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日がな一日
003※


「はぁ……はぁ…」

二人の荒い息づかいが部屋に充満する。自分の中に入り込んできたモノに、今にも身体を裂かれそうだった。息をするだけで精一杯だ。
椿にされた時より圧倒的に苦しいのは精神的な理由だと瀬田はわかっていた。

「動くぞ……っ」

「だ、駄目……んっ」

優しくゆっくりと動く孝太に瀬田は抵抗しようにもできなくなった。孝太の動きは自分本意のものではなく、明らかに瀬田の事を第一に考えていて気遣われているのがわかる。感じてはいけないと思えば思うほど、下半身が反応してしまう。

「やだ、やめろ…嫌だっ」

「嘘つけ。嫌じゃねぇだろ」

「違う、ほんとに……本当にやなんだ…っ」

ボロボロと涙を流す瀬田に孝太の動きが止まる。なるべく気持ちよくなってもらえるよう気を付けていたはずなのに、瀬田は苦痛に顔を歪ませながら泣いていた。

「瀬田、痛かったのか?」

優しく問われて首を振る。頭をそっと撫でながら孝太が囁いてくる。

「じゃあ何が嫌?」

「……」

「言わないならまた動くぞ」

「あっ! だめっ…!」

孝太に身体を揺さぶられ瀬田は泣きながら喘いだ。ちゃんと話すまでやめてやらないと孝太の目が言っていた。

「あっ、ああっ……あっ」

「言えよ、言わねえとずっと抜いてやらねぇ」

「あ、…孝ちゃんの、……嫌だ」

「は? なに?」

「…孝ちゃんので、イっちゃう…の、駄目だ…っ」

「……」

「だって、俺たち……友達、なのに…っ」

顔をぐしゃぐしゃにしてうわ言のように言葉を繋ぐ瀬田。汗ばんだ身体、聞いたこともないような色のある嬌声。全身で感じているのがわかる瀬田から出る拒絶の言葉。ギリギリのところで繋がっていた孝太の理性の糸が、ここにきていとも簡単に切れた。

「つまりこうされると気持ちいいってこと、だろ。見てればわかるぜ、後ろだけで今にもイきうだもん、お前」

「ん、ごめ…んっ」

ローションで柔らかくなった瀬田の中は、出し入れするたび卑猥な音が聞こえてくる。自分が感じているのだと錯覚させられるような濡れた音だ。

「イけよ。見ててやるから出しちまえ」

「嫌だ、嫌だ、あ、ああっ、あ」

律動が再び始まって、嫌なのに声を出してしまう。性器をすっと撫でられ、まるで急所を掴まれているような感覚に一瞬たりとも気が抜けなかった。

「瀬田、大丈夫。大丈夫だから、こっち見ろ」

「ん…? んんっ」

顎を掴まれた瀬田は挿入されたまま孝太にキスされた。まるで恋人同士のような行為に驚き最後の力を振り絞って逃れようとしたが、恐怖を覚えるほどの力で押さえつけられ、孝太はさらに深く中へ入ろうとしてきた。

「んんぅ…! んぁっ……あっ」

膝を持ち上げられ無理な体勢を取らされる。恥ずかしい部分をすべてさらけ出した格好に耐えられず、とにかく早く終わらせたいと、それだけを考えるようになっていた。我慢するのをやめた瀬田は、それからあっという間に射精してしまった。

「はぁ……はぁ」

「……やっと出したな。これでわかったろ? お前は椿が好きなんじゃねぇよ。友達の俺のもん入れられただけで、こんなになってんだから」

「う、ううっ……」

男のくせに、男に入れられて喜んでいる。そう言われたも同然だった。男としての尊厳もプライドも踏みにじられて、友人に突っ込まれて感じているという現実に涙が止まらない。

「ほんとに、さっさとこうしておけば良かった」

孝太は何故かその晴れやかな口調とはそぐわない、今にも泣き出しそうな顔をしていた。けれど今の瀬田にはその事を気にする余裕はなく、達してしまった自分の身体に動揺するばかりだった。

「おれ……何でっ、何で……」

「さあな、素質があったんじゃねえの? でけぇ図体してるくせに中身は女みたいに感じやすいんだ。そりゃ童貞の椿でもやりやすかっただろうよ」

自分は椿が好きだったのではない。ただ男に入れてもらって気持ち良かっただけ。素質があっただけ。孝太の言葉は瀬田のわずかに残っていた自尊心をえぐっていった。

「どうしよう、どうしよう…弘也……」

殆ど無意識のうちに親友に助けを求めていた。彼の名が出た途端、孝太の顔つきが変わった。

「何でそこで杵島の名前が出てくんだよ」

「……ごめ…ん」

「謝るんじゃなくて理由だよ。お前の親友は俺だろーが!」

「あっ…あっ」

孝太に再び身体を打ち付けられた瞬間、同時に未だ中を犯し続けるものを締め付けてしまい、孝太の表情が一瞬乱れた。孝太がようやく中のモノを引き抜き、つけていたゴムの中で達したのがわかった。
自分を貫く凶器がなくなり、瀬田も少しだけ反抗心を取り戻した。

「違…う」

「は?」

「俺の一番の友達は、弘也だから……孝ちゃんじゃない」

「お前、この状況で俺に喧嘩売ってんのか」

「孝ちゃんこそ…俺の事まだ嫌いなんだろ。だからこんなことして……俺の事、やられるのが好きな変態みたいに、言うんだろ」

「っ……」

涙ながらにそう言った瀬田の身体を、孝太は覆い被さるように抱き締めた。突然のことに身を固くする瀬田に孝太が囁いた。

「そうじゃねぇよ。そういうことじゃねえけど、……悪い、酷いこと言ったな」

「本当の事だから、…いい」

自分が好きでやったことだと思っていたのに、そこに何の感情もなかった事に瀬田は愕然としていた。自分は好きでもない男に犯されて、それが気持ちいいと喜ぶ人間だったのだ。瀬田はそれがらとても浅ましいことで、まともな精神ではないと理解してひたすら涙を流して嘆いていた。

「違う。違うってんだろ。よく聞け瀬田。……お前は椿の事が好きだった。ただ、今は俺の事が好きなだけだ」

「……はあ?」

孝太は瀬田の背中に張り付くように寝転がると、後ろから手を回して優しく抱き締めてきた。

「今の良かっただろ? 椿より俺のことが好きな証拠だ」

「そ、そう……なの?」

「だからさ、俺達、付き合おうぜ」

「…………は?」

詩音と付き合っているはずの孝太の口からとんでもない言葉が飛び出し、疲労でぐったりしていた瀬田もさすがに目が覚めた。

「冗談、だよね」

「冗談なもんか。もっと早く、こうしてれば良かったんだ」

いたって真剣な声色で、再びそんな事を言う孝太。彼は唖然とする瀬田の首筋にキスをして、当然のように痕を残していった。


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あきゅろす。
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