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ストレンジ・デイズ



「こんな王道学校、他には絶対ないんだから! だからキョウちゃん一緒に頑張ろ!」

何を頑張れってんだ。確かに俺は男を誘惑しに来たが、本気で男と付き合う気はさらさらないし心を女にしたつもりもない。それなのに、唄子はどんどん1人歩きしていく。

「だってキョウちゃんは、美人受けで、強気受けで、その上女装受け! キョウちゃんいい! 大好き!」

大好き、と言われているのにも関わらず果てしなく一般的な告白ではない気がするのは、どうしてだろう。

「つーか、そのナンタラ受けって何だよ」

聞いちゃいけないという確信があるのに、幼い頃から持つ強い好奇心には逆らえない。知らないことがあるのはいつだって不愉快だ。

「簡単に言うと、BL界において女役が受け。で男役が攻め」

「へー…って俺女役!?」

「当たり前でしょ。自分の格好見てみなさいよ」

「あ、そっか…」

女装していることを一瞬忘れていた。男役うんぬんの意味は実はまだよくわからないが、ようするにあれだろ。オカマが受けだろ。

「夢を壊すみたいで悪いけどな、俺はこの化粧をとったらどこからどー見ても平凡な男に早変わりだぞ? 産まれてこのかた女に間違えられたこともねえし。可愛いなんて言われたのも小学校低学年までだ」

香月にはいまだ偶に言われるが、アイツのは…親バカとかそういうのに似てる気がする。

「だからお前が期待するような、女のように綺麗な男はいねーの。これは要するに厚化粧。中にはどこにでもいる地味な男がいるだけ。オッケー? 理解してくれた?」

一気に興味をなくすかと思ったが、唄子はさらに目をキラキラさせ、男の肩を激しくつかんだ。

「大丈夫よ! 要するに平凡受けでしょ? 全然問題なし。むしろ大好物!」

なぜだかよけいに喜ばせてしまったようだ。この女に対抗出来るものは存在しないのか。

「でも平凡受けって難しいのよね。あたし的にはまず性格良くなくちゃいけないし。あ、でも大丈夫よキョウちゃん。性格悪い平凡受けもザラにいるからー」

「それ俺の性格が悪いって言ってんのかテメェ」

とても女とは思えないようなドスの利いた声で言ってやったのに、唄子はまったく動じない。完全に自分の世界だ。

「後はそうねぇ…キョウちゃん中学時代、族の総長とかやってなかった?」

「……? 総長やってたのは俺の兄貴だ。つか今もやってるけど」

「おしい〜〜!」

そう嘆きながら悔しそうに拳を床に打ち付ける唄子。ちなみに中学時代の俺は球を蹴って遊んでいた。

「あ、じゃあ特殊能力! 人に言えない秘密の力は?」

「…たとえばどんな」

「何でもいいんだって。ほーら例えば、触れただけでその人の考えがわかるとか、本当はある組織から逃げてきた人間サイボーグ! だとか」

「………お前はいったい俺に何を求めてんだよ」

男同士の恋愛の次はサイボーグ? この様子じゃ宇宙人がどうのとか言い出してもおかしくない。

「だったらトラウマになるような過去とかない? …まぁ全くなさそうだけど」

「失礼だろ! …実際ねえけどさ」

俺は恵まれているという自覚はかなりある。小さい頃から常に外車が送り迎えをしてくれたし、欲しいおもちゃは何でもくれた。はっきり言ってこの女装潜入はこの世に産まれてから一番の苦労だ。

「あー…じゃあ、キョウちゃんの苦手なものは? 強気受けに苦手なものがあると萌えポイントあっぷよ! さあ何が苦手? 虫? お化け? 雷?」

「このさい萌えポイントとかいうのは無視して言うが、俺は普通に虫殺せるし、お化けと雷みたらテンション上がるタイプだ」

自分を指差して説明するも唄子は一気にしけていった。


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あきゅろす。
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