していた。


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